椅子と傘とピストルは同じ形態のもの?複雑怪奇な中国語量詞について考察してみました
この方に触発されて書きました。
中国語学概説 第2回 中国語の特徴 - 内田慶市 関西大学外国語学部教授
https://youtu.be/VaemdpuS6pA?t=1390
22:48
>同じ形態のものは同じ量詞を使う
ここをもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。
量詞ってなに?
その物の形だけじゃなくて、人にとってどんなふうに存在しているか、どうやって使うか、これらの要素とは深く関係していると思います。
たとえば椅子と傘とピストルには「把」という量詞が使われています。
教育部《重編國語辭典修訂本》では量詞の項目に次のような5つの説明があります。
(1) 柄や持ち手のある器物を数える単位。例:一把刀、兩把傘
(2) 束になった細長い物を数える単位。例:一把蔥、兩把筷子、三把火把
(3) 手で握れる量を数える単位。例:一把鹽、兩把花生
(4) 手の動作を数える単位。例:推他一把、拉你一把
(5) 火を数える単位。例:放一把火、一把怒火、一把無名火
椅子と傘とピストルは一つ目に当てはまりますが、さすがに二つ目のねぎと箸と松明や三つ目以降のものとは方向性が違うと思います。
「把」は椅子を動かす時に手で背もたれをつかむ様子を表すと感じっています。
でも、実は椅子には「把」だけじゃなく「張」という量詞も使われます。
例:一張椅子
私の個人的な経験から推測するけど、この「張」は椅子の「平らな面」に注目して強調しているかと思います。
同じ量詞「張」の他の例:一張床や一張紙
「張」で数える紙の最小サイズは付箋まで。
ここでちょっと「張」という漢字の由来を検索してみました。
「張」とは弓を引く、転じて「開く」「展開する」。
弓を引っぱる人の動きや、弓が開いた形から、弓の量詞に使われていることなった。
例:一張弓
同じく「開く」意味の例:一張嘴
平たい形のモノの例:兩張桌子、三張薄餅
ちょっと、同じように平たい形でも違う量詞が使われるものも加えて、考察してみたい。
例えば鏡は「面」で数えます、例:一面鏡子
「面」という漢字の由来は「人の顔」
鏡とは人の顔を映すもの、だから「面」が使われてるのかもしれません。
絵は「幅」で数えます、例:一幅畫
「幅」という漢字の由来は「布の広さ」「広い布」
古代中国絵画は布を使うから、これは巻き軸と掛け軸時代の名残ですね。
まとめてみると、
(1)一つのものに複数の量詞があるときは、強調する部分の違いから来たのかもしれません。
椅子 vs 量詞「把」と「張」
(2)一つの量詞が複数のものに使われているときは、それらのものには何らかの共通点があるのかもしれません。
量詞「張」 vs 弓と口とベッドとクレープ
(3)似た特徴があっても、ものの由来によって量詞が違う場合があります。
平たい物――机と鏡と絵 vs 量詞「張」「面」「幅」
中国語の量詞ってこんなに複雑怪奇なのか。
次回、ハンカチと犬と船って実は同じ形態のもの?同じ量詞でいけますよ。
参考資料
教育部《重編國語辭典修訂本》
https://dict.revised.moe.edu.tw/index.jsp
教育部《異體字字典》
https://dict.variants.moe.edu.tw/