始まりは熱中症
「暑っつい…」
ボロアパートの一部屋、フローリングの上でため息をつく。昨日まで風邪引いてたってのに、環境には慈悲という概念が存在しないのかよ。こんな日にはパソコンもぶっ壊れるんじゃねぇのか?
…ん?パソコン…?
「そうだった!、アレ、そろそろ投稿しないと…」
実は最近作曲した音ゲー曲が動画サイト上で100万再生を突破して、『一部界隈で賞賛される』、そんな作曲家になろうとしていた。
表では大学生。工学部でフル単に向けて絶賛勉強中だ。
意外と充実しているだろ?…なんてな。
「何いってんだ俺。はたから見たらクソウゼぇぞ…」
そんなことを呟きながら部屋の隅にあるパソコンを起動しようとした…その時。
「んぁ…?」
急に視界がモノクロになった。
手が震える。
足が痺れる。
それなのに、何も触れる感覚がない。
病み上がりということも相まって、頭が異様に重い。
(あ、コレちょっとマズいかも…)
…
…
…
…
…
何かゴツゴツしたものに背中が当たって痛い。
…ん?ゴツゴツ?うちフローリングじゃ…
「はっ!」
目を覚ましてまず入ってきたのは、ビル街。…ビル?
「え、外…?」
さっきまで家にいたはずなのに…
とりあえず辺りを見渡してみる。
目の前にはビル、後ろを見ると、大通りと…なんだありゃ!?
「え、車、か…?でもあれ…」
浮いてね?
「…」
オーケイちょっと待て。俺は今正常じゃない。今夢の中だ。目が覚めたらまたクソ暑い家のフローリングに横たわってるはず。そうだ、きっとそう…
「あ、あの…大丈夫ですか?」
「あ、いやー…はい、大丈…!?」
え、え…あ、み…
「耳…」
「…ああ、コレですか?ここらへんではエルフは珍しくないと思いますが…」
ェ、エルフ!?
と、いうことは…
「どこだよここぉ…」
魂の抜けたような声がかすかに口から出てきた。