ローディアの日常 〜世神編〜
これはローディアの光 〜神となる者の物語〜 の外伝みたいなものです。本編を見なくても楽しめるので頑張ってください。
「初めましてだのぅ人間達よ。今から我の《特別》な日常を明かしてしんぜよう。精々神になれなかった自身を恨むのだな。ほれ、映像付きじゃ」
まずは朝のルーティーンからじゃな。そうそうこうやってたくさんの資料やペンに囲まれてデスクワークを…っておい。映像が違うぞ。
あれ? 日常と言われたからこれかと
…まぁ良い。我たる者神の中の神。心の広さも特大じゃ。まずは朝のルーティーンからじゃな。我は神、睡眠なんぞ必要ないものじゃ。そうそうこうやって仕事中に居眠りを…っておい。
失礼。ついつい
……我々だって人間と同じで睡眠と食事をせねば死ぬのだ。
やっと素直になりましたね。
お主、わざとやっておったな?
えぇ。今回はリアルをお届けするので。その映像がこちらです。
用意は良いのだな…では改めて、今回は我の1日を見て行くぞ。
「ぬぉぉぉ! やってもやっても終わらん!」
我ら椅子に座りながら叫ぶ。机の上にも、床にさえ紙がいっぱいだ。全て我の仕事とは馬鹿げている。
「生神! 手伝ってくれ!」
「全く…本当はいけないんですからね」
こやつは生神。『生物を生みし神』だ。我と同じ神の中の神…四大神に値する者だ。ルールや決まりごとに厳しく、神のあるべき姿みたいなやつだ。
「この量を我1人でやれと言うのは無理がある。と言うか何故こんな馬鹿げたものばかりがあるのだ」
我の仕事は簡単に言うと、他の神の提案に許可を出すこと。例えば、「作物が育ちにくくなるから大雨を降らせたい」という雨の神からの提案が来たとしよう。その許可を出すのが我だ。
「見ろこれを! 『人間が醜いから皆殺しにしたい』だと! 何で神ともあろうものがここまで馬鹿なのだ!」
「私に言わないで下さいよ。2代目なんですから初代と比べたら質は下がります」
「そんなの分かっておる!」
そう。この者達、つまりは我以外の神はみな、元人間だ。正確には獣人や多種族もおるが。初代は我が作ったからそれなりの質は保証されていた。
3時間後
「お、終わった…」
「ハンコを押すだけの単純作業ですからね。本気を出せばこのくらいで終わるものです。まぁそろそろもう一回来ると思いますが」
「ほんと嫌になるのぅ」
「少しになるとは思いますが、ある程度休憩は取っといてください。死んでしまっては困りますからね」
「死ぬわけにはいかん。それくらいの振り幅は分かっておる」
神は死ぬことがない?違うの。神だって死ぬ時は死ぬ。その場合は神星というものになる。神星はそのまま、人間達のおる地上に落ちて拾ったものが新たな神になる。我々のような権威の高い神がそうなってしまうと、力ある無能な神が誕生してしまう。
「はぁー…食べたものは何でも栄養になるとはいえ、もう少し美味い物を食べたいのぅ」
人間と同じといえ、少し違う。必要な栄養分とかが特にないのだ。食ってしまえばどの栄養も補給出来る。便利な身体よの。
「お、そろそろ面談の時間か。また馬鹿どもの相手をしなければならんのか…」
1人目
「やはり神として人間共に力の差を見せるため、噴火を…」
「却下する」
2人目
「いっそのことぉ。化学文明発達させちゃってぇ、超進化させちゃえばいんじゃね?」
「却下する」
3人目
「人間は少し増えすぎだ。津波を起こして一掃…」
「却下する。貴様はこれで3度目だからな。3回連続で同じこと言っておるからな」
n人目
「〜と言う訳で。若干コトウバエの数が減少気味です。天敵であるオオコエバエが増加気味なので、そっちを減らす方向で良いですか?」
「お主…四大神なのだから我に聞かずにそれくらい自分でやらんか!」
「仕方ないでしょう。あなたの許可が降りないと実行出来ないんですから」
このような感じで。数週間に一度、我と面談する機会が与えられる。提案という形では、理由や正当性を示しきれないから説得と言う形を取らせておる。もちろん正当な理由のやつもいる。
「やっと終わったか…神の質の低下。結構深刻かもな」
「見る目だけはあると信じたいですがね。これでは後を継ぐイリウス達が可哀想です」
我々は既に後継ぎを決めている。神は4000年に一度、1000年ほどの時間をかけて後継ぎを見つける。それがローディアのルールだ。以外と代わるのが早いなって?4000年もすれば神という立場も飽きてくるものだ。
「まぁあやつらならどうにか出来るだろう。もしかしたら初代に継ぐほど優秀かもしれんぞ」
「それは…確かにありそうですね。これでようやく神の身から解放ですか。長かったです」
「お主は4000年であろう。我なんて8000年であるぞ!」
世界を管理し神は四大神の中でも重要。その為、そんなポンポンと変えられない。継がせる際にも相手の寿命を伸ばしてでも考える時間が必要だ。ちなみに1000年と言ったが、実際には2000年かかることもある。それは完全に我の匙加減だ。
「さて、また提案書が回って来ましたよ。私は少々神達の様子を見て来ますから、やっていて下さいね」
「うぬ、分かっておる」
「”くれぐれも”サボったりしないよう、お願いしますね」
「うぬ、分かっておる」
こうして、生神はどこかへ行った。我がそう易々と仕事をすると思っているのか?
「よし、サボろ」
我はゆったりと人間達のおる地上に足を踏み入れる。人間達には見えないから好きにし放題だ。基本的にはどこかで寝て過ごすのだが、そう言う気分でない時は、
「よう、イリウスよ」
「あ! 世神様!」
我が友人、イリウスの元に行く。イリウスは生神の後継ぎに選ばれている人間。10歳という若さにして『歪みを操る能力』をコントロールする、いわゆる天才だ。
「お仕事平気なんですか? また生神様に連れてかれるんじゃ?」
「平気じゃ平気じゃ。我にも休息は必要じゃからの」
「今日は何のお話してくれるんですか?」
我は毎度毎度ここに訪れてはお話をしてやる。神の世界の話や、ローディアでの昔話。生神の話をしてやると喜ぶ。今日も興味津々な目でこちらを眺めてくる。
「そうよの〜。今日は生神の話でもしてやろうか」
「やったー!」
こうして、我は生神の話をしてやった。詳しくは本編の方を見てくれ。いつか話してやろう。
そんなこんなで平和な青空を眺めながらイリウスと談笑していると、ある男が現れる。
「イリウスー。また独り言か?」
「ケルトさん! 世神様がいらっしゃるんですよ!」
「んだよ世神かよ。ほんとどこにでもいるな」
こやつはケルト。イリウスを人間界から連れて来た張本人だ。イリウスを勝手に連れて来た挙句勝手に自分の息子にした男。大事に育ててるみたいだから見逃してやってるがこやつにはいつか天罰が落ちる気がする。傲慢、自信家、筋肉馬鹿、などの言葉が合うような獣人だ。ちなみに我が知る限り1番強い。
「あ、そういや俺の神に伝えといて欲しいんだ。新しい能力が欲しいってな」
「誰が伝えるか。自分でやれい」
「自分でやれいだそうです」
「連絡つかねーから言ってんだよ。力の神って何であんなにバトル好きなのかね」
(それをあなたが言いますか…)(お主がそれを言うのか…)
「仕方ないから伝えてやろう」
「伝えてくれるみたいです。ところで何の能力が欲しいんですか?」
「へっへっへ。秘密だ」
「えー。ずるいですー」
こやつらはいつも仲が良さそうにしておる。だがそろそろ我の地上での時間が…
「世神よ。こんな所で何をしているのですか?」
「げっ、生神。お前こそなんでここに…」
「仕事部屋に居なかったもので」
「あ、生神様〜」
「久しいな、イリウスよ。この調子で精進するんだぞ」
「は〜い」
イリウスと生神はあくまで神と人間のような関係を保っている。イリウスが手を振っても、生神は手を振りかえさず、言葉で返す。
「それで世神よ。早く帰りますぞ」
「いーやーだー! あの仕事まみれの時間を過ごしたくなーいー!」
「子供じゃないんですから。8000歳なんですからね」
「イリウスー! 説得してくれー!」
我は思わずイリウスに助けを求める。イリウスは困惑した顔をしつつ、言葉を捻り出した。
「え、えっと。世神様、あなたを必要としてる人はいっぱいいるんです。あなたが居ないと、僕ら人間達もみんなみんな困っちゃいます」
「我の説得ではなーい! ぬぉー!」
「では、失礼する」
これで我が地上で過ごす時間が終わりだ。短いがしかたあるまい。ここからは仕事まみれでそこまで面白くないからカットじゃ。
「押しても押しても終わらんのだ〜」
「はぁー。私も手伝っているんですから。もう少し頑張ってください」
「おやおやおやおやおや。これはこれはお二人とも。随分と忙しそうで」
こやつは『無機物を生みし神』我々同様四大神の1人だ。
「これはこれは、お元気そうで何より。神だというのにデスクワークとは…ぷふ」
こやつは『混沌・秩序を司りし神』我々同様だ。どちらも性格が悪く、神という立場に目を取られた本物の間抜けだ。我はこやつら嫌い。
「わざわざここに来て何のようだ? 手伝うのなら歓迎じゃぞ」
「まさかまさか。世神様のお仕事を手伝えるほど成長しておりませんよ。それに、我々は仕事が多いですから」
「いつもそこら辺をほっつき歩いてるようにしか見えないがな」
「失礼な。この世界の均衡を守るのが俺の仕事。常に見張っていないといけないんだよ」
「私も、生物と違い、無機物は目を凝らさなければ見えませんからね。ぱぱっと終われれば良いんですが…暇ではありません」
こやつらはいつもこうして人を煽るなりしにくる。自身が神だからと勝手に偉い気になっておるのだ。だから我が止める必要がある。
「無神よ。そなた、また憑き人が死んだらしいじゃないか。もう少し見る目を付けたらどうだ? 混秩の神よ。いつまで混沌の仮面を被っているのだ。秩序を施し、素顔を晒したらどうだ?」
混秩の神は、この世界が混沌で満ちている時、混沌の仮面を被ることに、秩序で満ちている時、秩序の仮面を被ることになる。素顔を晒している状態が1番バランスが良い状態だ。それなのに、こやつはいつまで経っても混沌から変わろうとしない。図星を突かれると黙り込むやつらだから余計タチの悪い。
「では、仕事を頑張って下さい」
「身体にお気を付けて」
そう言って2人は去っていった。邪魔が入るとどうもストレスが溜まる。無言で仕事をしているが、あまりに退屈すぎる。仕事をしている間、ある書類で手が止まる。
「生神よ。一つ、質問良いか?」
「どうかしましたか?」
「…神とは、本当に代わるべきなのだろうか」
「はい。私は、そう思います」
「我は納得させられるだろうか。初代生神のように…」
「はい。きっと出来ます。あなたは、立派な神ですから」
数千年と議論されてきたもの。神は変えるべきなのか。人間達に継がせるべきなのか。結果的に、継がせるべきだということで決まったが、神の民達の不満は解消できない。その結果…あんなことが起こってしまったのだ。もうあの惨劇は起こしたくない。
「ふぁーあ。やっと終わったのぅ」
「もう夜ですね。毎日こんなんじゃ、やってられませんね」
「そうよのぅ。どこか食べにでも行かんか?」
「良いですねそれ。早く行きましょう」
神の世界では、食べ物に金はかからん。というか給料のような制度はない。何をするにも対価は必要無いのだ。その代わり、娯楽も充実しておらん。
我々は食事を済ませ、それぞれの家に帰る。
「明日も早いからな。さっさと寝てしまうか」
我はイリウスが生きている事を確認し、ゆっくりと就寝する。これが、我の基本的な1日だ。
どうだ? 神の1日というのも面白いであろう。ほとんど人間と変わらんのだぞ。それでも、我が一つ間違えれば地上の者達は皆死ぬ。責任が違うのだ。神なりの悩みもあるしの。
まぁそれはどうでも良いのだ。特に変化のない日常より、刺激的な日常の方が見ていて面白いのではないのか? ということで、
ローディアの光 〜神となる者の物語〜
の方も是非見てくれ! 我が友人イリウスのはちゃめちゃな日常を描いた物語じゃ。心境の変化や、成長を見届けられるよい作品になっておる。あっちの方が本編だからいつか明かされる真実も…。とにかくここまでの愛読、感謝するのだ!
では、またいつか。
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