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第八話

これでこのお話は終わりとなります。

最後までお読みいただきありがとうございます!

「せっかく見つけたバディだもの、僕が君を死なせないよ」


 涙を流していた陽菜は、驚いた様子で僕の方を見ると、

「モブ顔に言われても・・・」

と、不貞腐れた表情を浮かべながら言い出した。


 モブ顔、そうだね、僕の顔は、言うなればモブ顔。一分離れれば忘れてしまいそうなほど特徴のない顔だし、いつでも担任の先生が最後まで名前を覚えられないのが僕っていう事にもなるからね。


「そうだね、そんなモブな僕だけど、モブなだけに、あそこの世界では一番、生き残りには長けていると考えているんだ」

「え?どういうこと?」


「戦隊モノでヒーローがまず戦うとなったら、強い敵?弱い敵?」

「そりゃ強い敵になると思うけど」

「戦隊モノのヒーローと、その他大勢の背景みたいな人間、生き残るとしたらどっちだと思う?」

「そりゃヒーロー?」

「ううん、違う、背景みたいな人間の方が生き残りやすいんだよ」


 これは二年間、ソロで生きてきた僕なりの経験則だ。


「目立つ奴には敵が群がる、確かに目立った存在となって敵をどんどん倒していくのは格好良いかもしれないけれど、それって自分の命を賭けてまでする事だと思う?」


「自分の命は賭けたくない!」

「でしょ?それに、イケてるグループは大概個性が強すぎて、一緒に居るだけで疲れちゃうから嫌なんだよ」


 荒幡健太くんとかね、その周りの人間とかね、僕、絶対に相容れないんだよね。


「そんな訳で、僕とバディを組むと『ガンガンいこうぜ!』じゃなくて『いのちだいじに』の方針でいくことになるんだけど?」

「いのちだいじの方でいいです!」


「それに、僕は君の言う通り、モブキャラみたいなものだから、目立った活躍もしないし、周りは文句を言うかもだけど」

「生き残るのがまずは第一なんじゃない?」


 ああ、良かった。星野陽菜は可愛らしすぎるし、オーラみたいなものがあるから、イケイケグループに参加したいって言い出しそうだと思ったんだけど、『いのちだいじ』に気がついてくれたお陰で、僕の方への歩み寄りを見せてくれているようだ。


「あと、声」

「声?」

「陽菜は声が特徴的だから、もしかしたらチート級の力があるかもしれない」

「はい?」


「『まほろびの世界』ではイメージが重要で、自分の武器とか攻撃なんかは、大好きなゲームのアクションを転用させている人が多いから、君にもそこの辺りを参考にして、今後の自分の攻撃方法をイメージして欲しいんだけど、多分、君の声、戦力になる気がするんだ」


 陽菜は自分の喉を押さえながら、

「声が?」

と、震える声で問いかける。

「私の声に力があるの?」

「だって、君の声で『ほろび』が動きを止めたじゃないか」

「えええ?」


 確かにあの時、陽菜の後ろから近づいてきた『ほろび』は彼女の声を聞いて動きを止めた。きっと彼女の声には何かしらの力があるのに違いない。


「あっちの世界に行くのは毎日じゃなくて、三日後とか五日後とか、かなり不定期になるから、恐らく次に会うのはあっちの世界って事になるとは思うんだけど、連絡取れるようにライン交換してもらってもいい?」

「ええ?別にいいけど?」


 僕は自分のバディと連絡先を交換した訳だけど、僕は他人と連絡先なんて交換したのはコレが初めてという事になる。


 ちょっと浮かれてしまった僕が、

「それじゃあこれからも宜しくね」

と言って手を差し出すと、陽菜はまるで握手会でファンに応じるアイドルのような素振りで僕の手を握ったのだった。


「それで、あなたの名前はなんという名前なの?」

 彼女の質問に、はたと僕は我に返った。

 そうか、僕は彼女に自分の名前を教えていなかったか。


「日村涼、涼って呼んでくれればいいよ?」

「涼ね、わかった」


 眩しいほどの笑顔を浮かべる陽菜の左手首に巻かれた包帯が痛々しい。だけど、そんな彼女が嬉しそうに僕を見上げてきたので、僕もモブそのものの自分の顔に、それなりの笑顔を浮かべてみたのだった。


                                  〈完〉


数あるお話の中からこの物語を選び、最後までお読み頂きありがとうございました!


これでこの物語は終了となります。続編も考えているので、更新出来ればな〜と思っています。

モチベーションの維持にも繋がります。

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