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いじめられっ子エイリアン  作者: Satoru A. Bachman
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第3章 桜舞町の少年たち(Ⅴ)

 第3章 桜舞町の少年たち(Ⅴ)


 「『返せよっ!返してくれよぉ』とか言って泣いてやんの、あいつ。はっはっは」

ともの口真似をして笑う馬場真。それに続いてピーとスカンクも笑い声を上げる。

「俺の握りっ屁も効いたな」

得意げに言うスカンク。

「お前の屁マジでくせーからなぁ」

ピーがそう言い、顔をしかめて鼻をつまんだ。


 3人の悪ガキは国道51号線を歩いて、先ほどまでいたセコハンミヤコを通り過ぎて、その先にあるマーズマニア専門店というアダルトショップに入った。女の裸のポスターやエロビデオや本が沢山並んだ店内。

「すげえなぁ」

息を呑む馬場。隣にいるピーに同意を求めるように彼の顔を見るとピーは涎を垂らしそうな顔でにやにやして頷いた。スカンクは手足を縄で縛られて体を吊るしあげられて苦悶の表情を浮かべた女が映ったビデオジャケットに顔を近づけてじっと見ていた。

「はっはっはっは。お前、そんなの興味あるの?」

ピーがスカンクをからかう。

「だって…凄くねえ?これ」

どきどきして落ち着かないスカンク。彼のズボンの股間の部分が膨張し、不自然に膨らんでいる。

「うわ!こいつ、勃起してやんの!がっはっはっはっは」

スカンクの股間を指さして馬鹿笑いする馬場。

「はっはっは、この変態野郎っ」

ピーは笑いながらスカンクの肩をどんと押した。

レジカウンターからはしゃいでいる少年たちのところへ店員が出てきた。

「ちょっと君たち、いくつかな?ここ18才未満は入っちゃダメだよ」

店員のほうを振り向く3人。冴えない丸顔でバーコード頭で、身長は170㎝前後だが80キロはありそうな太った中年の男の店員。

「ぷっ、なんだこのデブ!?」

店員を見て噴き出す馬場。

「ぷっ、くくく…」

ピーも笑いをこらえている。スカンクは相変わらずSMプレイのビデオジャケットに見とれている。ガキにデブと言われた上に笑われてむっとした店員は

「このお店は子供が来るところじゃない。出てってくれ」

と馬場とピーのほうを見たり、目をそらしたりしながら言った。

「ビビッてるぜ、このデブ」

と馬場がピーの耳元で囁いた。

「出てけって?嫌なこった。俺たちも見てえんだよ、エロ本。なあ、いいだろ、おっさん」

ピーが粋がったように口を尖らせて言った。

馬場がポケットからヘアスプレーとライターを取り出す。スプレーの噴射口を店員に向けてジッポーの蓋を開けたり閉めたりしながらカチャカチャ鳴らした。

「いい加減にしなさいっ!」

危険を感じた店員は馬場の手からライターとスプレーを取り上げようと掴みかかった。

「おい、放せよ、ブ男!」

もがく馬場。だが、さすがに大人の男の力には逆らえず、スプレーとライターは取り上げられ、馬場は店の床に倒されて店員に押さえつけられた。

「放せよ、てめえ、くせえんだよ!デブっ」

もがいて悪態をつく馬場。

ピーがポケットからアーミーナイフを取り出すが、一瞬ためらった後、ナイフのグリップの部分で馬場を掴む店員の背中を思いきり殴った。さすがに刃のほうで刺す訳にはいかない。

「ああっ…」

と声を上げて痛がるデブのおっさん。

ピーは立て続けに3度殴った。今にも泣き出しそうな店員。ずっとSMプレイのビデオジャケットに見とれていたスカンクが股間を膨張させたままこちらへ来る。彼は右手を尻に当てている。いつものやつだ。スカンクは店員の顔に右手を押し付けた。

「ニヒヒヒヒッ、喰らえ、この野郎。俺のすかしっ屁だ!」

とスカンクが下品な裏声で叫んだ。鼻元に握りっ屁を引っかけられ、酷い悪臭にげほげほと咳き込む店員。

「俺今うんこ我慢してたから、くせーだろぉ!まいったか」

苦しむ店員を勝ち誇ったように見下ろすスカンク。店員はようやく馬場を放し、立ち上がる。馬場は店員のおっさんのでっぷりとした腹を蹴ると、店員はその衝撃で「うっ…」と声を漏らし、体をくの字に曲げた。馬場はおっさんの鼻柱を思いきり殴りつけた。顔を押さえて床に倒れるバーコード頭のおっさん。

「K.O!」

と馬場が叫んだ。スプレーとライターを取り返すと3人は店を出て一目散に逃げた。



 3人はともから奪った千円札と数枚の小銭でプラFOX模型店の前の自販機で煙草を3箱買った。馬場はマルボロ。ピーはラーク。スカンクはセブンスター。そして、模型店の左の向かい側にある駄菓子のどどん屋の前のベンチに腰掛けて煙草を吸いながら他愛ない話をした。ピーとスカンクがベビースターやポテトフライを買っている間、どどん屋のおばちゃんは会計で忙しそうだった。馬場はその隙にフィリップのガム4つとよっちゃんイカとチョコバットを取り、ポケットにしまった。万引きしていると思わせないために50円のスーパービッグチョコも取ると、その代金だけはちゃんとおばちゃんに払った。

 また店の前のベンチに座って3人で仲良く駄菓子をぽりぽり食べていると、1人の少年が歩いてきて駄菓子屋に入っていった。ピーが隣に座る馬場の腕を肘でつつく。馬場が振り向くとピーは今店に入っていった少年を顎で示した。今店内で色んな駄菓子を見ながら迷っている少年は馬場にも見覚えがあった。繋がり眉毛で出っ歯で、痩せていてひょろんとした体型のその少年。

「誰だっけ?あいつ」

と馬場がピーに聞いた。

「布川だよ。4年のとき転校してった奴」

ピーが答える。

「ああ、あいつか。ゲボフラッシャーじゃん」

馬場は思い出した。





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