どんみり
異國では年を越えてもがらがらどんみり醒めやらず
疫癘もずるずるどんみりのありさまにて
諸式もみるみるどんみりの次第
剩へ
この冬は殊にどんみり身に凍みて
國境の長い隧道を拔けた先も
白々どんみり嵩を增すばかりか
とどろにどんみり捲込まれて人死があつた由
人が口を開けばどんみりばかり吐出して
人々口々どんみりたんと吹聽すれば
あんなどんみりな振舞ひなぞ
決してすまいと
それこそ
どんみり面を作つてみては
頭を橫に振るのだけれども
吾が肚の底を覗いたところ――
はてさて
厭に黑々どんみりたる始末
これはしたり
人に露見はしやせぬかなんぞと
すつかり心持ちもどんみり然となつて
振仰いだ空
ああ晝閒の月が半分だ
寒中らしく白けた靑に
果敢なげに白けた白と
振仰いだる空に
ああ晝閒の月がかつきり半分
かうしてみると
あればかりはどんみりではなささうな
否々――
ここから見たらさうかも知れぬが
桂男になつてもごらん
或いは玉兔か蟾蜍でも
缺けたるはうのもう半分
どんみり黑々闇の中 さて闇の中