最終話.道連れとなる
1話あたり1000字程度、全5話同時投稿です。
よろしくお願いいたします。
それから数日間、3人は毎晩宿屋の食堂で演奏をした。初めにアルレッキーナのレパートリーを披露して、そこにサッジが歌詞を乗せる。繰り返しの2回目からリッターの低音が加わる。
3人は演奏をとても楽しんだ。最初の晩に生まれた『星屑』の歌詞は、毎回少しずつ変化しながら定番として必ずステージの開演に使われた。
ふるさと遥か
星屑はふる
今宵もひとり
星空のもと
夢見る男の
絵筆が走る
このリフレインだけは歌詞を変えずに、演奏の開始を食堂にいるお客さんに告げるのだ。3日も経つうちには、評判が評判を呼び、食堂のお客さんは増えていった。
最初の晩も賑わってはいたが、空席もちらほら見つかる程度であった。それが3日たち4日たち、ついには立ち見が出るほどにまで混むようになっていったのだ。
「明日の朝、出発しようと思うの」
10日目の夜、演奏が終わるとアルレッキーナは2人に旅立ちを伝えた。
「それじゃ俺も行こう」
リッターの仕事は、元々アルレッキーナとの出会いがあった日までだったのだ。
演奏を3人で始めてからは、本来の剣士としての仕事とは別に演奏による収入があったのだが、若い剣士が充分食べるには足りない。リッターもそろそろ次の仕事を求めて旅立たなければならないのだろう。
「次の町は決まっているのか?」
「ええ。羊の煮込みで有名な、肉の町ラグシ」
「俺もそこへ行こう」
「僕も!」
「じゃあまた、宿屋で演奏できるかな」
「いいね」
「それはいいな」
3人は次の町でも共に演奏することにした。アルレッキーナは嬉しくなって、3人のためにその場で曲を作った。サッジはすぐに歌詞をのせ、リッターもすかさず低音をつける。
さても愉快な 道連れは
笛と太鼓の 音に浮かれ
緑輝く 草原の道
さざなみ揺れる 湖の畔
見上げる空の 雲白く
小鳥の歌は 枝えだに
辿る旅路は 終わりなく
行先決めずに 歌いゆく
さても愉快な 道連れは
笛と太鼓の 音に浮かれ
昼なお闇き 森の奥
雲つく山の 峠道
流れる川の 誘うまま
囁く風の 吹くままに
辿る旅路は 終わりなく
行先決めずに 歌いゆく
サッジは魔法で竪琴を作り出し、アルレッキーナの笛に華やぎを添える。歌いおさめてアルレッキーナの笛と太鼓が止んだあと、魔法が紡ぐ竪琴の音が騒がしかった食堂の空気を沈めてゆく。
明るく開けた夢の旅路が、遥かな空に溶けてゆくような。明け方に綻ぶ花の蕾から、朝露がきらきらと零れ落ちるような。
旅の仲間たちがいずれはそれぞれの道へと分かれて手を振りあうような、一抹の寂しさを残して。
最後の音が静かに消えた。
完結です
お読みいただきありがとうございます
最後のうたは、仙道アリマサさんの課題曲に合わせて歌えるようになっています。
テイバー&パイプは実在の中世ヨーロッパ大道芸です。現在でも愛好家がおり、動画もたくさんございます。後日、笛の写真を欄外に載せる予定です。