14 落ち込んだ時は美女が慰めてくれる
ちょっと堅い話が続いていましたので、時々は確保した美女と戯れたいと思います。
テレビ、新聞、ネット。どこでもタイガーチャイルドファンドがバッシングされるようになって毎日が憂鬱になった。
カス高に登校しても上の空状態である。
毒島ら不良グループをボコってから、毒島達は不登校になったし、僕をイジメる奴はいなくなった。だけど気が紛れることがないので、心は自ずとクリスタルとの戦いの行末に向かってしまう。
いつもなら楽しみにしている穂香ちゃんの授業でさえも、ぼんやりと窓の外を見て過ごす。
穂香ちゃんの心配そうな視線には気付いていたが、目を背けてしまった。
授業が終わる。穂香ちゃんは教科書や資料集を束ねながら口を開いた。
「虎児郎君は生徒相談室に来なさい」
声はイライラを含んでいる。
やっべー穂香ちゃんが怒った。
周りを見れば教室中の注目を一身に集めてしまった。クラスの奴らはなんで僕が呼び出されるのかわからなくて怪訝そうにしている。
穂香ちゃんが先に教室をツカツカと出て行く。
「穂香ちゃんお得意の性教育か。いいなあ」
男子の一人がニヤついている。
「ぜってー違う」
軽く言い返してから、穂香ちゃんを追いかけた。
今から昼休みだ。40分あるけど穂香ちゃんは何をするつもりだろう。
僕が元気がないから叱られるんだろうなと気が滅入る。
教室からは離れたところにある生徒相談室の前で穂香ちゃんが待っていた。
周囲に人影はない。
生徒相談室があるのは知ってたけど中に入るのは初めてだ。
カス高の教師はやる気がないから、この部屋で生徒の悩みを聞いてやろうということはない。
穂香ちゃんがドアを開けて灯りのスイッチを入れる。
「あれ、つかないね」
穂香ちゃんがパチパチと何度スイッチを入れたり消したりしても蛍光灯は明るくならない。誰も壊れて
いることに気づかなかったとは、さすがはカス高だ。
「まあ、いいや。虎児郎君、入って」
穂香ちゃんは気を取り直して、僕を中に入れる。
中は窓の明かりだけで薄暗い。
パーティションの奥に小さなテーブルに向かって椅子が二つ置かれていた。
「座って」
穂香ちゃんに言われて、腰掛ける。
「ごめん、穂香ちゃん、授業をちゃんと聞いてなくて」
僕は先手を打って謝った。
穂香ちゃんはもう一つの椅子に座ってから怒ると思ったら、違った。穂香ちゃんは僕の膝に向き合って腰を下ろす。
「え、えええ」
戸惑う僕の首に穂香ちゃんは腕を回してくる。
穂香ちゃんの顔がすぐ目の前。
甘い香りの息が吹き掛かる。
穂香ちゃんの体は重くはない。自分の足で体重を支えてくれているようだ。
「虎児郎君、元気ないね」
柔らかい体が密着して、激しく動悸がする。
「ほ、穂香ちゃん、何これ」
「何って……虎児郎を慰めようと思って」
穂香ちゃんの顔が赤くなる。
恥ずかしいなら大胆なことしなきゃいいのに。
叱られるわけじゃないのは良かったけどこれは困る。
「い、いいよ。大丈夫」
僕は穂香ちゃんの腕を解こうとするが、かえって強い力でしがみつかれる。
「虎児郎君、学校では私を好きにしていいからね」
穂香ちゃんが耳元で囁く。
「だから元気出して」
しかも軽く息を耳の中に吹き込んでくるからドキッとする。
こんなテクニックどこで覚えたんだろう。僕のためにネットで調べたのかな。
「積極的過ぎるよ、穂香ちゃん」
困惑の表情を浮かべてみせる。
本当は穂香ちゃんが奥手なのを知っているから、無理してやってくれなくていいのだ。
「虎児郎君はお父さんのためにクリスタルと戦ってくれているのに、私にできることは何もないからせめて体で」
「僕が戦いたいから戦っているだけだよ」
穂香ちゃんが唇を近づけてくるので、頭を後ろに引く。
「私……このままじゃ虎児郎君が登校してくれなくなるかもって心配で」
「うう、確かに登校がおっくうになってるんだよね」
「だから私、虎児郎君が登校したくなるように毎日お昼休みの間、エッチなことをしてあげようと思うの」
穂香ちゃんの計画に唖然とする。
「ま、毎日だと、他の生徒に怪しまれるよ」
「大丈夫。場所はいっぱい見つけてあるから。図書館の書庫とか、用具室とか、非常階段とか人目につかないところ」
穂香ちゃんは目を輝かせている。
「誰かに見つらないかドキドキしそうだよね……私なんてバレたらクビだから……」
そうまでして僕のために。穂香ちゃんなりに頑張ろうとしているのが伝わってくる。
穂香ちゃんと学校でイチャイチャする……
物陰で抱き合って……穂香ちゃんをなでなでしたり……
他の男子が女に飢えているのに僕だけがいつでも美女を召し上がることができるなんて、夢のように魅力的な提案だ。
でも穂香ちゃんの言う通りかなりリスキーだ。
穂香ちゃんがクビになったら、責任を取らないといけなくなる。
どうしよう。僕はどうしたい。
遠慮しすぎるのも穂香ちゃんに悪いし。
「じゃ、じゃあ、どうしても我慢できなくなったら、穂香ちゃんにちょっとだけ甘えることにするよ」
悩みぬいた結論を告げる。
「ほんと!?」
穂香ちゃんがめっちゃ嬉しそうな顔をする。
「ちょっとだけだよ。雑談したり、その……ちょっとだけ触らせてもらったり」
照れながら言う。高校生男子だから。
「えーもっといろんなことしていいのに」
物足りなそうにする穂香ちゃん。
僕としてはけっこうエッチなことを要望したつもりなのだが。
「……いずれおいおい」
穂香ちゃんをなでなでしているうちに理性をなくしそうな自分が怖い。本当に誰にも見つからずに済むんだろうかと心配なのだが。
「じゃあじゃあ、明日からは、したくなった時には私のスマホに連絡をしてね」
穂香ちゃんは胸をときめかせている感じだ。
「……うん。いつでも穂香ちゃんに甘えられると思うと、気が楽になるよ。ありがとう」
気を悪くしないよう愛想笑いをしてみせる。
スマホの時計を見る。昼休みはあと二十分。
「お腹すいたから、もう行くね。穂香ちゃんだって、お昼食べなきゃ」
抱っこしていた穂香ちゃんをゆっくりと降ろした後は、駆けるようにして生徒相談室を出た。
穂香ちゃんに気を遣わせて、悪いなあと思う。元気を出さねば。
でも、学校に来る楽しみが増えたぞ。ひひひ
ブラック企業との戦いを描いていて、ブックマークやご評価いただけると、
読者の方々も苦しんでいらっしゃるんだなと、とても勇気づけられます。
次回もお読みいただきますと幸いです。