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夕園地

作者: five (5)

 空は紫色から橙色の階調に染まり、きらきらとライトアップされた遊園地は、閉園のアナウンスを流している。

 見知らぬ家族達はぞろぞろと、皆エントランスの方へと歩んでいく。

「お嬢さん」

 女の子が振り返ると、そこには紫色と橙色のツートンカラーの二股帽子を被ったピエロが立っていた。

「どうしたんだい?もう、遊園地はおしまいの時間だよ。さあ、お帰り」

 しかし女の子は俯き、立ち尽くして何も言わなかった。

「……お母さんは?」

 女の子はふるふると首を横に振った。そう、迷子なのだ。

「じゃあ、ボクと遊んでいようよ!」

 女の子はしょんぼりとした顔のまま、頷いた。

 ピエロは女の子の小さい手を引き、煌々と輝くメリーゴーランドへと向かった。


 メリーゴーランドの弾むような音楽は、聞くとたちまち楽しくなってくる。

「風船をどうぞ」

 真っ赤な風船はぷかりと夕暮れに浮かび、見ている心までを浮かばせるようだった。

「さあ、メリーゴーランドに乗って。出発だよ!」

 ピエロがそう言うと、豪華な装飾が施された木馬がゆっくりと動き出す。

 回る夕暮れに流星群のように糸を伸ばす星々。

 女の子は次第に、自分が迷子である事を忘れてしまっていた。


 ──すると、ライトアップがぱっと消え、夕闇には遊園地のシルエットだけが浮かび上がった。女の子は突然の事に驚く。

「ふふふ、もう時間だね」

 そう言うと、ピエロは止まってしまった木馬から身軽にひょいと降りる。

「ようこそ、夕闇の遊園地へ」

 ピエロは右手を前に、深くお辞儀をする。

「エントランスはもう閉まってるよ。つまり……」

 目を細め、にっこりと微笑む。


「もう、帰れないよ」


 女の子の手から風船が離れ、ピエロの笑い声と共に夕闇の空へと吸い込まれて行った。

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