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企画参加の短編

白かみエルフとさがしものの旅

作者: 小澤ゆめみ


 冬童話2021参加により、平仮名が多いです。


本編に組み込んだので、こちらは検索除外にします。



* * * * *

 

[1]



 ぼくの耳はとんがっている。父さんも、母さんも、耳がとんがってる。となりの島の人はとんがってない。


「とがり耳!おまえのすみかはあっちだぞ!島にかえれ!」


 となりの島の人、もっと大きい大りくの人は、ぼくたちをキラいなんだ。




 たまに耳のとんがった子どもを島につれてくる人間がいる。


「あんたらの子どもだろ?うちの子を返して!かってに取りかえやがって!」


 あの女の人が、生んだ子どもじゃないのかな?取りかえるって、どうやってやるんだろう。ぼくたちはまほうがつかえるけど、よその子と取りかえたりなんかしないのに。




 ぼくの父さんは一人だけ。ほかの人とはかえられない。まほうとりがとくい。やさしくてかっこいい。


 ぼくの母さんは一人だけ。ほかの人とはかえられない。まほうとりょうりがとくい。やさしくてかわいい。




 ぼくが家ぞくを大切なように、ぼくは村の人たちも大切。みんなとんがり耳。白いかみ。いっしょにあそぶ。いっしょにおまつりもする。


 じゃあ耳がとんがってなかったら?かみが白くなかったら?


 それでもなかまだ。かた方の耳が丸い子もいる。かみが金色の子もいる。


 もしもとなりの島の人たちみたいに、りょう方の耳が丸くてかみが茶色だったら?


 ううん、この村の人は子どもをすてたりしない。たまにしかうまれない大切な子ども。生んだ子が自分の子どもじゃないわけない。




 となりの島の人や、大りくの人がこの島に来ても、この村の人はおいはらったりしない。まほうでこうげきもしない。全部の島の人たちが、この島みたいにできないのかな?この島みたいなところはほかにないのかな?




 ぼくはさがしたい。しあわせの島を。きっと見つける。ちがっててもすてられない島。見てまわるんだ。ちがっててもなかよしの島を。おしえてもらおう。なかよしのやり方を。


 ぼくは大きくなったらたびに出るんだ。まわりの島全部となかよしの島をさがしに!







* * * * *


[2]



 ぼくはたびに出た。父さんと母さんは見おくってくれた。村の人たちもがんばれと言ってくれた。ぼくたちはとてもとても長生きだ。だからきっとまた会える。




 島をどんどんわたる。どの島の人も、ただとおりすぎる旅人たびびとにまでは、らんぼうはしない。ついた日。次の日。出ぱつの日。そのくらいがいいと、おしえてくれた旅人がいたからそうした。ほんとうに、そのくらいならおい出されなかった。




 長くいっしょにたびをした人たちもいた。かれらは人間ではなかった。体にどうぶつがまざっている人。岩をかた手で持つ人。風になれる人。とにかくかわっていたので、ぼくのことをまったく気にせず旅のなかまに入れてくれた。




 そうしたいいたびは大りくに入るまでだった。ここの人たちはぼくを見ただけでイヤなかおをする。とまらせてもらえない。食どうにも入れない。ぼくがエルフだから。


「ほら耳がとがってる。」


「かみが白い。きっとまほうを使うぞ。ちかよるな!」 


 ぼくはフードをかぶっていどうするようになった。ぼくをうけ入れてくれるところはなかった。ごはんはまほうで木をそだてて実を食べた。ねるところはテントでいい。でも心がさむかった。さびしかった。




 長い時間をかけて大りくの国をまわった。どの国も同じだった。中にはしんせつな人もいた。でも国として、見た目がちがうもの、しゅぞくがちがうものを、やさしくうけ入れるところはなかった。




 この国でさいごだ。大りく中の国をまわっても、見た目がちがうものを、やさしくうけ入れる国はなかった。ぼくたちエルフのほかにも、どうぶつの耳が生えた人たち、黒いかみの人たち、茶色じゃない目の人たちはやさしくされなかった。




 ある日おしろのそばの森をあるいていると、きれいな女の子に会った。


「あら、あなたエルフなの?」


 ひと目でしられてしまった。またおいはらわれる。ぼくがあわてて後ろに下がると、フードがはずれた。それを見た女の子はわらって言った。


「きれいなかみね。わたしのモジャモジャなかみも、あなたみたいだったらよかったのに。」


 おどろいた。イヤなかおをされなかった。このかみをキレイだと言った。


「あなた、かわったまほうがつかえるんでしょ?なにか見せてよ。」


 ぼくはそこに生えているデイジーのつぼみをさかせてあげた。


「まあすてき!わたし、この花と同じなまえのおともだちがいるの。あなたにも会わせてあげる。」




 そうしてぼくは、女の子の家にすむことになった。その家はおしろだった。







* * * * *


[3]



 女の子は大人になった。そして心をきめた。




「これいじょうおしろの中にいても、さべつはなくならないわ。どこのたみだっていいじゃない。耳のかたちも、はだの色も人それぞれよ。太ようをおがもうと、星にいのろうと人それぞれよ。男がかみをのばそうと、女がやりをふりまわそうと人それぞれよ。」



 女の子はぼくがイジメられているといつもたすけてくれた。町でイジメられている子を見てもいつもたすけてあげた。


「みんなだれにもめいわくをかけてないわ。どうしてわらわれたり、イジメられなくちゃいけないの?」


 女の子はつよかった。心も体もつよかった。見た目でおいはらわれない島を、見つけたいぼくの気もちを、ぼくよりもわかってくれた。


「だからわたしもたびに出る。こまっているなかまをあつめて、じぶんたちで島を作るのよ!あなたもきょうりょくしなさい!」




 ぼくはおどろいた。さがしても見つからなければ、かえろうと思ってた。みつからなければ作ればいい?やっぱりこの子はすごいや。




 そうしてぼくらはたびに出た。旅はきけんだったけど、ぼくはまほうがとくいだったし、女の子もつよかった。


 さべつでこまっている人たちはたくさんいたけど、ついてくる人は少なかった。旅をすると色んな人に会わなきゃいけない。だからこわいって。




 それでもなんとかなかまがあつまり、ぼくらはふねをこぎ出した。このさきには、黒いかみの人がたくさんすむ島があるらしい。


 さべつのない、へいわな国だ。ルールが色々あって、いじめるやつも、らんぼうするやつも、つかまっておしおきされるらしい。ぼくたちのやりたいことを、さきにやっている人たちがいる。ぼくがさがしてる島はそこかもしれない。




 ついた島はおいだされない国だった。家がもらえた。なかまもよろこんだ。でも女の子はまんぞくしない。


「女だって短いズボンがはきたいわ。かみだってみじかくしたい。」




 それにこの島の中ではさべつはないけど、やっぱり大りくの人にはだまされて、うばわれる。


「気長にいきましょう。ここでは話をきいてもらえる。いいかんがえは取り入れてくれる。わたしの子ども、そのまた子どもに、さべつはだめだっておしえて、どんどんみんなでかえていくのよ。そうしてつぎはほかの島へ。いつかはわたしがすんでた国もかえてみせる!」




 ぼくのさがしもの。それはこの子だった。


 ぼくが見つけたかった島を作ってくれると言う。だからぼくもいっしょに作るんだ。とんがり耳でも、白いかみでもおいだされない島を他にも。黒いかみでも、茶色の目じゃなくてもイジメられない国を大りくにも。


 だいじょうぶ。ぼくは長生きなしゅぞくだ。きみの子どもも、その子どもも見まもるよ。


 ぼくのさがしもの。そのさきを、この目でちゃんと見るまでは……ぼくのたびはおわらない。







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【連載中小説】
生贄の騎士と奪胎の巫女

「ぼく」が登場するこちらもよろしくお願いいたします。
完結まで予約投稿済です。



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【番外編】
4 吟遊詩人の詞作ネタ 

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