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プロローグ「俺、神様に殺されました」

どうも!伊吹香恋です。

今回からこちらで小説を投稿させていただきます!

元々ハーメルンというサイトで投稿していました!

今は両サイトに同時に投稿させて頂いてます!

長く話すより実際に見ていただいた方が早いと思いますので、本編をお楽しみください!


それでは、どうぞ!


突然だが、俺は今独房にいる…。冷たい…薄暗い…光と言えば蝋燭の小さな灯ぐらい…横には牢屋がもう一つあり、横たわってるのは白骨化した死体…というかガイコツ…。

 

「何で俺はこんなところにいるんだ?」

 

世の中ホント理不尽だ!

 

 

 

事の発端は数時間前

 

俺は突然死んだ。というか、死んだときの記憶がないのだ。目を開ければ薄暗い空間のようなところにいた。そして眩いほどの光を放ち、上空から人がおりてきた。豊満な胸元をはだけさせ、少しでも風が吹いたら下着が見えるんじゃないかというようなミニスカート。立ち整った顔立ちに艶やかな金色のロングヘヤー。

彼女は俺の目の前まで来る。女性というのは何でいい匂いがするのか。それは異性だからか、…ましてや俺が童貞の彼女いない歴=年齢の男だからかはわからんが、その女性が近くまで来ると、俺はドキリと鼓動が鳴るのを感じた。

そして女性は俺にこういった。

 

『わりぃ、間違えて殺しちった☆』

 

てへっと拳を自分の頭にコツンと当て舌を小さく出した女性。

 

『はっ?』

 

カワイイという感想よりも先に口から言葉が出てしまった。

女性は玉座のような椅子を出しドッシリとその椅子に腰かけると指パッチンすると煙と共に小さな机が女性の横に現れ、何も入っていないグラスとワインらしきボトルが置かれていた。

 

『これこれ♪』

 

女性は嬉しそうにそのボトルの栓を開けて中身をグラスに注ぎ一気にワインを飲み干した。

 

『ぷっはぁ~!』

 

…何この人…勝手に人殺して、勝手に一人で出来上がり始めたんですけど…怒っていいとこ?キレて良いよね?

女性は再びグラスに酒をつぎ始める。

 

『仕事なんて飲んでないとやってられないよなぁ♪』

 

えっ、仕事中なの?今この状況仕事中なの!?

 

『…』

 

仕事中に客は置いておくのが仕事かこのヤロウ!綺麗な人だなと思ったが今じゃあそんなこと思わねえ!エロいとは思うがな!!

 

『そんであんた、このまま成仏する?それとも異世界に転生してみる?』

 

『…はっ?』

 

本日二度目である。

 

 

 

 

 

 

そして今に至る…

 

俺は転生することを選んだ。まだ20代前半の若さで成仏するのは流石に惜しいと感じた俺はためらわず異世界転生を選んだんだが…あの女…(自分では女神とか名乗ってたな…)俺の転生先を盗賊団らしきねぐらである洞窟の前に転生しやがった…。そんなことすればどうなるか…怪しい服装をしているということで連行されて独房行き決定しました♪やったね!

 

「じゃあああああああねええええええわああああああああああああ!!!!!!!」

 

っざけんな!何をどう間違えればこうなるんだ!仮にも女神だろあの飲んだくれ女!!なんで異世界に転生したのに速処刑されるような場所に転生すんだよ!

ふっざけんな!ちくしょうがぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 

「おい!うるせえぞ!!!」

 

牢の門番の男が乱暴に牢屋を蹴る。だが俺にとってそんなこと関係ねえ!

 

「っせええ!!!コチトラ変な女神もどきに勝手に人生の幕を閉じられてその上こんなところに転生されてんだ!怒らずにいられるかこん畜生がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

牢の門番と言い合いをしていると奥から数人の兵士らしき人影がこちらに近づいてくる。

兵士は三人。一人は黒いローブで身を包み剣の柄がローブからチラチラ見えている若い剣士。髪は銀色でツンツンとした髪型。額にはバンダナを付けた青年。

もう一人は大きな体をした男。筋肉…その一言に尽きるぐらい筋肉モリモリマッチョマンで背中に大きな剣を差している。服装は腕を出した赤色の服に胸当て、下は長ズボンに脛あてと武器の割には防具は軽装備である。もう一人は女だ。透き通るような銀色の髪は片目を隠し、肩までかかるほどの綺麗な髪。身長は三人と比べると比較的に小さく小柄。腰にレイピアのような細い剣を差しており、彼女も服の上から胸当てと籠手…でいいのか?とにかく軽装備を身に着けている。

はっきり言って、俺はこの少女に見惚れていた。絶世の美少女と言ってもいいほど綺麗で、可愛かった。どこか気品があるように見え、歩いてるだけでそこら辺の男の視線を集めるほど彼女は可愛かった。

あれが世に言う傾国の美少女と言うことなのか?

 

三人は俺の牢の所に来ると黒いローブの男が牢の門番に声をかける。

 

「オイ、何を騒いでいる」

 

「こ、これは申し訳ございません!ラウル様!この者が騒ぎ立てていたので注意を」

 

あっ!この門番!俺に罪をなすりつけやがった!

…と言っても確かに俺が喚きたててただけだから文句が言えねえのは確かだ…。

俺は美少女から意識を切り替えて黙り込む。こいつら、下手をすればこのゴロツキたちの上の人間だ。俺が下手に騒ぎ立てればその場で斬り捨てかねないからな。

 

「…」

 

「まあいいだろう。いきなりこんなところにぶち込まれたら誰だってそうなる…」

 

ラウルと呼ばれた男は懐から鍵を取り出し、俺が入っている牢を開けた。

…なんだ?ついに処刑の時間が決まったのか?

 

「出ろ。事情聴取が終わったら釈放だ」

 

「…はっ?」

 

本日三度目だ。

 

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場所が変わり、俺は洞窟の奥に進められ、個室に連行されると椅子に座らされた。

釈放の前に話を聞きたいとのことだ。

 

「まず、名前は」

 

「礼二…早乙女礼二だ」

 

「サオトメレイジ?聞いたことない名前だな…出身は?」

 

出身だと…?ファンタジー丸出しのお前らにどう出身地を答えろと言うんだよ…ここは定番の答えを言っておこ。

 

「はるか東にある国だ。俺は異国の文化に触れたくてここに来たんだ」

 

こう言っておけばこの世界に来た理由も言える。奴らが納得するかはともかく、俺は別に嘘をついているわけじゃない。

この世界に故郷があるわけじゃないが…。

 

「なるほど、差し詰め旅の途中でここに迷い込んだというところかな」

 

「そうだよ…飲まず食わずで歩き続けて意識が朦朧の中、ここまで来たんだ…もういいか?俺は別にアンタにかかわる気もないし、何かしでかすわけじゃねえんだ…のんびり旅をして、いい所を見つけて腰を落ち着かせたいんだ」

 

このラウルとかいう男、洞察力は優れているらしい。少し的が外れているが、大体言ってることは合ってる。だから便乗して言い訳作っとこ。

 

「もういいかな…俺も旅の続きをしたいんだ」

 

座っている椅子から立ち上がった瞬間、俺の左右にいる大男と少女は瞬時に俺の元に詰め入り、俺の首元に剣を置いた。

…どうやら一筋縄にはいかねえってことだな。

 

「…座れ」

 

大男は口に出した言葉は重く身にのしかかる程の重圧を感じた。

 

「待て、アラン、セシルも」

 

ラウルが二人に静止の言葉をかけるが二人は剣を納めない。

すると銀髪の少女が口を開いた。

 

「私は反対です。このような怪しい男をみすみす見逃すのは危険すぎます。帝国軍の偵察兵という可能性も捨てきれません。私の考えはアラン兄さまと同じはずです」

 

えっ?兄妹なのこの二人!?この大男とこの可憐な少女が!?嘘だろォ!?

だってどう考えても似てねえよ!?マジで兄妹なんこの二人!?

 

「それに、この近くでは魔獣だって出てくる危険地帯。それが武器の一つも持っていないこんなひ弱そうな男が旅をしている時点で怪しいです!」

 

あんのクソ女神ぃぃぃぃぃ!!!!なんつう場所に転生させてんだくそったれぇぇぇ!!!!

これじゃあ言い訳出来ねえよ!確かにこんなところに旅人がいる時点でおかしいわ!疑問にもなるわ!!

 

「ふむ…確かにおかしい…だがセシル彼は異国の人、このあたりの地理に詳しくないのも当たり前だと思うが」

 

ナイスラウル!

 

「ああ、そもそも俺は武器を扱ったことねえし、ここには初めて来たんだ。この辺の魔獣のことなんて知るわけねえだろ。そもそも俺の国では魔獣なんてもんは見たことねえ平和な国だったんだ」

 

ラウルの言葉で上手く誤魔化す言葉を出すことが出来た!信じてくれるかどうかわからんが…。

 

「ですが…」

 

「いいから武器を仕舞えセシル、アラン」

 

二人は苦い顔をしながら俺を見ている。一歩の俺は汗をかかないようにするのに精いっぱいだ。

イヤだわ~この娘ったらそんな怖い顔してぇ~美人の顔が台無しよ♪だからやめてくださいそろそろメンタルが死ぬ。

 

「…わかりました…ですが、私は彼を信用しているわけではありません!」

 

首筋に当てられた剣を鞘に納めた二人。

表情に出さず心の中で安堵した俺はとりあえずここで下手な真似をすると体から首がおさらばすることになることを悟り、椅子に座りなおすことにした。アランは持っている小さな袋から何かを取り出し、口に咥えた。タバコだ。

俺はアランを見ているとアランもそれに気づき、タバコを入れている小さな箱を見せる。

 

「…いるか?」

 

「…ああ、スマンが一本くれ」

 

俺はアランから渡されたタバコを咥えるとすぐにアランは人差し指を上向きに出す。

 

「…?」

 

何をするのかわからない俺だったが、すぐにその意味が分かった。ボシュッという音と共に淡い赤のようなオレンジのような色をした小さな火を指から出したのだ。

これは…手品じゃあねえよな…となると、異世界特融に魔法ってやつなのか?

口に咥えているタバコをその火に近づけてタバコに火をつけた。

 

「助かるよ」

 

同じように自分のタバコに火をつけるアラン。俺は口に咥えているタバコを口いっぱいに吸い込み肺にタバコの煙を送り込み、そして吐き出し白く濁った煙を吐き出した。

俺はラウルに耳打ちするような小さな声で囁く。

 

「なあ、彼って実は良い奴?」

 

「はは…彼はここにいる誰よりも優しい人物だよ。ちょっと無口なんで誤解を招いてるだけさ」

 

「そういうものか」

 

灰を地面に落とし再び口にタバコを咥える。

 

「話を戻すが、俺は何一つ情報を持っていない。この国の現状とか…アンタらが何者なのか、ここがどこなのかも何一つわからねえのが現状だ。そうだな…アンタらに提供できる情報はただ一つ。俺は味方でもなければ敵でもない。何処かの国の諜報員でもない。俺はただ、平穏な街でのんびり暮らしたいだけだ」

 

口に含んだ煙を口から吐き出しながら俺はラウルに正面を向き全てを言葉に出した。

そう、俺はなんの力も知識も持っていないただの一般人だ。こんなところで時間を無駄にする方が嫌だ。

 

ラウルは俺の瞳を見つけ黙り込む。

 

さあ、どう出るよ…

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「本当にすまなかった」

 

洞窟の出口でラウルとアランとセシルが俺の前に立つ。俺はいつも着ている緑色のジャケットを返してもらいそれを黒のスウェットの上に羽織り、カバンを持って、片手には馬を繋いだ手綱を持っている。

因みにカバンの中には食料と水がたんまりある。どうやらラウルが今回俺を捕まえたことにより少し負い目に感じたのか、食料と移動用の馬を用意してくれた。こちらとしてはうれしい限りだ。これで街までそんなに時間もかからないと思うし、街に付いたら馬を売って金にすることも可能だ。

 

「いいよ。そっちも大変らしいし…またどこかで会ったら声かけてくれよ」

 

俺はそんなことを笑顔で口にする。経緯はどうあれここの人たちは良い奴ららしい。食料も分けてくれた上に馬もくれたんだ。過ぎたことは水に流そうと思う。

だが、その中で不満を隠せていない人間もいる。セシルだ。セシルは俺の顔をじっと終始睨んでいる。アランは…口数少ないだけあり無表情だからわかんねえわ。

 

「ああ、それまで達者で」

 

「おう、そっちこそ」

 

俺は手をそっとラウルに向けて差し出した。するとラウルは不思議な顔をしている。

何だ?握手はこっちの世界ではやらないのか?

 

「俺の国では信頼の印としてこうやって互いの手を握るんだ。握手っていうんだ」

 

そこまで話すとラウルはプッと吹きだす。

 

「あははっ」

 

「?」

 

「キミは変わってるな。牢屋送りにした人間を信頼だと!」

 

「経緯はどうあれアンタらだって守るものの為にここに居るんだろ?それが何か知らんが、お前の目を見る限り大切なことなんだ。だから恨んだりしない。逆の立場なら俺も同じことしてると思うしな」

 

「…やっぱり君は変わってるな」

 

そう口にしラウルは手を伸ばし、俺の手を取った。

 

しばらく握手を交わし、俺はラウルの手を放し、馬に跨り、馬を歩かせる。

さあ、ここからが俺の新生活の始まりか…とりあえず…町探しからか?

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数時間後

 

ラウルたちの拠点から離れ夜になり大きな岩の影で灯りを隠すように焚火を起こして一日の疲れを癒すために食事を取りながら一冊の本を手にしていた。文字はこの世界のものらしいが、あの女神のおかげで読めるようになっているらしい。見たことのない文字なのにかかわらずスラスラと文字を読んでいく。

本の内容はこの世界の歴史書のようなもの。牢屋に閉じ込められている時に牢の番に頼み本を借りた。まあ、一言でいえばカリパクした。

 

この帝国は建国500年という歴史を持った国であり、領地の規模もこの大陸の二分の一を納めている大国だ。そしてつい5年前までこの帝国はある国と戦っていた。それはナルクラ共和国という国でその戦いは20年も続いていた。ナルクラ共和国は破竹の勢いで帝国に進行し勝利を収めていったが、帝国にある天才軍師により戦況は一変。ナルクラ共和国の勢いを止めて退却させた。これを歴史的に『帝共戦争』と言われている。帝国はその勢いでナルクラ共和国に侵攻し勝利を重ねていくが、突如ナルクラ共和国最後の砦の攻防戦最中に帝国軍は撤退。

理由は帝国皇帝の死去が原因。突然の帝国皇帝に死により帝国はその勢いを失い、天才軍師も姿を消し消息を絶った。

 

そして、帝国は徐々に変わり始めるらしい。現帝国皇帝の統制が始まり5年。それまでの帝国は非道と言われる行為を行っている。

国民の税金向上。徴兵制度を設け18歳以上の若者は強制的に徴兵されていき戦場に送り込まれる。今でも他国と戦争を行っている帝国に強制徴兵された若者はロクに訓練を受けずに戦場に駆り出され生存率は2割もないと言われているほどだ。さらに徴兵を拒んだ若者の家族全員を見せしめで処刑ということもあるらしい。

簡単に言ってしまおう。今やただの独裁国家というところだ。

国に背く反乱分子はそれにかかわった者まで大粛清。さらに粛清した者たちの関係者は家族はもちろん恋人の家族までもが粛清の標的にされてしまうというありさまだ。

 

俺が不思議に思っていること…それはその状態でも確実に領地を広がせていることだった。確かに帝都自体は大きな大国だ。財力、国力、武力どれをとっても他の国の足元にも及ばないのは確か。だが、この強制徴兵により国力というのは落ちていく。国は民あっての国だ。国力を失うということはそれは国の衰退を意味する。だが、この帝国は国力を失うどころか着々ではあるが領土を増やし勢力を伸ばしている。

 

どういうことなんだ?

 

「まあ、どれだけ俺が頭をひねったところでどうなるわけじゃあねえか…」

 

考えを切り替えるために手に持っている本を閉じてパンをかじる。

 

結構うめえじゃん…。

 

パンを頬張っている中俺は馬の方を見てみる。貰った馬はおとなしく雑草を食べている。だが、突然馬の顔が森の奥を見始めた。馬は視線を逸らすことなくある一点を見続けている。それに気づいた俺はすぐに持っていたパンを離し、簡易的に作った弓を手にして矢を構える。

 

「っ…」

 

魔獣か!?セシルはこの辺は魔獣が出ると言っていたことを思い出した。こんなところで魔獣と遭遇なんて…今日はクソな女神に勝手に殺されたり、牢屋にぶち込まれたり、魔獣に遭遇したり…厄日だぜ!

暗闇の中草むらからカサカサと小さな音が鳴る。弓の弦を引き絞り、いつでも打てる準備をして息を大きく吸う。

 

「すぅぅぅぅぅ……」

 

姿を見せた瞬間眉間をぶち抜いてやる…掛かってきやがれ…!

 

草むらがガサガサと音を大きくし、激しく揺れる。

現れる。息を止めて弦を持っている手に力を入れる。

 

「……ぁ…ぁ…」

 

だが、暗闇から現れたのは魔獣じゃなかった。灯りで照らされ姿を見せたのは小さな女の子だった。

小さな女の子。年齢は十代前半くらいの子供。それを見て俺の緊張の糸は切れ、息を吐いた。

 

「——————はぁぁぁぁ~」

 

弦を持っている手の力を緩めて、少女に近づく。

 

服は何やら煤やらでボロボロに汚れているが、金色の長い髪の毛は綺麗だ。後ろで束ね前髪が伸びているのかそれとも汚れてバサバサになっているのかパッと見ても片目しか覗いていない。しかし、大きな碧眼の瞳はまるで宝石の様にキラキラ光っているように見え幻想的にも感じた。見ているだけでも吸い込まれそうなその瞳を俺はジッと見ている。少女は怯えているのか、プルプルと小刻みに震えている。

 

「…安心しろ。取って食っちゃしねえさ」

 

弓を下げて少女に敵対意思がないことを伝え、再び焚火の前に座る。

これで俺は油断した状態だ。手を出さないという意図も気づいてくれ…。

 

少女は目元に涙を小さく浮かべた状態だが、震えが止まったようだ。俺を不思議そうな目で見ている。

 

ぐぅぅ~…

 

小さくかわいらしい音が静かな森の中で響く。俺はカバンから新しいパンを取り出し、少女に差し出す。

 

「ホラ…腹減ったんだろ?食っとけ」

 

「…ぅ…」

 

やはり警戒されているのか…それとも毒があると思われているのか?

 

「あぐっ…」

 

俺は小さくそのパンを口に含んでクシャクシャと戸杓させて飲み込む。

 

「ほら、これで毒が無いってわかっただろう?」

 

「…う!」

 

それを見てすぐに手に持っているパンをふんだくるように手に取りがむしゃらに食べ始める少女。恐らく相当腹を空かしていたんだろうな。ならもう一つ食べるであろうと俺は新しいパンを少女の前に置いて、自分の食べている途中のパンを手に取り食べる。

こちらがゆっくり食べていたからなのか、少女の手にあったパンはすぐに無くなり、近くに置いた新しいパンを手に取り食べ始めた。

長く食べていなかったのか…それにあの煤汚れがついているところから考えるに、村にいたが盗賊辺りに襲撃を受けた…そして村は放火されてこの子は一人生き残った…と推測するのが自然なんだろうな…。

 

「…ぁ」

 

考え事をしている最中に少女は二個目のパンを平らげていた。

早ッ

そしてこちらに訴えかけるように大きな瞳をこちらに向ける。

 

「…食うか?」

 

俺の食べていたパンを少女に差し出すと少女はキラキラと瞳を輝かせて再びパンを手に取りがむしゃらに食べ始める。

 

「んぐぅ!?」

 

いきなり少女が喉を抑えながら顔を青ざめ始めたぞ?喉に詰まらせたのか…?

 

「オイオイ、慌てるなよ…」

 

トントンと軽く背中を叩き、水を差しだす。

 

やれやれ…世話が焼ける子供だぜ…。

======================

キャラ紹介

早乙女礼二(さおとめれいじ)

年齢:21歳 職業:不明

身長:180㎝

体重:70kg

 

日本に住んでいる一般男性。突然謎の女神に殺され人生の幕を閉じてしまい異世界で二度目の生を受けるがスタート地点が盗賊の拠点でスタートされた可哀そうな転生者。意外と頭がキレる性格で現状の冷静ささえあれば分析し場を読み取るが、すぐに感情的になりやすいのが玉に瑕。喫煙者でありタバコを常備しており、アランから数個タバコをもらっている。好きな種類はメンソール。

 

======================

 

「…で、君は誰だ?」

 

俺はパンを食べ終わった少女に問いかけてみる。

少女はこちらを見てゆっくりと口を開く。

 

「…リディ…ア」

 

「リディアか…ここの近くに住んでるのか?」

 

リディアと名乗った少女はゆっくりと首を横に振った。

遠くから来たのか…?こんな小さな子供が…?

 

「そうか…お父さんとお母さんは?」

 

「…いない…」

 

声色が悲しそうな声色に変わった。

 

「それは、村から遠いからって意味か?」

 

「…違うの…」

 

……聞きたかねえが…聞かねえと情報収集ができない…酷だが答えてもらおう。俺が思っていることが違うことを願うばかりだ…。

 

「村に、ご両親はいるのか?」

 

「いないの…村も、お家も…無くなっちゃった…おとう…さ…んも……おか…さん…も…」

 

「っ…」

 

予想が当たったか…チクショウ…胸糞悪いぜ…。

涙を流し、少女に掛ける声が見当たらない…慰めるための言葉が見つからない…。

 

「…そうか……わかった」

 

空を見ると明るくなりつつある。太陽が出るまであと二時間か三時間か…

 

「…リディアだったな…俺をその村まで案内してくれ…」

 

せめてこの子の両親の墓ぐらいは作ってやろう…それぐらいしか、俺には何もしてやれない…。

リディアは小さく頷いた。この子には苦だろうが、村の近くまで行ったら少し離れたところで待機してもらおう。この子に両親の遺体を見せるのも気が引けるしな。

俺は弓と矢筒を肩にかけて馬に荷物を乗せてリディアに手を伸ばす。

 

「ほら、行くぞ」

 

「…う…ん」

 

小さな手が俺の手を取り、俺もしっかりやさしく握り返す。手の平に伝わる小さな温かみを感じながら俺はリディアを立たせて脇の下を持って身体を持ち上げる。

 

「(軽い…)」

 

思わず声に出しそうになったが何とか言葉を飲み込んだ。女の子なんだいくら軽くても体重の話はNGだよな…。

持ち上げたリディアを馬に跨らせ、俺が後ろになるように座る。俺はリディアの身体を手で落ちないように支えながら馬の手綱を手に取った。

 

「はぁ!」

 

パチン!と手綱で叩かれた馬は走り出す。

森の裂け目から太陽の光がのぞき込んでいる。

 

俺は変な女神に殺され異世界に飛ばされ、住む場所のない少女を保護して一日を終え、不安や悲しみを抱えた状態で二日目を送ることになった。

 

 


いかがだったでしょうか。プロローグで8000字ほど書きました!


拙い文章、意味不明な口実等があると思いますが生暖かく見守って頂いたら幸いです!


次回も近日投稿いたしますのでよろしくお願いします!

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