序章
ひとでなし≒かみさま その正式な続編です。
ダブルソウルを経ての物語。
そしてさらにその先へと続く物語でもあります。
ここに、ある神話が存在している。
2千年も昔の話、日本はいくつかの小国に分かれていた。その中の1つの国に、2人の祭司と1人の巫女がいた。その2人の祭司は日本の中でも最強最高の霊能力者として有名であり、他国や大陸からも注目されているほどの逸材だった。アマツとカグラといえば知らぬ者がいないとされるほどの2人。特にアマツは霊を滅ぼす術式を編み出し、神事のみならず政治にもその手腕を発揮するほどだった。そんなアマツがある日、巨大な狐の怪物と戦うことになる。霊を滅する十七の術式を駆使しても足りず、カグラと巫女であるミコトの手助けを受けるものの傷ばかりが増えていく。死を意識する中、己の全ての力を注ぎ込んだその一撃は時空に穴を開け、そこから溢れ出る高次元波動存在が現界した。この高次元の存在の力を駆り、アマツは狐の怪物を滅ぼすがその穴の向こうに放り出されてしまう。そこでアマツは高次元の存在に接触し、生還。その際に高次元波動の一部を取り込み、光り輝く4枚の翼を得た。それこそがアマツの究極の力、光天翼、そして太陽剣となったのだった。だが、この次元において光天翼はエネルギー消費の激しい代物であり、アマツはこれを制御するために自らの生命エネルギーを制御回路にして扱うことにした。故に、光天翼と太陽剣は諸刃の剣になったのだった。
これぞ裏出雲に伝わるアマツの伝承、その一説である光天翼の章である。
それから数百年が経った。
アマツの家系である神地王家の宗主は、アマツの死後、太陽剣を模した霊剣である魔封剣を使い、ある実験を行った。それは名のある霊能力者13名を集め、魔封剣に霊圧を込めた儀式である。目的は高次元波動存在との再度の接触だ。名門の地位が落ちかけている神地王家を守るためにはどうしても光天翼のようなものが必要だったからだ。神地王家宗主は日本を守るという名目で波動存在と接触し、この力を集った霊能者各々に分けることで永久の平和を得ようというのがその考えだ。13人の霊能者は日本の中でも高い能力者を選定し、あらゆる家系の優れた者を寄り集めていた。そして実験は成功し、高次元への穴が開く。13人の能力者はその波動を一点に集中させ、手のひら大の玉にすることに成功したのだった。高次元の波動の塊であるその玉を霊玉と呼び、その力は神すら超えるとされた。だが、神地王家の宗主はこの玉に魅入られ、独り占めを画策する。実験のせいで弱った13人の能力者全てを殺し、この実験に関わった者、知る者を全てを抹殺した。そして霊玉は裏出雲の奥に洞窟を掘り、天井に逆さまの鳥居を設けてその真下に安置したのだった。霊玉は時々使用されたが、並みの霊能者に扱える代物ではない。霊玉の存在は神地王家の血筋にだけに密かに語り継がれる程度になった。
アマツの伝承を陽とするのならば、この霊玉の伝承は陰である。
霊玉を独占せんがためにした神地王家の行いは許されることではない。
だからこそ恐れるのだ。
いつかその罪と罰を受ける時を。
そして予言されたその日は近い。
くしくも霊玉が予言したその日は、もうすぐそこまで迫っているのだから。