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それから約三週間の手記

 異世界に迷い込んで二日目。天候は晴天。体調に異常はなし。

 その日、俺は朝起きて、柔軟を念入りにやって、筋トレをやった。午前中はひたすら体術を覚えようと、俺は記憶の中にある動作を思い出しながら、飽きるまで何度も繰り返した。出来なかったら死ぬと言う、絶対の現実を頭に留めて。午後は棒術にひたすら取り組んだ。どう腕を運べば、棒はスムーズに回転させれるか、どうすれば、相手を惑わせ、高い威力の技を完成できるかを意識した。その日は特に何も無く終わった。

 三日目。天候は昨日と変わらない。筋肉痛であちこち体が痛む。身体の汚れも気になってきた。午前中は柔軟と筋トレ、体術に固め、その日の午後は突きの練習をひたすら行った。途中、応用として前後左右に突きを繋げたりも練習し、周囲に対応できる術を形ながらもやった。少し探索を行い、水場を探した。慎重に歩き回り、遂に水場を発見した。浅い川だった。俺は嬉しくなり、バッグを放り投げ、ブレザーを脱いで、後は脱がずに川に飛び込んだ。すごく寒かった……。川は俺の脚までの高さだった。陸に上がり、全裸になって服を絞った。序に、火打石になりそうな石を探し、枯れ木や草を集め、火起こしを試みた。何度か石を変えたりしてたら成功。火の勢いを強くし、俺はまた全裸になって服を洗った。そして絞って、火の側で突きの練習をして身体を温めると同時に、体温で服を乾かす。乾いたら火を消して、拠点に戻った。これから毎日沐浴しよう。

 四日目。天候は変わらないが、少し雲が多くなってきたような気がする。身体はやはり痛い。午前の体術トレーニングを行い、午後はひたすらスローランスを練習した。途中投げるのも飽きたので、蹴って飛ばすこともトレーニングに追加し、両手で二本持って投げたり、投げた後に足元に置いたスローランスを蹴る、若しくは逆パターンもやった。

 五日目。若干曇天の気候。身体は相変わらず痛むが、慣れて来た。午前の体術トレーニングを行い、昼に林檎を食べたら、残りのストックが心許ないので、明日に充填しようと思う。その日は体を休める為、午後には一切稽古をせず、瞑想や座禅を行った。僅かに何かを感じたりしたが、一瞬だった。

 六日目。天候は遂に曇天。身体は痛くなくなった。流石に林檎ばかりの生活に飽きてきた。俺がここを動かないせいか、動物達の遭遇率が全く無い。と言うか、ゴブリン以外に生物を見ては無い。それでも、生きるための糧に林檎を取りに行く。

 そして、遂にゴブリンと遭遇した。槍のゴブリンだ。

 俺はコミュニケーションを測ろうとしたが、どうやらただの低能で、こちらを獲物としか認識していない様だ♪

 俺はサブの木槍を短く持って、ゴブリンに近づく。すると、ゴブリンは奇声を発しながら走ってきた。

 俺は接近を止め、ゴブリンが攻撃してくるのを待った。ゴブリンが脇を締め、突く体制に入った時、俺はサブウェポンをゴブリンに投げた。それに怯み、止まった瞬間、俺はゴブリンに急接近し、ゴブリンの槍を引っ張って、奴は体制が崩れ転倒した。

 俺はそのゴブリンの首を思いっきり踏み抜いた。何かが曲がる感覚がして、ゴブリンは絶命した。

 そして、俺は槍を手に入れた。普通の鉄の槍。ズッシリと金属の重みがあり、まだ新しいように見える。リーチは俺の身長より少し長いぐらいだ。全部鉄で出来ているようで、鈍色の光沢を放っている。真っ直ぐな刃で、両刃。

 あれ? でも、ただの槍だよね? にしてはなんか小奇麗……まあ良いや。林檎を補給して帰ろう。序に、ゴブリンは林檎の木の肥料にしよう。

 七日目。晴天。体に異常は見られない。

 いつも通り、朝の体術トレーニングを行い。昨日の戦利品をよく見た。よく見ないと分からなかったが、槍の持ち手には、何か文字が彫られてある。後は何の変哲もない鉄の槍。

 扱い慣れる為に、この槍で棒術の稽古をした。

 二週間目。体術が上達して来た。

 が、熊に遭遇した。ツキノワグマの様で、真っ黒な俺よりデカい。襲ってくる気満々だったので、スローランスで頭を狙い投擲し、怯ませ隙きを作り、メインだった木槍で目を貫いてグリグリした。

 怖かった。だが蛋白質を手に入れた。久しぶりの肉だ。急いで毛皮を剥いで解体し、食道と腸を慎重に取り除き、解体した肉を葉っぱで包んで持ち帰った。グロアニメとか見ていたせいか、気持ち悪かったが吐かずに済んだ。解体に使ったのは槍。

 気になったので、胃や腸の中身を覗いたんだが、何も入っていなかった。

 熊のみならず、肉食動物は臆病で、逆に草食動物が凶暴だ。余程空腹だったせいで、止む得ず、俺を襲ったんだろう。

 毛皮を洗って乾かし、頭蓋骨入りのフードコートモドキができた。やっと暖かいものが手に入った。だが、着るにはブカブカだろう……。

 肉は何往復もして運んだ。

 調理法は、すり潰した林檎を肉にまぶして焼いて食った。味としては、肉にレモン汁をかけてそのまま焼いたのに近いかな?

 残りの肉は、燻製にした。俄の知識だが、塩や香辛料がない代わりに、薄く小さく切って、何度も焼きめが付かないように乾かした。

 スモーカーは木を掘って、穴の下に火を焚き、出来るだけ多くの肉を煙で密閉しながら燻した。

 余った肉はどうしようもないので、拠点から離れ適当に遠くへ投げた。

 二週間目の二日目。どうやらこの槍は頑丈で、錆びないらしい。

 二週間目の三日目、なんか身体がおかしい。食中毒じゃないと良いんだが……。

 二週間目の四日目。時間が経つに連れ、痛みが全身を貪り始めた。結局その日は体術トレーニングがままならないまま、瞑想や黙想にした。

 二週間目の五日目。苦しい。助けてくれ。体中が引き裂かれるように痛い。頭はガンガンする。

 二週間目の六日目。ピタリとあの激痛が止んだ。ちょっと怖くなった。何も無いといいんだが。

 邪魔だと思える目の前の黒髪が、更に邪魔になった気がした。

 二週間目の七日目。どうやら俺は化け物になったらしい。

 見て呉は変わらない。ただ、もともと筋肉が現れやすい体質だが、明らかにトレーニング以上の締まった筋肉だ。

 思考も、前よりかは冴えた気がする。今までの、休んだ分を取り戻そうとしたら、不思議と疲れにくい。

 スローランス投擲したら、木槍が木を貫通した。

 後ろ髪が少し暖かくなるように感じる。

 三週間目。ゴブリンの集団に襲われた。

 拠点から少し離れると、何かの気配を感じた。

 何となく危ないと思って、バックステップを踏むと、俺が居た場所に矢が突き刺さった。

 逃げようと思ったが、囲まれていた。数にして五体。

 仕方なく、拠点を知られたくないので戦う事を選んだ俺だが、驚くべき戦闘能力を発揮した。

 死角からの攻撃が解る。振り向かずに後ろを突くと、ゴブリン(剣)の腹を抉った。

 それを他のゴブリンに投げつけ、怯んだやつから殺していった。

 結果は、I killed everybodies.(訳:皆殺しだ)今回も戦利品を頂きました。ボロボロの剣、錆びたナイフ、ただの弓、刃毀れした手斧。

 ナイフと手斧は手入れすれば使えるだろうが、剣は無理。

 何れにせよ、研磨石が欲しい。

 ゴブリン達は肥料になった。

 髪が俺の体を叩くようになった……。明らかに異常な速さで髪が伸びている。

 三週間目の二日目。どうやら熊の肉が原因らしい。

 燻製を食したんだが、やたらと筋肉が付く。細い体型を維持したままだが。味は不味い。

 そう言えば、頭の中をくり抜いたら石のようなものが出た。じゃあ、ただの熊じゃなかったんだろうな。よく勝てたな……おい。

 爪とか骨とかは使えそうだから、不格好だが籠手を作った。だって、硬かったから。

 あれ? 俺の髪……少し色落ちた? ストレスか?

 三週間目の三日目。そろそろ人に遭遇してもおかしくないんだが……。一向に出会う気配がない。

 山籠りしてたら、最近、やたらと嗅覚が良くなった。軒並みに視力や聴力も上がった。気配にも敏感になったし、最近は敵意や視線もよく分かる。野生の直感(ワイルドセンス)だろうか。気配を消すことも上手くなった。

 邪魔な前髪を、切り落とした。これで少しは集中が出来る。散髪屋の切り方は、割りと参考になる。

 三週間目の四日目。ここを離れよう。

 いい加減、得物の扱いにも慣れてきた。強さも十分在る。ないのは、実践経験の数。

 そうと決めた俺は、バッグを持って、寝床を引きずって拠点から離れる事にした。

 序にありったけの林檎を採取した。

 段々と俺の髪は、色褪せながらも伸びていく。

 もう、書くのは止めよう。何だか怖くなってきた……。

 三週間目の五日目。急激にエンカウント率が高くなった。

 その日は、ゴブリン三体、熊(ヤバイ奴)一体、スライム一体、デカイ蛇六体。鳥の魔獣十体。

 取り敢えず、戦闘経験の糧にすべく、殆ど倒した。やはり、頭や胸を斬り裂くと、あの石が出てきた。

 形は色々で、色は黒ずんだ紫だったり、青だったり、そう言えば、熊から出てきたのは若干凸凹の赤の石。

 一番興味を惹いたのがスライムだ。敵意が一切なく、何故か俺になついてきた。ドラクエみたいな外見じゃないが、真白で、形が金魚鉢を逆さにした感じの。

 お目当ては、俺が倒した魔物の血肉の様だ。何となく、俺に懐いた理由が分かった。

 もしかしたら、あの石も取り込むかと思って、乗せてみたら吸収した。要らないので、最初に手に入れたやつ以外全部くれてやった。そしたらさ、嬉しそうに跳ねるんだ。

 可愛いので頭に乗せ、名前を送ってやった。『玉雪』ってね。

 三週間目の六日目。体臭や汚れとベタつきが気になってきた。

 俺がそれを不快に思っていると、突然それが無くなった。

 俺の頭の上で、何か反応があった。玉雪が魔法を使ったみたいだ。

 俺は玉雪にありがとうと言って、血塗れになって熊を二体倒して、解体して魔石を渡した。

 返り血を浴びて、ニコニコしながら魔石を渡したら、若干引いた気がした。その後に、また洗浄してもらって、熊の亡骸も食べてもらった。

 コイツって、最大飽和量何キロなんだ?

 三週間目の七日目。彷徨った果に、俺は遂に人と遭遇した。

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