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まずは情報を集めないとな

 サヴァイヴァル開始初日、俺はメモ帳を閉じて仕舞い、降りても安全かどうかを確認した。

 ……今の所何も無いらしい。俺はバッグを掛け直し、慎重に木から降りた。


「(食糧を確保しよう。山の恵を狙うのが一番だろう)」


 取り敢えずは木の実だ。キノコも魅力的だが、あいにく見分けが付かないし、万一当たったら助かりはしない。

 動物? 今は却下。得物がないし、火はまだ起こせないし、そもそも解体でしくじる恐れがある。うっかり腸を切り裂いたら食えないだろう。一応、解体の仕方はわかる。

 荷物はこのバッグしかないので、拠点を定める必要は無いだろう。恐らく、戻らなくてもいいからだ。

 俺は極力気配を殺しながら、なるべく足音が立たないように行動した。中学の時に、影の薄さは自信がある……が、高校に入ってから、それに自身が持てなくなってきた。俺は昔の自分を思い出しながら、気配を少しでも消す。

 十分ぐらい歩くと、俺は自分が最初にいた場所に来た。適当に進んだ筈が、どうやらスタート地点に戻ったらしい。

 広場に出ず、回り道をして進む事にした。


「なんで一気に朝から夜まで時間が飛んだんだろう……? 時間軸に、大幅なズレでもあったのか? まぁ、いっか」


 もしかしたら、事故の時に俺の肉体は著しく損傷し、こっちに連れてくる時に、肉体と共に六時間以上前に遡行したんだろう。

 そう言えば、大抵はチートスキルや、変な能力が付くのが異世界転生や転移の定番だ。が、俺にはそんなのは無かったイコールただの人間。調べては無いがな。それ以前に、期待しても無かった。そんな事をするだけ疲れるから。だから俺は期待しない。信じるのは、俺の生きる意思の強さ。それだけだ。


「(……ん? 林檎がある)」


 暫くすると、林檎の木を見つけた。見た目からして、山林檎だろうか? 粒が小さい。

 そう言えば、何か寒いな。山林檎は寒い山に自生していると知っているからだ。

 寒さなんて、気にしてはいなかったんだろう。考えられるような状況じゃ無かったし。このままでは風邪を引く恐れもるので、バッグからセーターを取り出して、ブレザーを一度脱いでから着て、ブレザーを着直す。


「敵影無し、周囲特に異常なし」


 本当に誰もいないかを確認して、俺は林檎に近づいた。手を伸ばし、林檎を採る。そして、齧る!


「酸っぱ!?」


 驚きの酸っぱさ。西洋りんごは『りんご』と書くが、和林檎は『林檎』と書く。

 違いは、味と育った場所。普段皆が食べているりんごは、西洋りんごだ。元々日本に林檎を食べる文化はない。観賞用だ。林檎というのが平安から鎌倉にかけて知られ、江戸時代にはがおやつに食ってたとか……。

 だから字は間違っては無い。

 しかし、食えなくは無い。酸味の後に甘味が仄かにあって、寝ぼけた頭は叩き起こされた。

 詰めれるだけ、詰めておこう。非常食だ。もしかしたら、他の動物達が食べるかも知れないので、採る事に集中するとやられるかもしれないので、バッグが少し埋るぐらいに止めた。

 こことは別の場所に拠点を置こう。まだ安全とは言い切れない。

 それから、少し歩いた所に気が周りより密集した場所についた。範囲はそこまで広くは無く、迷う心配も無いだろう。

 だが危機感は常に持とう。俺の父さんは、よく言っていた。

 ここを拠点とすべく、俺は寝床を作ることにした。まず、周りから丈夫でそれなりに長さがある木の棒を集めた。同時にそれより多い量の蔦もかき集めた。

 蔦を全て三つ編みにして、強度を上げるようにした。多く掻き集めたのはこの為だ。そして、棒を格子状にして基礎を作る。その上に、棒を縦にして結びつけ、基礎の下には横に結び付けた。

 後は木に登って、太い枝に固定すれば寝床の完成だ。作業時間はどの位経ったかは分からないが、数時間は飛んだな。気づけば昼だった。

 俺は早速、出来上がった寝床の上で休憩をし、林檎を食べている。意外とお腹が膨れる。

 暫く俺は、枝や葉を掻き分け、ボーッとしながら遠くを眺めた。

そこで俺は見てしまった……。本当に此処が異世界であることを。


「(何だ、あれは……?)」


 視界に入ったのは、俺のスタート地点。そこに、そこに在る者は、茶色い肌に頭頂部に小さな一角。腰には皮を巻き、槍、棍、剣などを持った、小さな集団。ゴブリンだ。

 こんな生き物が、地球上にいるはずも無い。ましてや、武器が簡単にそこへ出るものじゃない。


「(……あそこに留まれば、きっと死んでいただろう。一匹なら多少は勝てなくもない。だが、一対多数は無理だ)」


 そっと枝や葉を戻し、俺はこれからの事を考える。

 先ず、ゴブリンに対して対策を考えないといけない。遭遇したら戦う事になるだろう。生き残る為には、まずは得物が欲しい。と言っても、木の棒ぐらいしかない。しかし、無いよりはマシだ。そこで、余った丈夫な棒、その中で一番丈夫な物を選んだ。長さは俺の身長(約160cm)より少し低め。それの両端を、そこら辺に在る鋭い石で削って、やや鋭角に尖らせた木槍を作る。ストックも幾らか欲しいので、同じ様に残りの棒で木槍を作る。こうして出来たのが、投擲用の槍八本、サブウェポンの木槍三本、メインが一本が出来た。

 後は、技術を身に着けよう。出なきゃ話にならない。先ずはメインで、俺は動画で見た棒術を思い出しながら、稽古をした。棒術は扱いが難しいと言われ、担い手が居た場合は警戒しろと言われる。これに一番重点を置き、数時間費やした。俺が一番欲しいから。

 次に、突きの練習。そして構え。自分の得物の長さを悟られぬように構え、真っ直ぐ、何度も突きを繰り返した。大体、軌跡が同じ場所を通るまで。しかし、やはりブレてしまう。これも長期的に見るしかない。

 そして、スローランス。これは距離を変えたりして、命中精度を高める訓練をした。結果は、やはりあまりよろしいものではない。

 気付けば、もう夜になっていた。その頃には、俺の呼吸はだいぶ荒れていた。息を整え、俺は寝床に登り、横になった。これからのプランを練りながら。


「(戦う為の術を磨こう。もっと、強く在らないと)」


 それを最後に、俺は今日を閉じた。

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