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出走か?回避か?

 10月中旬。秋のGⅠ第2弾となる秋華賞も終わり、世間では菊花賞の話題で盛り上がっていた。

 そんな中、村重厩舎の陣営はライスフィールドの仕上がり具合で頭の痛い日々を送っていた。

 同馬の1週前追い切りを行った時点で、陣営の間では次のようなやりとりがあった。

「ヨシさん、ライスフィールドの調教タイム、どうでした?」

「だめだな。この時計では秋天には出すわけにはいかない。」

「そうですか。僕も手応えがいまいちでしたから、そう言われるかなとは思っていました。」

「とにかくなかなか仕上がらんな。かといって脚のことを考えると、強く追うこともできんし。」

「どうしましょう、ヨシさん。秋天は回避してジャパンカップにしますか?」

「それは今決めることではない。もしかしたら1週間で変わるかもしれんし、ギリギリまで見極めることにする。」

「そうですか…。僕は早いうちに決断をした方がいいと考えていますし、正直ジャパンカップでいいんじゃないかと思うんですが…。」

 鴨宮君はなかなか決断を下そうとしない善郎に対し、もどかしさを抱えている状況だった。


 善郎はその後、道脇君と紅君を呼んで、これからのことについて話し合うことにした。

「ミチ、トッキー。ライスフィールドは果たして秋天に出すべきかどうか、君達はどう考えている?」

「僕は回避を考えています。秋天やジャパンカップでは強力なライバルが続々と出走しますから。とにかくGⅠを取るならマイルCSがいいと思います。」

「僕はまだ秋天については半々です。個人的にはヨシさんの意見を尊重したいですが、秋天回避の場合は距離や輸送を考えてジャパンカップにしたいと思います。」

 道脇君と紅君の2人には考え方の違いもあり、意見はなかなか一致しなかった。

「そうか…。難しいところだな…。シンは秋天回避の方向で考えているし…。」

 善郎は最後まで出走に向けた道を模索したい心境だけに、ますます頭を悩ませる結果になった。

(ミチ、シン、トッキーの意見に従えば、それを理由に回避を選択することはできる。だが、仮にそうしても後のことが心配だな。それぞれ出すレースのことで意見が分かれているし…。)

 善郎はその日のうちに結論を出すことができず、結局みんなの前で

「みんな、回避と言うのはいつでもできる。だが、簡単に回避とも言いたくはないと思っている。とにかく僕としてはあきらめずに出走に向けて努力したいと思っているのだが、どうだろうか。」

 と言うことにした。

「分かりました。では、秋天に向けて頑張ることにします。」

 道脇君は半ば渋々ながらも善郎の意見に従うことにした。

 それを聞いて鴨宮君と紅君も納得し、秋天に立ち向かっていくことにした。


 1週間後。世間では菊花賞も終わり、主に古馬の牡馬が本気で激突することになる天皇賞(秋)の話題で盛り上がるようになってきた。

 そんな中、関東のトレセンではライスフィールドの最終追い切りが行われた。

 その様子はビデオカメラで撮影されており、調教タイムもしっかりと計測されていた。

 だが、調教は他の陣営から避けるように半ば非公開の形で行われ、善郎は取材の人達にインタビューを受けても、あまり話そうとはしなかった。

 そのため、周りの人達からは

「非協力的だなあ、ここは。」

「何か隠し事でもあるんだろうか?」

 と言われてしまった。

 追い切りを終えた後、道脇君、鴨宮君、紅君はすぐにミーティングルームに集まった。

 それから5分後、インタビューを終えた善郎は一足遅れてやってきた。

「ヨシさん。早速ですがどういう結論を出しますか?」

「僕達は最終的にヨシさんの意見に従います。」

「どちらの結論になっても僕達は構わないです。」

 紅君、道脇君、鴨宮君は善郎に最終的な答を求めた。

 善郎は直前までどうしようか考えていたが、ついに結論を出すことにした。

「結論から言うと、出すことにする。今回の調教タイムではゴーサインを出せるか出せないかのボーダーライン上だが、レース当日になれば今日より調子が上向いてくるだろうと考えた。だから勝負に打って出すことにする。」

 そう言い切った彼の心にはもはや迷いはなかった。

「分かりました。では秋天、頑張ってきます!」

 善郎の決断を聞いた鴨宮君は力強い声でそう言い切り、天皇賞(秋)に向けて気合を入れた。


 しかしそれからしばらくして、厩舎には申し訳なさそうな表情の鴨宮君の姿があった。

「ヨシさん、すみません。抽選の結果、8枠17番になってしまいました。」

「そうか…、よりによって外枠になったか…。」

「はい。先行策を取るためにはなるべく内枠に入りたかったんですが…。」

「とにかくもう回避もできんし、決まったことは仕方がない。これから作戦を練り直すことにしよう。」

「分かりました…。」

 2人は動揺を抱えながらも、色々作戦を考えることにした。

 現時点でアキがいないため、善郎自身、自分の考えていることが正しいのかどうかは分からなかった。

 仮にこのレースで作戦が失敗してもまだ有馬記念が残っているが、そんなことはもはや彼らの眼中にはなかった。


 その後発表された枠番、馬番さらに前売り段階での人気は次のようになった。


 クリスタルロード 1枠2番 10番人気

 パースピレーション 2枠3番 2番人気

 グリーンレジェンド 3枠5番 4番人気

 トランクミラクル 3枠6番 5番人気

 ホタルブクロ 4枠8番 6番人気

 フォークテイオー 6枠11番 3番人気

 ソングオブリベラ 7枠13番 1番人気

 シドニーメルボルン 7枠14番 9番人気

 トランクゼウス 7枠15番 11番人気

 ライスフィールド 8枠17番 7番人気

※トランクロケットは体調を崩したため、回避。

※シドニーメルボルンは仕上がりの遅れから当初は回避を予定していたものの、急遽出走。


上位人気馬の中で、パースピレーションとホタルブクロは、内枠側に入ることができた。

 一方、フォークテイオーやソングオブリベラはライスフィールド程ではないものの、比較的外枠側に入った。

 果たしてこれがレースにどう反映されるのだろうか?

 そしてライスフィールドの調子は当日までに上向くのか?

 前売り7番人気という低評価を覆せるのか?

 そして結果は…。


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