達成か?阻止か?
今回のシーンで、レース中のセリフは全てアナウンサーの実況となっています。
個人的にはこうしたら緊張感が出るかなと思ったため、このようにしてみました。
去年の天皇賞(秋)を勝って以降、ジャパンカップ、有馬記念を勝ち、今年に入ってから日経賞、天皇賞(春)を勝っているファントムブレインと坂江陽八騎手。
もし宝塚記念を勝てばグランドスラム達成となるだけに、阪神競馬場にはそれを見ようと、多くの人達が詰め掛けた。
一方、他の11頭の馬達と11人の騎手達は、何としても偉業を阻止しようと、あらゆる作戦を立てていた。
会場が異様なまでの盛り上がりを見せる中、いよいよ年に一度だけ演奏される宝塚記念のファンファーレが鳴り響いた。
それが終わると、各馬は続々とゲートに入っていった。
そして大外のトゥーオブアスが最後にゲートインすると、いよいよ宝塚記念の火ぶたが切られた。
『スタートしました!好スタートはライスフィールドとファントムブレイン。』
『2番のソルジャーズレストは出遅れた。その他の馬はまずまずのスタートです。』
『さあ何が行くのか?ライスフィールドか?ライスフィールドがそのまま先頭に立った。』
『2番手にはファントムブレイン。そこにトランクミラクルが並びかける。』
『会場からは大歓声がこだまします。その前を通過する12頭の馬達。先頭はライスフィールドです。』
『ここでトランクミラクルが2番手に上がり、ファントムブレインは3番手に後退。今日は珍しく先行策を取ったファントムブレイン。今度ゴール板を通過する時には果たして先頭に立っているのか?』
『後ろには4番の外国馬サージングクラウド。各馬1コーナーへと入っていく。』
『11番のホタルブクロ、パースピレーションは6番手。』
『改めてもう一度先頭から見ていきましょう。』
『先頭は3番のライスフィールド。リードは1馬身半。』
『後ろには6番のトランクミラクルとファントムブレイン。7番のファントムブレインはここです!』
『4番のサージングクラウド、外にはホタルブクロ。そして5番のパースピレーション。』
『8番のトランクロケットがいる。内には1番のストーキーパー。』
『少し間が空いて9番のシドニーメルボルン、並んで10番のトランクゼウス、復活なるか?』
『最後方から2番のソルジャーズレストと12番のトゥーオブス。』
『各馬は向こう正面を走っています。先頭は相変わらずライスフィールド。今日は逃げに打って出た鞍上の鴨宮新。』
『ファントムブレインは3番手をキープ。外から弥富騎手騎乗のホタルブクロがサージングクラウドを交わして4番手に上がっていく。』
『後ろには人気の一角、パースピレーションとトランクロケット。果たしてファントムブレインと坂江騎手を止められるのか?1000mを通過。』
『ストアーキーパー、シドニーメルボルン、トランクゼウス。ソルジャーズレストが差を詰めてきた。1頭遅れてトゥーオブアス。』
『各馬は3コーナーに入ります。徐々にペースが上がってきた。ライスフィールドが先頭。』
『ファントムブレインは3馬身後方にいる。ホタルブクロが並びかけてきた。』
『パースピレーションとトランクロケットはいつ仕掛けてくるか?』
『会場からいよいよ大歓声がこだましてきました。トランクゼウスが上がっていく。』
『ここで1頭が後退していく。11番のホタルブクロだが…、ホタルブクロ?どうしたホタルブクロ!?故障発生か!?ホタルブクロが後退していく!!』
この瞬間、場内からは大きなどよめきと悲鳴がこだました。
ホタルブクロに賭けていた人達は茫然とその場に立ち尽くし、まるでレースのことを忘れてしまったかのように、同馬を見つめていた。
そんな中でもレースは続いていき、先頭のライスフィールドが最後の直線に姿を現した。
大勢の人達はホタルブクロの競走中止にショックを受けながらも、精一杯の歓声を送った。
『先頭はライスフィールド。このまま逃げ切れるか?後ろにはトランクミラクル。』
『ファントムブレイン2番手に上がるか?後ろからはパースピレーションとトランクロケットがサージングクラウドとともにやってきた。』
『外からトランクゼウス、内からストアーキーパー。』
『ライスフィールド、先頭!このまま逃げ切れるか?しかしファントムブレインやってきた!』
『残り200m!ファントムブレインここで先頭に立った!』
『サージングクラウド、パースピレーション!トランクロケットもやってきた!さあ、ファントムブレインを交わせるか!?』
『ストアーキーパーは伸びが苦しい!トランクゼウス届くか!?シドニーメルボルンは馬群に沈んだ!』
『残り100m!先頭はファントムブレイン!トランクロケットが差を詰める!サージングクラウド、パースピレーション!』
『しかし先頭はファントムブレイン!グランドスラムか?グランドスラム達成か!?』
『トランクロケット来た!だが届かないか!?ファントムブレインだ!!ファントムブレイーーーン!!』
『GⅠ5連勝!グランドスラム達成!その偉業を達成した馬の名はファントムブレイン!鞍上は坂江陽八!GⅠ5レースで延べ67頭の挑戦を全て退けましたーーーっ!!』
アナウンサーがグランドスラムの達成を実況し、場内が異様なまでの盛り上がりを見せる中、坂江騎手はガッツポーズ一つすらすることなく、冷静に馬をクールダウンさせていた。
会場からは「ブレイン!ブレイン!ブレイン!」というコールがどこからともなく沸き起こり、スタンド前に姿を現した同馬を祝福していた。
坂江騎手はそれを聞いても反応することはなく、まっすぐに関係者エリアを目指していた。
それから数分後、宝塚記念は次のように確定した。
1着 ファントムブレイン
2着 トランクロケット(1馬身1/2)
3着 パースピレーション
4着 サージングクラウド
5着 トランクゼウス
6着 ソルジャーズレスト
7着 ストアーキーパー
8着 トランクミラクル
9着 ライスフィールド
10着 シドニーメルボルン
11着 トゥーオブアス
競走中止 ホタルブクロ
(※3着以降の着差は省略させていただきます。あしからず。)
ただでさえ8番人気の低評価だったライスフィールドは最後の直線で大きく失速してしまい、人気よりも下の順位になってしまった。
あまりにも悔しい結果に、善郎達はかける言葉もなくなってしまった。
「関東の星と言われた馬も終わりだな。」
「その馬はもう引退した方がいいでしょう。」
会場ではこのような言葉が飛び交い、傷心の善郎達の心をさらに痛めつけた。
それでも彼らはひたすら悔しさに耐えている状況だった。
さらに関東馬は7~10着の下位に沈んでしまったことで、
「これじゃもう関東勢はだめだろうな。」
「これから関東は消しでしょうね。」
という声もこだましていた。
ちなみに最下位で完走したトゥーオブアスはただでさえ単勝255倍と飛び抜けた最低人気で、結果もシドニーメルボルンから9馬身も引き離されていた。
ライスフィールドの勝った新馬戦と函館2歳Sでは1番人気となり(結果はそれぞれ5着、3着)、ライスフィールドよりも高い評価を受けていた頃の面影は、もうどこにもなかった。
一方、ファントムブレインの快挙の陰で、ホタルブクロに乗っていた弥富さんは、競走中止という最悪の事態が起きてしまったショックのあまり、ずっと泣いている状態だった。
(私のせいで…、私のせいでこんなことに…。お願い、ホタルブクロ。生きて帰ってきて。死なないで!お願い…。)
彼女は1人で関係者エリアに戻ってきてからも泣きやむことができず、ひたすら「ごめんなさい。私のせいで…。」と言いながら関係者の人達にわびている状態だった。
もはや彼女の心には、宝塚記念で起きたグランドスラムという快挙も何も関係なかった。
ただ、自分を責めることしかできず、ずっと打ちひしがれるばかりだった。
「神に誓って君のせいじゃない。どうか泣きやんでくれ!」
「きっとホタルブクロは生きて帰ってくる!大丈夫だ!」
ホタルブクロの関係者の人達は懸命に弥富さんを励まし続けていた。
そのあまりにも痛々しい光景に配慮したのか、ファントムブレインの関係者の人達は気持ちを懸命に抑えながらグランドスラム達成を喜んでいた。
その後行われた勝利ジョッキーインタビューでは、必要以上に興奮するインタビューアーに対し、坂江騎手はホタルブクロのことも考えてほしいという配慮を示しながらも
「今回、グランドスラムを達成したことになりましたが、そのことで、今度は同一年内でグランドスラムを達成してみたいという気持ちがわいてきました。」
と、次なる目標を打ち明けた。
それはこの馬の時代はまだまだ渡さないという、彼の並々ならぬ気持ちが込められていた。
4歳6月の時点におけるライスフィールドの成績
12戦4勝
本賞金:1億200万円
総賞金:2憶1120万円
※本編でホタルブクロが競争中止という事態になりましたが、この馬はゲームの宝塚記念で本当に故障を発生したため、このような設定になりました。
その点はご了承していただけますよう、よろしくお願いします。




