僕の今まで
前まで、碌なことはなかった。
会社員の次男として産まれた。そこまでは普通だ。だが両親は厳しく、僕は小さい頃から2才離れた姉と比べられた。姉は出来のいい子だったが、俺はその逆だった。
ーあの子は出来るのに、なんでお前は出来ないんだー
そんな言葉を何十、何百と聞いたし、食事を抜きにされたこともあった。僕はそれに怯えながら生きていた。
小学、中学、高校の時は成績が悪ければ、
ーなんだこの点数はー
と罵られ、殴られ、いじめにあえば
ーお前が悪いんだろ!面倒を増やすな!ー
と言われ、頑張って大学に受かっても、
ーそれは当たり前の事だろうー
と言われた。
大学に入学しても、友達と呼べる人も出来ず、孤独な4年間を過ごした。
大学を卒業し、就職して親元を離れても、状況は前とは変わることはなかった。
上司の罵声、毎日夜遅くまで残業、同僚の陰口、それらに耐えながら必死に働いてきたが、入社してから2年後、上司から言い渡されたされたものは、解雇という言葉だった。
その言葉を言い渡されたときの僕に襲い掛かってきたものは、絶望だった。そして両親から言われた一言は、
ー二度と帰ってくるなー
二度の絶望が僕を襲った。今まで両親の為に色々なことに耐え生きてきた。だが両親の、帰ってくるなという一言で、僕の今まではさらさらと砂が風に飛ばされたように消えていった。
僕は、このまま絶望しながら生きていくんだと、その時は思っていた。
でも、今は違う。
あの時一生付き合うだろうと思っていた絶望は、自分でも驚くほどに消えていた。
あの後、小さなスーパーで働くことになった。
始めはまた、前の職場と同じような日々が始まると思っていたが、働き始めてからそれは間違いだと知った。
皆、優しい人達だった。
スーパーの店長、従業員、みんな僕を暖かく迎えてくれた。
店長や従業員からは、頑張ろうね、と優しく
声をかけてくれたり、仕事中でも「無理はしないでね。」と僕の事を気遣ってくれているし、
「いらっしゃいませ。」
「お兄さん、今日もイケメンだねぇ〜」
「いえいえ、お客さんも美人じゃないですか」
「やだぁ〜おばちゃんもうちょっと若かったら惚れてたわよ〜あはははは!」
お客さんも楽しい人たちで、仕事中でも話しかけてきて、ほんの少しだけだけど楽しい話をした。
僕は、あの時の苦しみの日々が全て悪夢で、その悪夢から目を覚まし、今の楽しい日々が現実であるかのように感じた。
そして僕は、その日々が続くのだろう、そう思っていた。