表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の強くてニューゲーム  作者: 千歳衣木
三章 たった一人の旅路
82/91

八十一話 「これから」

 「お前どうすんの?これから」


 地下牢を出て、元々領主夫婦が使っていた寝室に滞在することになったエルロッドとアキンド。宿代が浮いて嬉しそうなアキンドをよそに、ベッドが広すぎて落ち着いて寝れないと悩んでいる勇者は若干の寝不足気味です。

 そんなエルロッドが、何故かひとりでダブルベッドに寝転ぶククロマに尋ねます。

 ノーザスを取り巻く事件がどうにか収まってから三日が経っていました。


 「どうって、何よ」


 「いや、お前普通に大罪人だし。結構人とか殺してるしさ。どうすんのかなって」


 何言ってんだ、という顔で言う勇者。ゆり椅子に揺られてだらけきっていました。領主の娘はそれをぼんやりと眺め、少ししてから口を開きます。


 「…牢獄暮らしは慣れた気がするから平気じゃないかしら」


 「絶対お前は天才じゃないと俺は思うな」


 エルロッドの言葉が気に障ったのか寝返りを打ちながら頬をふくらませるククロマ。仰向けになったせいでおでこが出ています。つんつるてんです。


 「いや、だってお前、殺人事件だよ。お前死刑だよ多分知らないけど…」


 死刑ですか…と、遠い目で呟くククロマ。就寝用なのか室内用なのか、よく着ている赤いワンピースにシワが付くのも気にせず広いダブルベッドの上をゴロゴロと余す所なく転がり回っています。

 それを見たエルロッドは苦笑いを浮かべて言いました。


 「まぁお前子供だし大丈夫じゃないか?正直親を操ってクーデターを起こさせ、しかもクーデターを起こした側をも影から操るとか…到底…許されることではないけど、早とちりとかしなければ根はいいやつ…そう……だし」


 言ったあとでこれは許されないなと気付いた二人。苦虫を噛み潰したかのような顔になりました。

 もちろんエルロッドはククロマをそこまでして庇うほどの人間じゃないということはわかっていますが、単なる世間知らずの少女とわかるとどうにも処刑させる気にもならないのでした。


 「そもそも」


 どうしようかと足りない頭を振り絞って考える青年と少女に、今までにこやかに見守っていた保護者的商人が声を掛けました。


 「そもそも、ククロマ様が首謀者であることを明かさなければいいのではないですかな」


 「はっ!?それだ!?」


 そうです。よく考えてみれば本当の黒幕がククロマだと知るのはモーノとエルロッド達だけ。それ以外の民衆はすべてモーノがやったことだと思っています。

 そう考えると、地下牢に来たのがエルロッドでなければククロマによって処理され、首謀者が明かされることは無かったのでしょう。不運なことです。


 「ではモーノを処刑するってことでここはひとつ」


 「えぇ!?モーノは悪くないじゃないの!」


 「死にたいのか死にたくないのかどっちなんだテメェはよぉ!」


 関係無い民衆やどうでもいい両親は殺すけど、世話になってる執事は殺したくないし、自分も死にたくないとはどういう了見でしょうかこの娘っ子は。

 アキンドもエルロッドも嘆息せざるを得ませんでした。


 「せめてモーノにはどこかへ行ってもらわないとダメだぞ。魔族っぽい見た目は目立ちすぎる」


 エルロッドがそう言うとククロマは途端に笑顔になりました。先程までベッドでだらしなく寝ていたというのに、想像もつかないような俊敏さで起き上がるとゆり椅子でゆっくり揺られるエルロッドの真横まで飛んできました。


 「言ったわね!モーノ!解除するわよ!」


 「かしこまりました」


 どこから現れたのか、ククロマの声に呼応していつの間にか真横に立っていたモーノ。相変わらず見た目は魔族なのに波長は人間というちぐはぐな存在感を放っています。


 「モーノ…いえ、モーノ・ニッセ。あなたに掛けた魔法を今解除するわ!…これであなたは、元のノーモ・セッニよ」


 ひっどい名前だなと思ったエルロッドでしたが口には出しません。

 それよりもククロマによって何らかの操作をされたモーノ…いえ、ノーモの見た目がみるみるうちに角もなければ目も髪も普通の執事に変わっていきます。


 「見た目を変えていたのか。それに関しては全然気付かなかった」


 「これは…凄いですぞ…」


 エルロッドとアキンドが感心した様子で素直に褒めると、ククロマが得意気な顔に早変わりして無い胸を張りました。ただでさえ起伏の少ない体が、反ることで綺麗な曲線を描いてしまっています。


 「当然っ!当然よ、この私が編み出した体内で循環する魔法陣は外から見ただけじゃ絶対に気付かないわ!その人それぞれの脈に沿って循環させているしね!」


 とても得意気な顔で腹が立ったので試しにククロマの言う方法でアキンドを美少女に変化させてみたエルロッドでしたが、しっくりこないので元に戻しました。


 「…え…ちょ今普通に使った…?嘘でしょ…」


 ククロマが密かに衝撃を受ける中、エルロッドとアキンドがノーモの元へと歩いていきます。


 「ホントはノーモっていうんだな。これだけ見た目が変われば、これからもここで暮らしていけるんじゃないか?」


 「いえいえ。あのような姿を見られてしまいお恥ずかしい限りです。…叶うならばこの街で暮らしたいですが…お嬢様はここから出るおつもりですので、私もそのお供をさせていただきますよ」


 モーノじゃなくなった途端に丁寧な言葉遣いに戻るノーモに戸惑いを隠せないエルロッド。呆然としているとアキンドとノーモが何やら話し込み始めたので仕方なくククロマの隣に移動しました。


 「なぁ」


 「…え、な、なに?言っとくけどもう私の魔法は教えないわよ」


 エルロッドが瞬時に技術を盗んだのがよほど効いたのか、警戒心をあらわにするククロマ。自分の体をかき抱くようにして二歩下がりました。


 「や、いらないいらない。それより」


 「いらないってなんなの馬鹿にしてんの!?ねぇ!馬鹿にしてんのよね!?」


 困ったような笑顔でエルロッドが断ると鬼の形相で叫ぶククロマ。目は血走り額には青筋が浮かびます。


 「いやそうじゃなくて…お前もノーモさんも罪は無いって話だろ。これからどう生きるんだ?」


 エルロッドに尋ねられたククロマは待っていましたとばかりにびしっとポーズをキメて声も高らかに言い放ちます。


 「冒険者になるわ!最強の魔法使いとしてね!」


 「は?お前、ノーザスの統治はどうする気なんだよ?」


 エルロッドが真顔でそう尋ねても余裕の表情を崩さないどころかにやりと笑ってみせるククロマ。

 長い髪をかき上げると、優雅と言うべき表情で告げました。


 「考えてなかったわ」


 「ふざけんなテメェ!」

 昨日執筆するのすっかり忘れていた千歳衣木ですおはようございますこんにちはこんばんは。


 ククロマは金髪少女(ようじょではない)なので可愛いです。黒幕だからククロマとかいう安直な名前をつけたことを後悔して…まぁしてないんですけど。才能はあるのに不遇な少女っていいですよね。歪んだ性愛じゃないです。

 とりあえず明日も更新できるといいなあと思ってます。


 …評価とか入れてくださると意欲に繋がりますのでできればお願いします…。

 では今回はこのあたりで!千歳衣木でしたーっ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ