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勇者の強くてニューゲーム  作者: 千歳衣木
三章 たった一人の旅路
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七十一話 「同級生と」

 ベルナイアはコルサーム領が滅びた今、魔王領に一番近い最前線の地になっています。旧コルサーム領は人族と魔物、魔族との戦場です。

 エルロッドの同級生たる勇者育成機関の面々も補給は不可欠。ベルナイアの冒険者街で寝泊まりし、食事をとり、日々魔物を狩って過ごしていました。


 ですから、エルロッドにとってよく知った顔に遭遇するのもまた必然のことと言えたでしょう。


 「エルロッド君が逃げるわけないだろう?今にも魔王を倒して世界に平和をもたらしてくれるさ」


 「私も逃げたなんて思ってませんわ!ただ、どこにいるのか、少し心配ではないですか」


 数週間ぶりに聞いた声。その声がした方向を見ると、そこに居たのはどこか雰囲気が変わり、たくましくなったイムとフレデリカの姿でした。


 「全くもう、口を開けばエルロッド君エルロッド君と…やっぱり男色の気があるんですの?」


 ジト目でイムを睨むフレデリカ。心なしか、ただの仲間というには距離が近いように感じます。


 「フレデリカ嬢…嫉妬かい?ボクなんてフレデリカ嬢がエルロッド君の話をしても嬉しくなるだけだっていうのに」


 イムがそう言うとフレデリカが顔を赤くしてふいっとそっぽを向きました。どう見てもカップルです。ありがとうございます。


 「…声かけない方が良さそうだな」


 そう判断したエルロッドでしたが一瞬遅かったようです。


 「あれ…エル、ロッド…くん…?」


 信じられないものを見た、という表情でエルロッドを凝視するイム。何故か目には涙。

 そしてイムのセリフにバッと視線を向けてくるフレデリカ。


 「アンダーテイカーさん…何故…」


 どうやら二人共言葉を失っている様子です。エルロッドはなんか若干気まずさを感じつつも片手を挙げて挨拶しました。


 「何故…制服なんですの…?」


 フレデリカが驚いていたのはどうやら別のことのようです。エルロッドはずっこけそうになりましたが踏みとどまり、かつてのパーティの元へ歩いて行きました。


 「よ…よう、二人共」


 二人はどうやら、エルロッドのことを心配しているようでしたが、エルロッドには二人を置いて戦場から離れた負い目があります。

 もちろん二人はそれを知りませんが、何となく素直に再会を喜べないエルロッド。


 「アンダーテイカーさん、お久しぶりですの」


 「やぁ、エルロッド君。君に会える日をどれほど待ち望んだことか!」


 しかしイムもフレデリカも学生の頃と変わらない態度で笑いかけてきました。そのことに安堵したエルロッドは、ようやくイムとフレデリカを正面から見ることが出来ました。


 「ごめんごめん。魔王を倒す為にすることがあってさ」


 それを聞いて二人は全てを察しました。

 この二人含め、Aクラス以下の者は皆、魔王が倒れるまで魔物の軍勢を食い止め続けろ、という指示が出ていました。間違っても攻めに転じるな、と。

 その指示とエルロッドの言葉から、エルロッドが魔王を倒すまで戦い続けていればいいと、そう察したのです。


 「なるほど。エルロッド君に任せておけば安心だろうね」


 「むしろ、やってくれなければお仕置きですわ」


 二人がそう言うと同時に、エルロッドの勇者としての加護、望まれるもの(ディザイア)が強く反応します。

 向けられる希望が強ければ強いほど、魂の輝きが強ければ強いほど加護による強化は増していきます。


 そこまで強い信頼を向けてくれる二人に、エルロッドは喜びを感じます。そしてまた、あまり悠長にしている時間も無いと。

 とはいえ魔女たちが戻るまではエルロッドも暇な身。少しくらいいだろうと、イムたちを食事に誘おうとした途端、ベルナイアにけたたましく鐘の音が響き渡りました。


 「なんだ!?」


 焦るエルロッドに、落ち着いた様子のフレデリカ達。


 「あぁ、敵襲の合図だね。久しぶりだ」


 「一ヶ月程はありませんでしたものね」


 ただの敵襲か、と安心するエルロッドでしたが、何やらぞわりと魂が粟立つのを感じ、即座に気を引き締めます。

 魔王が直接攻めてきたのかと身構えますが、それほど近い距離ではないようです。

 不思議に思いつつエルロッドは歩き始めるのです。


 そして、ベルナイア防衛の為に街の門を出た冒険者達は未だかつてない光景に息を呑むことになりました。


 地平線を埋め尽くす魔物達に、それを率いる魔族の姿。絶望が確たる意志を持って、人族の領域に踏み込んできました。

 あけましておめでとうございます。コタツでごろごろしたり風邪を引いたりしているうちに1ヶ月ほど経過してしまったようですね。本当にすみません…。頑張ります

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