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勇者の強くてニューゲーム  作者: 千歳衣木
二章 勇者育成機関にて
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四十話 「加護」

 「それで、魔王やら勇者やら英雄やらと同じ加護だというのじゃからさぞかし強力なんじゃろう?」


 ひとまずエルロッドが魔王で確定する前にハココが助けてくれたため、先程とは打って変わって柔らかな雰囲気の中、シキが面白そうにそう言いました。

 エルロッドは嘆息し、言います。


 「まだ発動できてないだろうな、って言っただろ?そもそも俺はこの加護がどんなものかもわからないんだ」


 シキはそれに対し、知っておるわと笑いました。


 「魂の加護は希少であるし、加護の性質を一度しっかりと検査した方がよいのであるな?」


 「希少なんてものではない。通常の加護とも違う。体外の魔力ではなく体外の魂から力を受ける加護が魂の加護」


 アザトの言葉をハココが即座に否定しました。強面が少し面食らっています。

 続くかと思われたハココの言葉がなかなか出てこないため、ベルルカが続きを促しました。


 「つまり?」


 「基本体系からして別物。魂の加護専門の検査技術を使える者を探さなければならない」


 探すところからかよ、そう言って肩を落とすエルロッドの隣にひょこひょことヒスイが歩み寄ってきて肩を叩きました。


 「あたしも探すから、頑張れってばよ!」


 「マジでか。加護の力がかなり有用かもしれないし、頑張らなきゃな。……てばよ?」


 むしろ不安になったエルロッドでしたが、自分の方をじっと見ているであろうハココに気付きます。フルフェイスに開いた暗闇の中の目と目が合った気がして、先ほど気になったことを尋ねました。


 「ところでハココ、なんで魔王と勇者の加護なんて知ってたんだ?」


 前回Sクラスでふとした拍子に通常の加護を持たないことを看破され、仕方なく告白したところ即座に魔王じゃないだろうな?と斧槍を突きつけられ、当時まだギリギリSクラスに届く程度の実力だったエルロッドはガチ泣きしてしまったのを思い出しました。


 しかし今回はハココが助け舟のつもりかはわかりませんが、少なくとも疑いを晴らしてくれたため、何の違いかと尋ねずにはいられなかったのです。


 今回と前回で違う事と言えば、最下級クラスから始まったこと、そのまま最短時間でSクラスまで上がってきたこと。そしてエルロッドは知りませんが、前回と真逆でSクラス以外のほとんど全ての関わった人から魔王だと思われ、Sクラスの人からは恐らく勇者だと思われているということです。


 「それは。エルロッドくんが以前倒した魔人リリンや堕神エグザグ。彼を操っていた魔人のアニマなど魔王陣営のことがあったから。予習」


 ハココが言ったそれは、エルロッドが最下級クラスから順にあがって来なければ成すことのできなかったことです。

 魔王陣営のことを調べていると必ず勇者の情報に当たり、また逆も然り。この世界においての魔王と勇者は常に対になっていて、必ず同時期に出現するものなのでした。


 「なるほど、それで両方のことを調べていたら加護に関する文献もあった、と。で、なんでそれだけ文献、ていうかメモ?なんだ?」


 ハココの説明中に出てきた明らかに本とは違う紙片を指さしてエルロッドが言います。するとハココは首を傾げてこう言いました。


 「本に挟んであった。誰が書いたかは知らないけどかなりの魔力。劣化知らず」


 「なるほどなぁ…」


 エルロッドは納得行っていない様子でしたが、ハココは感情の薄い声に少しだけ満足気な色を乗せ、以上、と言いました。

 興味深げに聞いていたSクラスの面々でしたが、どれもこれも聞いたことのない話です。


 「勇者育成機関でも勇者と魔王の基本的な歴史くらいは学ぶべきでしょうね、これは」


 「全くじゃ。本当の勇者となる者だけに教えればいいとでも思っておったのか…」


 シキとベルルカがため息をついたその視線の先ではエルロッドとヒスイがハココを持ち上げて走り回っていました。

 急に忙しくなくなってしかも電車に乗っているのでここぞとばかりに執筆していた千歳です。どうもおはようございます。


 本日は挽回と言いますか、時間が有り余っていると言いますか、書きたいことがたまっていると言いますか、つまり、二話連続更新です。大連続です。グレートな回復薬が手に入るかも知れません。嘘です。


 まぁまだ二話目書けていないんですけど。


 とりあえずキリのいい四十話目の更新おめでとうございます千歳テコでも動かないさん!


 ありがとうございます。十話ごとに祝っていたら体が持ちませんよ。それではとりあえずこのへんで。


 テコでも動かない千歳でした。衣木でした。

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