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勇者の強くてニューゲーム  作者: 千歳衣木
二章 勇者育成機関にて
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三十話 「人外領域」

ファフニールの群れを屠り冒険者ギルドからもその力を正式に認められたエルロッド。

魔人、いえ、魔王候補であるという疑いは消えないどころか強まっていましたがそんなことは露知らず、Aクラスへと続く廊下を歩いています。


「Aクラス、か。ここの奴らはみんな冒険者にすればSランクにいてもおかしくないような奴ばっかりなんだよな」


例えば狭くて動きにくい足場で空気の薄い高所においても八十の竜の角を奪ってからたたき落とす、など。


「不死身でいくら殴っても死なず、直接手を下さずに発狂させたりとか」


「ごくごく普通の初級魔法の一撃で魔物の群れを屠ったりとかよね」


Aクラスに向かって歩くエルロッドの後ろから聞き慣れた声が。


「なんでお前らがここにいるわけ?」


返事はわかっていても聞かずにはいられないのです。何故ならBからAへの昇級はどんなに頑張ってもいつも一人ずつだったのですから。


エルロッドのわかりきった質問にイムとフレデリカが顔を見合わせて同時に言います。


「「無事、合格しました!」」


「お前らいつの間にそんな仲良くなったんだよ」


満面の笑みを浮かべるふたりに嘆息すると、エルロッドは再び前を向いてAクラスに足を向けます。


「はっ…!私を乗せましたわね!」


「いや、エルロッド君にサプライズしようって言ってきたのは君じゃないか…」


やっぱりあのふたり仲良しだよな。勇者はそう思いましたが、口に出すと面倒なので言わないことにしました。



―――――



「Bクラスから…三人…?」


教官が思わず動揺してしまうほどの異例の事態です。しかしむしろAクラスの生徒は動じていません。

だからなんだ、という態度です。自分たちの地位に圧倒的な自信を持っているようですね。


機関内においては二番目のクラスなのですけどね。


「あーはい、つーことでエルロッド・アンダーテイカーだ。まぁ一ヶ月で――」


エルロッドがいつも通りの自己紹介をして席に着き、イムとフレデリカも今回は当たり障りのない自己紹介で終わらせます。

流石にSクラスには届かないと思っているのでしょう。


全員の自己紹介が終わってもAクラスはしーんとしています。

教官が何を言おうか迷っている中、静寂を打ち破る音が。


「…っぷ」


エルロッドの後ろの方の席の誰かがこらえきれず笑い出したのです。


「あ、あはは、はははは!一ヶ月で!Sクラスに!面白いね、君!」


立ち上がるとエルロッドの方を向いて笑いながら言います。


「ここにいる誰も!Sクラスには上がれていないんだ!半年近く経っているのに!」


その声に頷く数名の生徒。


「それをたまたま運良く最底辺から上がってこれただけの庶民ごときが!追い抜けると!?ははははは!」


エルロッドはなんかめんどくさそうなやつに絡まれたなぁ、程度にしか思っていませんが、ほかのふたり、つまりイムとフレデリカは気が気ではありません。

ここは今までとは違う、人外の集うクラスなのですから。


「まぁせいぜい楽しませて見せてよ、何年かかるだろうねえ?」


「お前はそんな何年も昇級できない予定なのか?それともわざわざ俺の努力を嘲笑うためにAに残ってくれてるんだったらありがとう。ただ、残念だけど来月には俺はここにはいないんだ」


エルロッドが前を向いたままでゆっくりとそう言うと、相手は少し眉をぴくりと動かしただけで座りました。


「期待、しているよ」


その言葉を最後に、エルロッドに向けられるものは周囲の敵愾心だけになりました。

そしてそれを見たイムとフレデリカは自分たちに敵意のある視線が向けられていないことに気付きました。

そしてそれを、エルロッドがこうなるように誘導してくれたのか、なんていい人だ、そんな盛大な勘違いを起こしました。


当のエルロッドはどうせ一ヶ月でいなくなる場所だから適当でいいやなどと思っているだけなのですが。


「さ、さて、じゃあそろそろ講義を始めるぞ」


先程まで狼狽えていた教官がやっと声を上げて講義を開始しました。


そしてその講義を受けるエルロッドの後ろ姿を見つめる視線が。勇者はうまく切り抜けられるのでしょうか。



―――――



「聞きましたか?彼の話」


Sクラスの自主訓練の時間。長髪の男子、ベルルカ・レオン・ハルバードが隣にいる着物少女、シキ・ヨイヤミに話しかけました。

それを受けたシキは半ば居眠りをしていたようで、寝ぼけ眼をこすりながら答えました。


「んー、あぁ、聞いたぞ。彼奴め、古の神を使役しているとか」


「使役というよりは友達になったという雰囲気ですがね。ところでシキさん」


見た目相応にお昼寝タイムに入ったシキを見てクス、と笑うベルルカ。


「やはり始祖とはいえ、屍鬼シキは日中は寝るものなのですか?始祖だからこそ、ということもありえますが…」


その声はシキの意識に届く事はありませんでした。


「むにゃ…」


「ふふ。…さて、そろそろ彼が仲間入りする頃ですね。お待ちしておりますよ」


それぞれが自主訓練を行う中、窓からAクラスの方を見て呟くベルルカ。


Sクラスは今日も平和です。

いつもお読みいただきありがとうございます。千歳衣木です。

評価していただき…誠にありがとうございます…!!

今までは三話更新したら一件増えていた、くらいのブックマークでしたが昨日の更新のあと数件増えていたようで感謝しかありません。

とても励みになります。

感謝の言葉ばかり述べるよりよりよい物語でみなさんにお応え出来れば、と思います。


皆さんが楽しんで読めるよう、精進しよう、そう思いました。

千歳でした。

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