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とある侍女の手記



私が侍女として王宮に上がったのは15歳の春だ。





ディアグレイシスの東南にあるマポイ村



腐っても貴族っていうか、じっちゃの代でめちゃめちゃ落ちぶれちゃったせいで、普通に畑で芋とか掘ってたし。

そんな家に王宮から手紙がくるまでうちが貴族だなんて忘れてたしね!

王宮で侍女として働きませんか?

みたいな内容だったわけだけどぉ…。

別に食うには困ってない訳だしねー…。

そこそこ身分のいい女の子ならだれでも王宮で働きたいし、王宮で侍女をしてたって言うのはやっぱり箔がつくしね。

それに今の国王はあの勇者キヨテル様だし今年の倍率は高いだろうしわざわざ私が行かなくとも人は足りるわけだしぃ。

なんていうかぁ~。王都まで馬車で10日かかるくらいうちは田舎なのよねぇ…そんなことよりことしの春野菜の苗今年はすこし品種を増やそうと思う。


あの手紙が来てから2週間後、私は王都行きの馬車に乗っていた。




くそくそくそくそ…思い出しても腹立つあんチクショウ!

まさかバッドに二股かける甲斐性があるとはね!

しかも、その相手があのベルナとはね!


「いゃーん。髪にむしがぁん!」

「「「俺が取ってあげる」」」


所詮あんたもあの馬鹿な男の一人だったってことね!

鍬をかりようとバッドの家に行ったらおばさんが納屋にあるからもってていいつーから、勢いよく納谷の扉開けたのよ。

そしたらば、バッドとベルナが抱き合ってちゅーしてるじゃないの。


「おめぇっ、なにしてっけ!こんっ馬鹿がぁっ!!」


真っ赤な手形をプレゼントしてやったわ!

ザマアッ!

バッドとなら結婚してもいいかなぁ~とか思ってたから怒りもひとしおだったわよ。

こうなったらぜえぇったい王宮の侍女になっていい男捕まえちゃるわぁっ!


気合いと根性、そして私が村では村人と変わらない生活を送ってたおかげで家事全般と子供の世話もできることが高く評価されて、私は侍女に採用された。じっちゃ落ちぶれてくれてマジありがと!

入っていったそうそう姫様付きの侍女とか私、マジ、出来る女って感じ。


「ねぇねぇ 、このおリボンで髪結って!」

朝姫様を起こしに行ったら、扉空けたすぐそこにスタンバられてたからマジびびった。

姫様の手には二本の赤いリボン。

「あらあら可愛いリボンじゃありませんかどうしたんです?」

手を繋いで鏡台のまえまで行く。てぇちっちゃ!


「ととさまがくれたの!」


つーか、今年で御歳七歳になられるメーアさまが可愛すぎて生きるのが辛い。



かなり癖のある髪黒をふたつに結ってあげると。


ありがとう、だいすきよ。とか可愛いことを仰るからギューッとハぐしておいた。


それから、リボンに会う赤いドレスを二人で選んで姫様が着るのを手伝う。


鏡を覗きこんだ姫様が


『お姫様みたい!』


とか姫様がいうから「お姫様ですよ」と言っておいた。




「みてみて、クロワーゼ達が森で野苺を摘んできてくれたの!」


見るからに重そうで今にも落としそうなので、姫様から逆さにした鉄兜から溢れそうなほどの野苺を受け取る。


「まぁー。こりゃまたたくさん頂きましたねぇ姫様。これだけあったら野苺のパイで姫様のお腹をパンクさせられそうですわ!」


さっとお腹を押さえる姫様が可愛い。


聞けば親衛隊が西の森での軍事演習の帰り野苺が大量になっていたのを摘んで来たのだという。


私は密かにオレンジ団と呼んでいた。


「おっと、そりゃ大変だ姫様のお腹をお助けするために助太刀しなきゃいけないな!」

このおっさんはオレンジ団の隊長で大酒飲みだが気のいい人だ…大酒飲みだけどね。

「えー…隊長野苺摘むの全然手伝ってくれなかったじゃないすかー食べるのだけ助太刀とかなしっすよー。」


今年入ったばかりの新入り君頭に葉っぱが刺さってるぜ!


「馬鹿やろうっ!俺はお前らがちゃんと野苺を摘めるかどうか監督してやったんだ!」


おっさん言ってることめちゃめちゃである。


「次は食べるのを監督する役なんて如何です?」


女騎士の言葉にその場がドッと沸くと


「意地悪しないでイストワール、みんな助太刀してくれるよね。」


いいよね?

と姫様が私を見上げてきたので


「もちろん!作るのを助太刀してくださるならね。」


私は茶目っ気たっぷりにウインクした。



王宮に来て早二年。


木影からワイゲルト様をを見つめる。

先日超森で体調3メートルン程の巨大クヴァ鶏に危うく獲物にされそうになったところを助けられた。

超巨大クヴァ鶏にキヨテル陛下が大喜びで『ヤキトリ』『タツタアゲ』『バンバンジー』など異世界料理をを侍女や侍従にまで振る舞って下さった。

ネギマとか言うのがおいしかった。


しばらくして通りがかったイストワールに、全然隠れられてないとか突っ込まれる。


ワイゲルト様と目が合う。

ぼーっとしてたらしく姫様の髪に櫛が絡まる。

侍女数人がかりで、香油やら色々試したけどどうにも無理だったので櫛を金槌で砕くという力技で取ることに。

私の不注意のせいで姫様の髪が金槌で叩かれるとか涙が止まらない。

侍女頭にもこっぴどく叱られる。

なのに姫様には慰められる。

涙が出た。

自己嫌悪。


ワイゲルト様に声をかけられる。

元気がない理由を聞かれ、話すと前屈みでお腹を押さえてるのでどうしたのかと駆け寄ると、笑うのをこらえてたとかマジあり得んかった。

幻滅。

さよなら私の恋。


姫様と王妃ルサーナリア様のお誕生日プレゼントに布の造花を作る。

小さいけど色とりどりの花束が出来た。

姫様とルサーナリア様に喜んで頂けて好かった。

貧乏暮らしの内職がこんな所で役にたつとはね!



ワイゲルト様に声をかけられる。

聞こえないふり。



ワイゲルト様に捕まる。

謝られる。

なんか許してもいっかなぁとか思う。

ワイゲルト様を許したところで私の姫様への愛が否定される訳じゃないしね!



姫様とおっさんが大量にチー豆を摘んできた。

おっさん大人なんだから食べられる量だけ摘んでこいよ。

このあと一週間オレンジ団は三食チー豆のメニューを食べるはめになっておっさん大ブーイング。




ワイゲルト様に王宮の舞踏会のパートナーに誘われる。

すっごいドキドキした。




でもはっと思い出す。


うちは貧乏貴族。


仕送りして余った侍女の給料じゃパーティーに行くようなドレスなんて仕立てられない。


でも断れなかった。


断りたくなかった。


どうしよう。



姫様に牛乳がしょっぱいと言われ味見したら、砂糖と塩を間違えてた。

姫様に今夜はシチューが食べたいと言われる。



今夜は舞踏会。

午後から休みを貰ったけど、行っても休んでもワイゲルト様には迷惑をかけてしまう。

どうしようかとふらふらあるいてるとイストワールに侍女部屋に連れ込まれる。

何故いる侍女仲間。


自分達は『ハシバミの魔法使いの使い』だと訳のわからぬ事をぬかしよる。

こっちはそれどころじゃないっていうのに、あれよあれよと下着に向かれドレスを着付けられ、髪を結われ、化粧を施される。

化粧が崩れるから泣くなと怒られる。

礼は『ハシバミの魔法使い』に言えと。

真夜中の12時までには帰ってこいと訳のわからぬことを言われ送り出される。

数日後お使いで城下で本屋で興味深い本を発見する。

なんでもキヨテル陛下の世界の童話だそうだ。


題名は






『灰被姫』


今日かえったら『ハシバミの魔法使い』に思いっきりハぐしようと思う。

姫様に仕えて三年目。

故郷からの手紙でバッドが駆け落ちしたらしい。

数秒バッドって誰だっけとか思う自分がいたことにびっくり。



あれから雨が降り続いている。今日も姫様は窓から外を見ている。今日は冷えるから後であっためた牛乳を持って行こう。





一部だけ見つかったらしい。




見つかって好かったのか悪かったのか私には分からない。

それより姫様にこのことを何てお伝えすれば好いのだろう。



朝方、高熱、嘔吐。

牛乳、コップ半分。



姫様がいなくなる。

夜半、西の森で見つかる。

こんなに神様に祈ったのは初めてかもしれない。

神様ありがとうございます。

今日はあっためた牛乳にたっぷり蜂蜜を入れてもって行こう。


王宮にきて四回目の春





姫様は今年で御歳11歳になられる。





そして私は明日城を出て行かなければならない。


私が残念でならないことは、あの可愛くて可愛くて可愛い私の姫様をもう近くで守って差し上げる事が出来ないことだ。


身の安全は変わりの護衛が守ってくれるかもしれない。



でも、決して私や彼らの変わりにはなれないだろう。


姫様の事を思うとあまりの辛さに目の前が真っ暗になりそうだ。









私は来月ワイゲルトと結婚する。

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