馬は悪くないでしょ?
前回のあらすじ。
ぅゎ ぉぅι゛っょぃ
何を言ってるか良く分からないと思うけど、ありのままに起こった事を話すと。
「ジョセフィンはとっても大人しいんですよ。」
「ふーん。」
仕方なくエヴァンズと城の裏の丘に遠乗りに行くことになったんだけども。
私、エヴァンズ、その騎士三人、エヴァンズの侍女三人
なにこの超アウェーな感じ。
私とエヴァンズが前を併走し後ろから騎士と侍女が付いて来る。
背中に視線が超刺さる。
「お姉様の馬って何て名前ですか?」
「カグヤナデシコ号よ。」
「か…かぐ、な??」
「カグヤナデシコ号。」
「…素敵なお名前ですね。」
可哀想なモノを見るような目で見られた。
「…ずいぶんと変わったお名前を付けられたのですね。良ければ私達下々の者にも由来をお聴かせ願えませんか?」
私達の会話を聞いていたのか、サエラと言ったか女騎士が話しかけてきた。
……少しだけ面食らってしまった。こんなふうに…いや、邪推しちゃいけないわ、これが嫌味だとか他意があるとか、だが誰も咎める様子がないのでもしかしたらエヴァンズとその従者達はいつもフランクな感じに付き合ってるのかもね!
でもお姉ちゃんはちょっと失望しちゃったけどね!
「カグヤとはおとぎ話にでてくる月から来た絶世の美姫の名前でナデシコと言うのは清く礼儀正しい女性の事です。」
「絶世の美姫ですか。」
サエラの言葉に含みがあるのはきっとワタシノキノセイヨネ?
「お姉様にぴったりですね!」
エヴァンズはニコニコ微笑み返して来るけどなんだろうこの憎しみは。
「ねぇ?みんなもそう思うでしょ?」
エヴァンズは振り返り後ろの侍女達に問いかける。
「…えっ、そうですね?」
「私も王女殿下によくお似合いだと思いますわ。」
「えぇ!私もそう思います。」
侍女達の頬がちょっと薔薇色なのは、絶対馬に乗ってる上下運動のせいじゃないね!
このショタコン共!
彼女らが私に似合うと答えたのも、「メルティア様には不相応な名前でも否定などして無邪気なエヴァンズ様を悲しませてはいけないわ!」
ってところかしら。
てか、カグヤナデシコって言うのは馬の名前であって私の名前ではないのだけどね!
というか私この国の第一王女で時期女王様何ですけど?
アウェー私超アウェー。
てか、つけたの私じゃないんだけどね!
カグヤもナデシコも父キヨテルが付けたんだけどね!
『ほら、可愛い馬だろう?メーアもお姫様なんだし、お姫様っぽい名前がいいと思ったんだよね。』
私も、由来はどうかとおもったけど付けられた本人(馬)が満更でもないって顔してたから、本人(馬)の好きにさせただけなんだからねっ!
にしても胸くそ悪い。
「エヴァンズ?風も出てきたし日が暮れる前に戻りましょう?。」
「はい、お姉様。」
引き返そうと、カグヤナデシコの腹を軽く蹴って方向転換させようとしたとき、
ズッ
右足が空を蹴った。
「っ!」
一瞬、血がざあっと引いた。
手綱を強くひき左を力一杯踏ん張る。
方向転換しようと手綱を短めに持ち替えててよかった。
「ヒヒーン」
急に手綱を引いたからこちらもびっりしたであろうカグヤナデシコ。
「どうどう…ごめんね?ちょっとびっくりしたね。」
カグヤナデシコの鬣を優しくなでる。
「大丈夫ですかお姉様?」
「ええ、大事ありません。」
声をかけてきたエヴァンズに平静を装って返事をする。
全然平気じゃない。心臓爆発する。
でも、そんなことありませんよと、取り澄ます。
「……どうやら鐙の金具が外れてしまったみたいね。」
見ると先程まで右足を乗せてた足場が無かった。
「鐙が……お姉様宜しければ帰りは僕と一緒に乗りませんか?」
「いいえ、大丈夫よ。それに馬に乗るときは道具の点検は自分でしなくてはならないもの。これは私の怠慢の結果だわ。」
厩に入った時にはカグヤナデシコにはもう鞍がついていた。
これは私の完全なる怠慢であり
――敗北だ。
腹帯は一応確認したんだけど、まさか鐙が外れるとか予想外。
くそぅ。まじで悔しい。
でもそんな時ほど顔を上げ、胸を張り、背筋を伸ばす。
私なーんも傷一ついてませんよ顔するのが一番いいのだ。
馬から見た視界は高く広い。
荒れ狂う感情はとりあえず別の場所に一時保管し、夕食のことを考える。
…牛乳牛乳牛乳牛乳牛乳…
ミルク何ていう軟弱な呼び方は認めないわ!断じて!
「今日の夕食はなんでしょうね?」
夕食時には絶対牛乳を飲もうと心に決めた。