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勇者は雑草を食べないでしょ?

んー!


と、背伸びしたら肩がバキバキ鳴った。


ちょっと鬱なメルティア17歳。


あれから、エヴァンナが一緒に是非一緒に昼食を食べたいとかぬかしよるので、超丁重にお断りした。


なんか即位したあと外交とかうまくやっていけそうな気がする。



「ちゃっちゃと食べて片付けさせて下さいませ。」


肩まである金髪、ツンとした口調だが残念なことにクルベットはツンデレではない。

ただの小姑である。


「本日の昼食はクヴァ鳥のソテーに茹でチー豆とパンです。お飲み物はミルクとお茶どちらになさいます?」


「牛乳。」


私は断然牛乳推しである。


「ミルクとお茶どちらになさいます?」


「牛乳。」


「……。」


クルベットの無言の圧力。


「牛乳。」


国家権力は侍女の圧力に屈しないことをここに証明しようと思う。


パンを半分に割り、中に穴をあけそこに茹でチー豆を詰める。


ふわふわで小麦粉独特の甘味と塩とスパイスで煮込んだチー豆の少し固めの2つの食感の違いを口のなかで楽しむ。


「お行儀が悪いですわよ姫様!」

「誰も見てないわよ。」

(わたくし)が見てますわ!」


キリキリとつり上がるクルベットの目尻。

たまに、クルベットがツンデレだったらいいのに、と思う。


続いてクヴァ鶏のソテーを一口大の大きさに切り分け食す。

淡泊な肉をバターでソテーし、甘辛くこくのあるソースとさっぱりした酸味のある2種類のソースで食べる。


因みにチー豆はそこら辺の土手に、クヴァ鶏はそこら辺に飛んでる鳥だ。


なんで一国の王族である自分がそんなものを食べているかと言うと、


『チー豆とクヴァ鶏は父さんの命綱だったんだよね。チー豆は乾かして保存がきくし、クヴァ鶏はそこら中にいるし。』


という、元勇者である父キヨテルのせいである。


父曰わく、『雑草でもいいから食べたいと思ったとき、森の聖霊がこれ食べれるって教えてくれてね~。そこらへんに生えてるから食べ放題だった。クヴァ鶏はそこらへんにいるし試しに焼いて食べたらおいしくて。』


その話を西国の大使との晩餐会で自慢げに…大使のあの悲しいようなしょっぱいような瞳が忘れられない…。


(その日のメインはクヴァ鶏のローストセイント・ライト・ブレイブ風。父の名前が清く照らすと言う意味から命名されたこの国の定番メインだ。)


当時チー豆もクヴァ鶏も食料として認識されてなかったため、『終末の災禍』のおり、村や街にチー豆とクヴァ鶏を食用として広めたのも父だった。

なので父が魔王を倒したあと父にあやかり、チー豆とクヴァ鶏は国内で爆発的に生産、養殖、品質改良が進みいまではブランド品種まである。


でもブランドチー豆とたまに父が土手でむしってくるチー豆の違いが良く分からない。


父は元々は『ニホン』というところに住んでいたらしい。


らしい、というのは、その『ニホン』という国がこことは違う異世界にあって、18年前『終末の災禍』と呼ばれる、世界が滅びかけるという大変な災いがあった。


誰もが絶望するなか光と共にこの世界に招かれた父は、『チート』という能力で魔王を倒したのだという。


その『チート』というのがどんな能力で『魔王』とはどんな恐ろしい魔物だったのか父に問うたことがあったけども、


『僕の愛しいメーア、それはいずれメーアが女王となったとき否応にも知ることになるだろうね。……だからねメーア、急いで大人にならず、いつまでも稚いメーアでいてほしい。』


僕も長く王でいられるように、健康にきをつけるね?と微笑む父を見て、私はよくわからない、明かりのない部屋を一人で覗き込んだような薄ら寒さを感じたのを覚えている。


私はいずれ父の座する場所へ座る事になる。


でも、それが決して華やかで輝かしいばかりでない事も知っている。


その日が待ち遠しいような、でも来てほしくないような、そんな複雑な感情を抱いてたけど、去年侍女をやめたセリーヌが辞める直前


『なんかぁ、なんかもう来て欲しいけどぉ、きてほしくないっていぅかぁ…複雑?』


と良く漏らしていた。


え?何って?


彼女、マリッジ・ブルーだったらしいのよね。


この間今度子どもが産まれるとか手紙が来たけど。チー豆を樽で送ってくるのやめてほしい。


しばらくお昼ご飯にチー豆でまくるから。

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