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花束を添えて  作者: 希望日記


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1/1

アネモネの約束

大切な人を想う気持ちは、

形が変わっても、そばに残ると信じています。

「もし私か、子供の命。どちらかが危ない時は、迷わず子供を救ってほしい」


「なんでそんなこと言うんだよ」


「大丈夫。生まれ変わって、あんたのところに会いに行ってあげる」


そう言って、恵美は笑った。

でもその笑顔は偽物だと俺には分かる。


子供の名前は「杏音」。

恵美が好きだった花、アネモネから取った名前だ。


名前まで決めて、明るい話をしていたはずなのに、

部屋の空気はどこか重くなっていた。


二人で窓の外を見た。

黄色い蝶が、ふわりと視界を横切った。


「ほら。暗い話してるから、怒ってるんだよ」

「生まれ変わったら、この蝶々になって会いに来る。…なんてね!」


「その話はもう辞めよう。俺が必ず守る」


「なにそれ。惚れ直すじゃん」


恵美はようやく本当の笑顔を見せてくれた。

その瞬間が、ずっと続くと思っていた。


━━━━━━━


ピー、という音。


嫌な予感がして、胸が冷たくなった。


「赤ちゃんか、お母さん。どちらを——」


その先が聞こえなかった。

言葉が、頭に入ってこなかった。


二人を守るって言ったのに。

俺は、下を向いたまま、

何も出来なかった。


━━━━━━━


「ねぇねぇ、パパ」


小さな手が、服を引っ張る。


「ママはどこ?」


一瞬、言葉に詰まった。


「……どこにいるんだろうな」

「お母さんはね、太陽みたいな笑顔の人だったんだよ」


「ほんと? 見てみたい!」



無邪気に走り出し、

母親を探すその背中を見て、


「……会いたいな」


自分でも気づかないくらい、小さな声だった。


「パパ! こっち来て!」


「今行く」


俺は目を擦った。

深く息を吸って、何度も瞬きをした。


泣いているのがばれないように。


━━━━━━━


「見て! きれいな花!」


「それ、お母さんが好きだった花だ」


花びらが、風に揺れていた。


「この花アネモネって言うんだよ。記念に写真撮ろっか」



杏音が、俺の方を向く。


シャッターを押そうとした、その時。


「よかったら、撮りましょうか?」


振り向くと、優しそうな中年の男性が立っていた。


「すみません。お願いします」


「撮りますね。3人とも笑って下さい!

はいチーズ」


「3人?」


そう思ったが、

俺はそのまま家に帰った。


家に帰り写真を見てみると

俺と杏音の、ちょうど真ん中。

そこに、黄色い蝶が写っていた。


横にはアネモネの花が並んでいた。


アネモネの花言葉。

「あなたを愛しています」

「あなたに会いたい」


「生まれ変わって蝶々になって会いに行く。この約束を守ってくれてありがとう」


これが、

俺と恵美と、杏音の

最後の家族写真だ。


ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

もし誰かの「会いたい人」を思い出すきっかけになれたなら、嬉しいです。

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