第14話 誰も選ばなかった結末
決定は、いつも静かに下される。
怒号もない。
対立もない。
議論すら、ほとんどない。
ただ――
そうなる流れだったという顔をして。
王宮の一室で、非公式の協議が行われていた。
私は、その場にいない。
けれど、内容は分かっていた。
なぜなら、
結論に至るまでの言葉が、
すでに出揃っていたから。
「このままでは、憶測が広がります」
「一度、説明の場を設けた方が良いでしょう」
「関係者が揃っていれば、誤解も解けるはずです」
誰も、「断罪」とは言わない。
その必要がないからだ。
説明の場=裁きの場
それは、この国の暗黙知だった。
ユリウスが、私の部屋を訪れたのは、その夜だった。
「決まった」
短い一言。
私は、頷いた。
「ええ」
驚きはない。
「来週、公開の場が設けられる」
「名目は?」
「説明と整理」
彼は、苦々しく笑った。
「便利な言葉だよな」
私は、机に置かれた紙を一枚取り上げる。
そこには、
これまで私が記録してきた
言葉と判断の流れがまとめられていた。
「殿下」
「ん?」
「この場に、
“断罪を望んでいる人”はいますか?」
彼は、少し考えてから首を振った。
「……いないな」
「誰も、私を憎んでいない」
「誰も、罰したいわけじゃない」
「それでも――
この場は、開かれる」
ユリウスは、黙った。
それが、答えだった。
翌日。
学院内に、公式な通達が掲示された。
文面は、穏やかで、丁寧で、理性的。
――最近の一連の出来事について
――関係者間の認識を整理するため
――公開の説明会を実施する
そこに、私の名はある。
役割として。
人々の反応は、落ち着いていた。
「やっぱりね」
「一度は、はっきりさせないと」
「聖女様のためにも」
怒りはない。
興奮もない。
あるのは、
納得の予感。
結末を、もう知っている顔。
私は、中庭に立ち、空を見上げた。
雲が、ゆっくりと流れていく。
――誰も選んでいない。
それなのに、
全員が、同じ結末を想定している。
これが、台本の力。
「……怖くないか?」
ユリウスが、隣に立つ。
「いいえ」
即答だった。
「もう、驚きませんから」
私は、静かに続ける。
「ここで追放されるのは、
私個人ではありません」
「この構造そのものです」
その夜。
セシリアから、短い書簡が届いた。
内容は、たった一行。
――私も、その場に立ちます。
私は、目を閉じた。
十分だ。
彼女は、
自分の意思で、舞台に上がる。
それだけで、
台本は、もう綻びている。
私は、筆を取り、返事を書く。
――ありがとうございます。
――それでこそ、選択です。
書簡を封じ、息を吐く。
舞台は整った。
観客も、揃った。
あとは――
幕を破るだけ。
追放フラグ【Stage4:有罪前提】
――Stage5、突入直前。
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