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モノもち  作者: テイク
第一章 現れるモノ
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第七話 遊んでみたらいろいろわかる

 シルが玉子焼きを食べる。


「う~ん、やっぱりお兄ちゃんの料理おいひいね~!」

「こら、シル食べながらしゃべるな」

「えへ、ごめんなさ~い」

「よし、もうするなよ」


 こういうのって妹を持つ兄の気分だよな。まあ、実際の妹はそうはいかないのだが。


「透さんはどこで料理を覚えたんですか?」


 キクが聞いてきた。


「あ~、うちはさ、両親が仕事ばっかでほとんど家にいなくてさ自然と覚えたんだよ」

「そうなんですか」


 キクが少し申し訳なさそうな顔をする。


「別にそのことについてお前が何か思ってもしかたないし。そのことには納得している。今はお前達がいるだろ?」

「そうですね。そうです」


 そういい微笑むキク。いい奴だな。


 ヒョイ、パクッ、ヒョイ、パクッ


 その隣で無言で食べまくるトウカ。


「トウカもう少し落ち着いて食えよ」

「…………」


 何も言わず食い続ける。トウカは表情が変化しないので何を考えているのか読みにくい。せめて感想くらいは言ってほしい。仕方ない聞いてみるか。


「おいしいか?」

「…………」


 小さく頷いた。よかった、おいしかったようだ。


「それはよかった」

「…………」

 

 また頷いた。そして黙って食べ続ける。


「それはあたしがもらうぜ!!」

「アイヤ! 渡さないアルヨ!!」


 エミと美鈴(メイリン)が弁当の取り合いをしていた。


「喧嘩するなよ」

「いや、これはあたしが咲きに取ったんだ」

「ワタシアル」

「おいおい」


 そのままこう着状態が続くかと思われたが――。


「じゃあ、わたしが食べる」


 シルがやってきてそれを食べてしまった。しかもそれが最後の一個だったようだ。


「…………」

「………………」

「頼む、そんな泣きそうな顔で僕を見ないでくれ」

「…………」

「………………」


 ああ、こういう顔に弱いんです。てか、泣きそうな顔ってのは卑怯だよ。それにキクの視線が痛い。


「また今度好きなの作ってきてやるから、な」

「なら、あたしはトンカツかな」

「アタシは玉子焼きアル」


 …………一瞬で喜び顔に変わる二人。げんきんな奴らだ。

 そしてデザートまで食べ終わった。


「ふう、ごちそうさまー!!」

「ごちそうさまです。透さん」

「…………ごち」

「ごっさま~!!」

「こちそうさまアル」

「ああ、お粗末さまでした」


 みんな気持ちよく食べてくれたな。


「よ~し、遊ぶぞーー!!」


 シルが走っていった。


「元気な奴だな」

「おっしあたしも行くかね」

「ちょっとクルアル。勝負するアル」

「お、いいなやろうぜ」


 物騒な二人が木陰から出て行った。大丈夫か? まあ、何とかなるだろう。


 スクッとトウカが立ち上がった。


「トウカは何をするんだ?」

「…………これ」


 巨大な氷塊を取り出したトウカ。


「何をする気だよ」


 こんな真昼間の公園で氷塊なんか取り出して何をする気なんだよ。


「…………」


 さらに氷のノミとハンマーを取り出す。


「…………まさか、彫刻でもやるきか?」

「…………」


 コクリと頷くトウカ。


「そ、そうか」


 ま、まあ趣味は人それぞれだし。いや、まあ、トウカたちは元道具で人ですらなかったわけだが。まあ、いいか。


「じゃあ、がんばれよ」

「…………」


 再び頷いてトウカは彫り始めた。


「皆さん元気ですね」

「キクは行かないのか?」

「私まで行くことはないでしょう」

「そうか?」

「そうですよ。それにここで見ていたほうが面白いですし」


 公園を見渡す。走り回るシルに戦っているエミと美鈴(メイリン)、氷の彫刻をしているトウカ。


「確かにな」


 見ているだけで楽しいな。こんなのこいつらが出てこなかったら味わえなかったな。


「おにいちゃーん!!」


 シルが呼んでいる。


「さてと行くかな」


 立ち上がる。


「ほら、行くぞ」

「私もですか!」

「当たり前だろ」


 キクの手をとり立たせる。


「さあ、行くぞ」


 シルの元へとキクを引き連れて走っていく。


 そのあとは日が暮れるまで遊んでいた。


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