第七話 遊んでみたらいろいろわかる
シルが玉子焼きを食べる。
「う~ん、やっぱりお兄ちゃんの料理おいひいね~!」
「こら、シル食べながらしゃべるな」
「えへ、ごめんなさ~い」
「よし、もうするなよ」
こういうのって妹を持つ兄の気分だよな。まあ、実際の妹はそうはいかないのだが。
「透さんはどこで料理を覚えたんですか?」
キクが聞いてきた。
「あ~、うちはさ、両親が仕事ばっかでほとんど家にいなくてさ自然と覚えたんだよ」
「そうなんですか」
キクが少し申し訳なさそうな顔をする。
「別にそのことについてお前が何か思ってもしかたないし。そのことには納得している。今はお前達がいるだろ?」
「そうですね。そうです」
そういい微笑むキク。いい奴だな。
ヒョイ、パクッ、ヒョイ、パクッ
その隣で無言で食べまくるトウカ。
「トウカもう少し落ち着いて食えよ」
「…………」
何も言わず食い続ける。トウカは表情が変化しないので何を考えているのか読みにくい。せめて感想くらいは言ってほしい。仕方ない聞いてみるか。
「おいしいか?」
「…………」
小さく頷いた。よかった、おいしかったようだ。
「それはよかった」
「…………」
また頷いた。そして黙って食べ続ける。
「それはあたしがもらうぜ!!」
「アイヤ! 渡さないアルヨ!!」
エミと美鈴が弁当の取り合いをしていた。
「喧嘩するなよ」
「いや、これはあたしが咲きに取ったんだ」
「ワタシアル」
「おいおい」
そのままこう着状態が続くかと思われたが――。
「じゃあ、わたしが食べる」
シルがやってきてそれを食べてしまった。しかもそれが最後の一個だったようだ。
「…………」
「………………」
「頼む、そんな泣きそうな顔で僕を見ないでくれ」
「…………」
「………………」
ああ、こういう顔に弱いんです。てか、泣きそうな顔ってのは卑怯だよ。それにキクの視線が痛い。
「また今度好きなの作ってきてやるから、な」
「なら、あたしはトンカツかな」
「アタシは玉子焼きアル」
…………一瞬で喜び顔に変わる二人。げんきんな奴らだ。
・
・
・
そしてデザートまで食べ終わった。
「ふう、ごちそうさまー!!」
「ごちそうさまです。透さん」
「…………ごち」
「ごっさま~!!」
「こちそうさまアル」
「ああ、お粗末さまでした」
みんな気持ちよく食べてくれたな。
「よ~し、遊ぶぞーー!!」
シルが走っていった。
「元気な奴だな」
「おっしあたしも行くかね」
「ちょっとクルアル。勝負するアル」
「お、いいなやろうぜ」
物騒な二人が木陰から出て行った。大丈夫か? まあ、何とかなるだろう。
スクッとトウカが立ち上がった。
「トウカは何をするんだ?」
「…………これ」
巨大な氷塊を取り出したトウカ。
「何をする気だよ」
こんな真昼間の公園で氷塊なんか取り出して何をする気なんだよ。
「…………」
さらに氷のノミとハンマーを取り出す。
「…………まさか、彫刻でもやるきか?」
「…………」
コクリと頷くトウカ。
「そ、そうか」
ま、まあ趣味は人それぞれだし。いや、まあ、トウカたちは元道具で人ですらなかったわけだが。まあ、いいか。
「じゃあ、がんばれよ」
「…………」
再び頷いてトウカは彫り始めた。
「皆さん元気ですね」
「キクは行かないのか?」
「私まで行くことはないでしょう」
「そうか?」
「そうですよ。それにここで見ていたほうが面白いですし」
公園を見渡す。走り回るシルに戦っているエミと美鈴、氷の彫刻をしているトウカ。
「確かにな」
見ているだけで楽しいな。こんなのこいつらが出てこなかったら味わえなかったな。
「おにいちゃーん!!」
シルが呼んでいる。
「さてと行くかな」
立ち上がる。
「ほら、行くぞ」
「私もですか!」
「当たり前だろ」
キクの手をとり立たせる。
「さあ、行くぞ」
シルの元へとキクを引き連れて走っていく。
そのあとは日が暮れるまで遊んでいた。