第五話 中華はやっぱり炎でしょ
散々な補習のあと帰宅。今はお昼を少し過ぎたくらいだ。僕が帰ったことを感じてドタドタを足音が近づいてきた。
「お兄ちゃんおかえりー!!」
シルが僕に飛びついてきた。それを受け止めて。
「ただいま」
「お帰りなさい透さん」
「ああおかえりキク」
ホウキを持ったキクがやって来た。掃除でもしていたのだろう。リビングへ行く。トウカはソファーに座ってテレビを見ていた。
「おかえり」
「ただいま」
トウカはクールだ。元が冷蔵庫だからだろうか。
「みんな昼は食べたのか?」
「まだ~!! シルはもうおなかぺこぺこ~!!」
そうだったこいつら誰も料理できる奴がいなかったな。
「じゃあ、今から作るからまっててくれ」
「は~い」
二階の自分の部屋に行って私服に着替える。
「さて、と何がいい?」
「お兄ちゃんの作ってくれたものなら何でも、だってどれもおいしいし」
シルは何気にうれしいことを行ってくれる。
「私もシルと同じです。透さんの料理はおいしいですから。特に洋食が」
キクの言うとおり僕は料理の中でも洋食が得意だ。一応他のも出来るけど。
「じゃ、今日は炒飯でも作るかな」
この頃中華してないから。
「えっと確かこのあたりに中華鍋がっと」
先に中華鍋をコンロにのせ火をつけようとして。
「あれ、中華鍋割れてるし。それに火もつかない」
さて、つまりは。
「また増えるってことか」
そういった瞬間光の奔流。目をふさぐ。
目を開けるとそこには二人。赤髪セミロングで赤い長袖にジーパンの長身の女と黒髪、緑のチャイナ服の小柄女が居た。
「お兄ちゃんさっきのって……うわ、また増えてる!!」
光を見てやってきたシルが驚く。
「あ~、壊れるまで最後まで使ってくれてサンキューな」
赤髪の女が言った。
「最後まで壊れるまで使ってくれてアリガトアル」
チャイナ服の女が言った。
二人ともなんなのか一目瞭然。てか、チャイナ服は明らかに中華鍋だな。
「さってと透さっさと名前つけろよ」
赤髪の女がヘッドロックをかけながら言ってくる。
「って、この状況じゃ無理だはなせ!!」
「おっとわりいわりい」
解放される。
「えっとお前はコンロだよな」
「おう」
「じゃあ、エミで」
「あたしはエミか。いいな。炎を連想させて」
「次はワタシアル」
アル口調の中華鍋は。
「美鈴で」
パソコンで見たのがこれだけだったからだ。中華鍋要素ゼロの命名。だって、中国の名前なんてわかんないもん。パソコンで見て覚えてたのがこれだったからだよ。
「アリガトアル」
さってと、二人も増えてしまったよ。
「あの、今の騒ぎはって、あらあら、また増えたんですね。どうも、私キクと申します。元ホウキです」
やって来たキクが自己紹介をする。
「ワタシは元冷蔵庫のトウカ」
トウカはそれだけ言ってリビングヘ戻っていった。
「あたしは元コンロのエミだ」
「ワタシ元中華鍋の美鈴ネ」
さてとこれで自己紹介終了。それにしてもまさか一度に二人も増えるとは思わなかった。てか、この頃一度に壊れすぎな気がするな。大事に使ってたのに。誰かの作為を感じるのは僕だけなのだろうか。まあ、こうして大切に使った道具を捨てないで一緒に住めるというのは喜べるんだけど。なぜか全員女の子。これは少し勘弁してほしいな。嬉しいけどね。
「さて、コンロがなくなったのでご飯が作れなくなったな」
「おう、それならあたしに任せろ」
エミの手から炎が出る。
「これで大丈夫だろ」
「アイヤ、トオル、今回はワタシに任せるヨロシ。中華なら任せるアル」
「そうか? じゃあ頼む」
「任された」
エミと美鈴新人二人組に料理を任せてリビングへ。
「あれ、お兄ちゃんなんで戻ってきたの? おひるごはんは?」
「あの二人がやってるよ」
「大丈夫なの?」
シルの言いたいことはもっともだ。今まで擬人化した三人は料理が出来なかったからな。まあ、大丈夫だろう。中華鍋だし。今回は信じよう。もしもの時は出前だな。
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結果から言えば僕の心配は徒労に終わった。
「すごいな」
「どうアル」
認めよう中華は完璧に負けた。
「僕の負けだな。このチャーハンうまい」
「よかたアル」
「本当だ~おいし~」
シルも食べて言う。
「本当においしですね」
キクも同じく。
「……おいしい」
とまあ、先輩物三人組はご満悦のご様子。しかし、エミだが、火力あがったな。人間になって確実に。
「そうアルかよかったアル」
「お前は中華担当だな」
これで僕の負担が減ることを祈る。
「任せろアル、トオルには世話になったアルからな」
いい子だ。なんかいい子だこの子。
「さて、とりあえずよろしくな」
「よろしくアル」
「よろくな」
今日二人も家族が増えました。
次回更新は二週間後です。