第三十五話 幽霊捜索
というわけで幽霊を探すことになってしまった。事後承諾だったがみんな乗り気だったのでよかった。変態の話を聞いて、この旅館は広いということもあり、2人一組で手分けして幽霊を捜索することになった。見つけたら携帯で連絡しろとのこと。変態はこんなこともあろうかととか言いながら人数分の携帯を用意していた。これ、自作自演じゃないだろうなとか疑ったぞ。それに何で携帯、全機種持ってるんだって話だ。
それで僕はエミと今探してるわけなんだけど。
「あの、もう少し離れてくれない」
エミが僕にこれでもかってくらいくっついてきて歩き難い。怖いなら来なければ良いのに。そう言ってもエミは強がってついてきたし。それでこれはやめてほしい。
「そんなこと言わずに頼むぜ。いや、怖くなんてないけどさ。ホラ、なんかあったとき怖いだろ」
いや、こっちのほうが何かあったときに危ないよ。というか怖いって言っちゃてるから。もう認めてよ。そしたら部屋まで送るからさあ。でも、そんな僕の思いはエミには届くことはなく、幽霊を地道に探すことに。
「はあ、じゃあもういいよ」
そのままにしておいて探索を再開する。
「しかし、本当に幽霊なんているのか?」
「さ、さあな」
「まあ、霊感ないから見つからないと思うんだが」
霊感がなければ見ることもできないし、見つけるのだって不可能だろう。僕は霊感なんてないし、エミもないだろう。それで見つけられたら、相当強い幽霊ってことだろうな。しかし、シルは見たって言ってるからな。もしかしたら、相当凄いのが居たりして。ハハハ、そんなわけないか。って。
「おい、エミ何固まってんだ?」
「い、いた」
「何が?」
「幽霊」
は? 何が居たって幽霊? おいおい、僕は何も見てないぞ。本当に居たのかね? …………いたよ。うそぉ。マジか。目をこするが消えない。どうにも本物のようだ。えっと……うん、着物を着た女の子のようだ。あの変態が言っていたことは本当だったみたいだな。これテレビとか出したら金稼げるんじゃね? っと、その前に追わないとな。ここまで来たら正体確かめないと損だ。
「行くぞエミ」
「え゛」
「え?」
「い、いや、行こうぜ!」
あ~、まあ、いいか。エミ自身が行こうって言ってるんだし。それにしても、まさか、出るとはな~。世の中まだまだ不思議がいっぱいなんだな。いや、まあ、ね、僕の家が一番不思議だけどさ。物の怪の魔窟みたいなもんだし。あいつらを物の怪とか言ったらだめだけど。対外的に見たらそうだよな。いや、考えないでおこう。それよりも今は幽霊だ。
幽霊が曲がったと思われる曲がり角を見るが、その先には何も居なかった
「居ないな」
「あ、ああそうだな」
「どこ行ったのやら」
お、誰かかけてきたな。えっと、変態からか。果てしなく出たくないが、仕方ないな。
「はい、何かあったのか?」
『透か、いやな、出たぞ、本物の幽霊だ。まさか出るとは思わなかった。あの話も嘘だったのに』
「おい、コラ」
聞き捨てならないことを聞いたぞ。あの話嘘かよ。くそう、無駄に変態を信じた僕が馬鹿だったのか。いや、仕方ないだろう。シルが見たとかいったんだし。でも、それで本当にいたってのが驚きだな。どうやら、さっきのは本当に見間違いじゃないようだ。
『ハハハ、スマン』
ハハハじゃねえよこの野郎。携帯を無意識に握り締める。だが、携帯がギチギチとなっていたので、力を緩める。今度本気で殴らなくちゃいけないようだなこの変態。まあいい、変態はおいておいて、これからどうしようか。幽霊がいるのははっきりしているが、これ以上探しても良いものなのかそれが問題だ。変態の幽霊が敵討ちをしている話が嘘だったから害はないかもしれないけど、幽霊になるってことは何かしらの未練があるってことだからな。出来れば解消してやりたい。
「それで、幽霊はどこ行ったんだ?」
『知らん!!』
「威張って言うな」
『知らんものは知らないんだから仕方ないだろう。水場じゃないか? その辺りに集まると聞いたことがある。それで、もしいたら着物を――』
変態が余計なことを言う前に電話を切って着信拒否にしておく。これで折り返し電話が来ても大丈夫だ。さてと、また手がかりなしで探すことになるのか。どうしたもんかな。水場って言ってもいるとは限らないし。
「仕方ない。水場に行くか」
そんなわけで水場へ行くことになった。
ようやく更新することが出来ました。
お待たせしました。
相変わらずリアルは忙しいので不定期更新となりそうですが、がんばって更新して行こうと思います。