間章六
1ヶ月お待たせしました。
これから復帰です。
これからもよろしくお願いします。
静か過ぎる。森が静かだ。完全に音がない。森の中で、これはありえない。風が吹けば必然、木々が揺れる音がする。動物が動けばそれなりの音がする。完全な無音などはありえない。なのに、無音の森の中に少年が立っている。ありえない景色。ありえない。ありえない。
「さぁて、今頃あいつらは楽しんでんだろうなあ、ああ、俺も行きたいぜ。まあ、それは変態だから駄目だな。さあてと、おいじじい、出てきたらどうだぁ?」
「ばれておったか」
森の木の裏から、源さんが出て来た。少年の前に出てきて、少年を睨みつける。
「何を考えておる。お主がやっておるのはルール違反じゃぞ?」
「ハッ! 何だそんなことかよぉ。俺たちゃあ、遊んでるだけだぞ。何か問題でもあんのかぁ?」
ニヤニヤとしながら言う少年。わかってんだよ。そんなことは。俺は面白ければそんだけでいいんだよぉ。どうせ、代わりになる奴ならいるんだからなぁ。そう、少年の表情は語っていた。
今まさに、旅館の風呂場では少年が遊びと称する戦いが起きている。源さんの力で、誰にもバレないようにしている。普通ならば、処罰せねばならぬ事項ではあるが、少年が言うとおり、これは遊びでしかない。本来の戦いは両者の合意でのみ始まり、その中でのみ、ルールが適応されるのだから。
一方が一方的に行う攻撃は普通は反則である。だが、一方が攻撃を認知しておらず、さらに、それが、相手の主人にバレなければ、反則にはならない。戦っている彼女たちは、透にはバラすことはない。つまり、これは本当に遊びでしかない。一歩間違えれば己が滅ぶ危険な遊びだ。
「なんとも、危険なことをする」
「ハッ! 危険? この程度で? フッ、フハハハハハハ!! この程度危険ですらない。じじい、てめえが言う危険と俺様が言う危険はレベルが違うんだよ、ばあかぁ!! ハハハハハ」
「ならば警告しておこう。その慢心がいずれ己を滅ぼすことになるぞ」
「ハッ! させてみな。じゃな、じじい、ハハハハハハハハ!!」
少年は立ち去っていった。その途端、関を切ったかのように森の中に音が戻って来た。少年の異質な気配に森の全てが逃げ出していた。源さんが思うのは圧倒的危険。あの少年はいずれ、全てを破壊してしまうだろう。そんな予感。
「すまんの、わしには止められんかったわ」
源さんは呟き森の中に消えた。後には、何も残らなかった。
少年の目の前には熊がいた。野生の熊。飢えているのは少年に向かってうなっている。
それだというのに、少年はまったく隙だらけ。襲ってくださいとでも言う風に、熊など眼中にないとい風に立っている。
「ハッ、おもしれえ、あのじじい、いつか俺が殺してやるよ」
『ガアア!!』
熊が少年に跳びかかる。その爪にかかれば、少年など一瞬のうちに切り刻んで胃袋の中に入れてしまうことが出来たはずだった。そう、はずだったのだ。実際はそんなことにはならなかった。そんな空気にさえさせてはもらえなかった。
「あ゛!」
一睨み、たったそれだけ、それだけで、熊は逃げ出した。この森の中で最強を誇っていた熊であったが、少年が睨むだけで、おびえ、逃げ出した。
「フン、さて、戻るか。フッ、ハハハハハハハ!」
少年は、旅館へと歩を向けた。