第三十話 エミ戦う?
sideエミ
「ニャハハハハ、さあ、行くよ!」
どうにかサクミの援護に行きたいんだが、どうやらあたしの相手はこいつらしい。さっき風呂に投げ込まれていたが、まあ、あいつなら大丈夫だろう。あそこ深いけど、あいつ泳げるし。問題はあたしだな。こいつ、気味悪いんだよな。なんか嫌な予感がするな。油断は禁物だ。
「来い!!」
両手に炎を出して身構える。相手が何をしてきても何とかできるようにする。こいつの力はわからんが、まあ、透まで被害が行かないようにするだけだな。恩をあだで返すとかあたしの柄じゃないぜ。
赤髪の少女が向かってくる。むう、面倒だから、こいつのことは赤猫と呼ぼう。なんか猫っぽいし。そして、やっぱり思ったとおり赤猫は猫っぽかった。動きが妙にしなやかで関節なんてないぜ的な動きをしてくる。正直気持ち悪い。こいついったい何なのやら。
とか思っていると、カポエイラの技ケイシャーダを放ってきた。わからない奴はググレと言いたいが、説明してやる。顎への蹴りだ。それを紙一重でかわす。危ないぜ、喰らったら、脳震盪でも起こしかねん。
しかし、どこでカポエイラなんて覚えたんだこいつ。そして、あたしは何でカポエイラの技を知っているんだろうな。神の意思か? しっかし、タオル一枚で戦いってなんだかな~。
無駄なことを考えていると、またもやケイシューダを放ってきた。それもかわす。フッ、見ていればかわせない攻撃ではない。なんて、かっこつけてみたりして。
「ニャー、当たらんな~!」
「こっちからも行くぜ!!」
炎を伸ばして、剣のようにする。うん、透が持ってた漫画、なんか友達が押し付けたとか言ってたやつ読んで一度やってみたかったんだよ。なんだっけ、とあるなんとかって、まあ、うん、うまく出来た。さあ、行くぜ!!
「とおおおおりゃあああああああ!!!」
炎剣をぶん回す。剣術なんて知らんから適当だ。まあ、元コンロのあたしが剣術なんて知ってたらおかしいだろう。だから、振り回すだけだ。
「ニャハハ、当たんないよ~」
む、やっぱあたらねえな。かと言ってもうちょい、火力とかを挙げると、ここが燃えちまうんだよな。ほかの奴らも巻き込んじまうし、スプリンクラーに反応されたら困る。面倒は苦手なんだ。これも面倒だから、早く終わらせたい。楽しんでる風だったけど、実は結構面倒だったりする。どうする? あ~考えるのも面倒になって来た。さっさと、あいつ帰ってくれないかな。
「むむ、なんかやる気なくない?」
「ああ? ああ、ない。面倒になって来た。というか、炎出すの面倒なんだよな。なあ、帰らないか?」
だってさ~、あたしは元はコンロだぜ。いや、こういうバトル展開は好きなんだが、いざ自分がやるとなるとなんか面倒になって来た。やっぱ、こういうのは見るのが熱いよな。うん、実感した。
まあ、ほかの奴も大丈夫そうだし、こいつが帰ってくれれば何の問題もないんだし。
「それもそうにゃ、うちも面倒嫌いやし。帰ろうか」
「おう、じゃな」
「じゃにゃ~」
赤猫は本当に帰って行った。おお、マジで帰ったよ。もしかして、あたし、そういう交渉の才能でもあるんじゃないか? まあ、良いやさてと、もう一風呂入ってくるかねえ。
「って、あれ? これで、あたしの出番終わり? こんなんでよかったのかなおい」
どうしてこうなった……