第二十九話 サクミ戦う
紫髪の少女がわたしを掴んだまま持ち上げる。そして、そのまま浴槽に投げ込んだ。落ちた衝撃の水柱が天井にまで届いた。紫髪の少女は力を抜いてゆっくりと浴槽に近づいていく。
ざばあとわたしは湯から出る。目の前には紫髪の女。力では勝てそうにない。唯一の自慢だったが元が違うようです。それでも、諦めるという選択肢はわたしにはないです。透に無事な姿で会わなければこの旅行が台無しになるのだから。
「よくもやってくれたですね」
「ミズニナゲタカラブジ?」
「実力ですよ」
「ソウ、ナラマダ、アソベル」
それだけは勘弁してほしいですよ。だって、勝ち目なさそうなんでよ。でもまあ、頭はわたしの方がよさそうなので、何とかなるかもしれません。まあ、何とかするんですけどね。
「わたしは勘弁してほしいですねっ!!」
お返しとばかりにその無駄にウェーブのかかった目がちかちかする紫色の髪を掴んで湯船に叩き込む。おお、軽い。まあ、わたしも人のこと言えないほど軽いんですけどねっと!!
ザバーンと大きな音を立てて紫の少女ええい、面倒なので紫です。紫が湯船に沈ん見ました。その間にわたしは上がります。結構あの湯船って深いんですよ。本当にどうしてこれくらい深いのかってくらい深いんです。
おそらく紫も足は着かないはずです。わたしも足つきませんでしたからね。だから、泳げない奴は沈みます。あの紫は泳げないような気がしたので。沈めてみました。これでうまくいけば終わりですけど。
「まあ、そうは行きませんよね」
妖怪のごとくあがってきました。いったいどうやってあがってきたのやら。後で見たのですが、どうやら、あれです、壁に指を刺して上がってきたそうです。怪力ワロタです。わたしもやれば出来るのでしょうか? 洗濯バサミの仕事越えてますよねこれ。
「ヨクモヤッタナ」
「お返しですよ」
「ソウカ、ジャア、ワタシモ」
ふっ、そうはいかないのですよ低脳。跳びかかってくる紫。ただ、一直線に向かってくるだけではわたしを倒すことは出来ないということを教えてやるです。
「目潰し!!」
「ギャアアアアア」
何をやったかというかは、単純なことです。シャンプーを相手の目の中に入れただけです。うん、危険ですね。ちょっと、やりすぎた感がありますがわたしも死にたくはないので本気でやりたいと思いますよ。そのまま、目を押さえている紫の足を浮かんで、ぶん投げた。落としたのは水風呂。なんとなくあの紫は暑さに強そうだったので。
「ヒャアアアアアア」
「計画通り」
うん、効いてますね。しかもあの水風呂も冗談みたいに深いですから、また、あがって来るのに時間がかかるはずです。
「…………」
あれ、おかしいですね、あがってきません。
「…………も、もしかして、やってしまいました?」
や、やばいですよ。こんなところで、どざえもんなんて洒落になりませんって! あ、よかった浮かんできたって、はい、意識ないです!!
「や、やば!!」
さっきまで、なぜか戦っていた紫を慌てて引き上げる。見てみると、気絶してるだけみたいです。ふう、よかった。下手をすれば心臓麻痺ですよ。まあ、いいですか。勝ったのでよしとしましょう。さてと、ほかの人は大丈夫でしょうか。