第二十八話 温泉
「ふう、良い湯だった」
僕はマッサージ椅子に座りながらくつろいでいた。
は? 何でもう、あがってるんだって? きちんと描写しろって? いや、男の風呂を見て何が楽しいんだよ。何、違う? あいつらの風呂の描写を書けって?
まあ待て、あせるなよ。焦ったら良いことないって作者が言ってる。この後きちんとやるはずだから、というか期待するなよ。何もないから。というか、普通に風呂はいるだけなんだから、何もないぞ。あるほうがおかしい。まあ、変な音が響いていた気がするが、それだけだ。何もそんなお前たちが期待するようなことはなかったと思うぞ。それでも見たいのか?
わかった、お前たちの意思は固いらしい。どうなっても知らないからな。ふう、って、何で僕がこんなものを読まなきゃいけないんだよ。
「主人公だから」
お前誰?
「神」
は?
「それでは、始まり始まり~」
ちょっと待ておい。というか、こういうのって普通前書きとかだろー。
****side三人称。
キクたちが大浴場に入ってきた。大理石で作られた無駄に高級感あふれる風呂である。近くの源泉から温泉を引いているので、中々な湯であろうことが予想できる。
「うわ~、すごいね~。家のお風呂より広いよ~」
はしゃぐシルが言う。そのまま走って浴槽に飛び込みそうな勢いであった。それをキクがとめる。
「駄目ですよ。まずは、体を洗わないと、最低限のマナーです」
「えへへ、そっか~」
そのまま浴槽に入ろうとしたトウカがそれを聞いて誰にも気づかれないように動きを止めて、自然な動作で体を洗いに行った。若干いつもの無表情が赤くなっている。
そこら辺を詳しく描写すると面倒なことになるのでカット。見たいと言われても無理ですので、悪しからず。というわけで全員、湯船に浸かる。
『ふう~』
ゆる~い声のハミング。
「ふえ~、気持ちいねえ、まったく。少しぬるい気がするけどよ」
「エミおねえちゃん、間違っても炎は出さないでよね」
「そうですよ。ただでさえ、わたしたちにとっては熱いんですから」
シルとサクミがエミを嗜める。
「わかってるよ」
「じゃあ、冷やす?」
「いや、トウカさん。それも駄目ですよ」
「キクの言うとおりアル。他の人も来るアルから。きちんとしてないと駄目アル」
氷を出しそうな勢いのトウカをキクと美鈴が止める。
「よっしゃ、サウナ行くでティー」
「…………いや」
「そうか、そうか。行きたいか」
「…………ちが」
「わかっとるで、めっちゃ熱いととこやな!!」
「…………」
ライにティーが強引にサウナへと連れて行かれた。ライはまったく話を聞かないで、強引に連れ出したので、サウナに入った途端、ティーに殴られていた。そんな様子をキクたちは微笑ましげに見ていた。殴ったティーだが、どうやら、サウナを気に入ったようで、満喫していた。
「ふう、しかし、たまにはこういうことも楽しいですね」
キクが呟く。
「そうだなあ。で、透は今頃何してんだろうな?」
「隣でお風呂入っているはずですよ」
「見に行くか」
「無理でしょエミ」
そんな話をしていると、新たな女性客の一団がやって来た。それは、先程、透が変態を蹴り飛ばした時に遭遇したアニメ色の髪をした集団だった。それは、キクたちにも言えるのでキクたちは気にしなかった。ただ、おかしな気配を感じていた。何か、自分たちを同じような。
キクたちはそれが何だか図りかねていた。
「あら、そこの小娘は気がついたようですわねぇ」
そのとき、金髪の少女が言った。ティーが金髪の少女を睨みつけている。敵意を込めて。
「おいおい、ティーどうしたんだ?」
「…………敵」
「何?」
エミが動く前に、紫髪の少女が動いていた。サクミとっさに飛び出し、紫髪の少女を抑える。
「うぐ、な!! わたしよりも力が強い!?」
「センタクバサミゴトキガワタシニカテルワケガナイ」
紫髪の少女と、サクミが膠着状態になる。
「おい、てめえら!」
エミがそれに加勢しようとしに動くといきなり目の前に猫のような雰囲気のある赤髪の少女が現れた。
「!!?」
「ニャハハハ、あんたの相手はうち」
その状況を見たキク、シル、トウカが動く。
「助けを呼ぶべき」
「そうだね」
キクと、シルそれとトウカが風呂から上がり、助けを呼ぶために外に出ようとすると目の前にコバルトブルーの髪の少女が立ちふさがる。
「…………行かせない」
それをサウナから出て物陰から見ているティーとライ。
「あちゃ~これはまずいで、どないする」
「…………キャラ被り、それより、後ろ」
「へ?」
閃光が煌めいた。
「どあああ!!」
慌てて避けるライ。
「危ないな!!」
「うるさいわね!! 騒ぐな! 私はどうでもいいのに連れ出されて切れてんのよ!!」
茶髪ショートヘアの少女が二人の後ろに立っていた。
「あらあら、楽しいことになってきたわねぇ。ねえ、天井に入る居ている奴もそう思わないぃ」
金髪の少女が天井に張り付いていた美鈴に言った。美鈴が飛び降りてくる。
「…………気がつかれたアルか」
「そんなに殺気がでてればねぇ」
「そうでアルか」
「さあ、遊びましょう」
風呂場で突然の乱入者との遊びが始まった。
今回なんかやりすぎた感があるようなないような。
な、ないよね? 大丈夫だよね?