第二十二話 鍵なのか?
目を開けると、見慣れたリビングと、モノたちが居た。戻ってきたようだが……。時計を確認する。本を開けたときから、まったく進んでいなかった。あれほど、色々話したがやはり、おかしな現象がおきていたようだ。
「お兄ちゃん?」
シルが微動だにしない僕の顔を心配そうに覗き込んできた。
「あ、ああ、大丈夫だ。ちょっとな」
「そう? 大丈夫?」
「大丈夫だよ」
とりあえず、あのことを話すのは、今はやめておこう。それに、こいつらは知っているのかもしれないしな。今は、この本を見るのが先だ。
「さてと、何が書かれているのかな」
いつもどおりに振舞って、本を見る。
『え?』
全員が驚く、いや、見えていないティー以外が驚いた。そこには何もかかれていなかった。白紙、全てのページが白紙であった。いくらページをめくっても、何もかかれてなどいなかった。
「え、なにこれ?」
「おかしいですね」
シルがぺらぺらとページをめくる、それを横で見ながらサクミが言った。
「…………?」
目が見えていないティーが首をかしげる。ティーにキクが説明する。
「えっと、本なのに何も書かれていないんですよ」
「…………おかしい」
キクの説明で納得して頷くティー。
「ま、まさかこれは!?」
「ライ、なにかわかったのか!?」
「いや、なにもわからへん」
ちょっと空気が悪くなった。
「おい」
「い、いや~、ちょっと場を和ませようかと」
別に和ませんでいい。それを言う気力もなくした。とりあえず、どうしようこれ。
「凍らせてみる?」
「いや、トウカそれはやめよう」
もっと読めなくなる。
「あぶりだしかもしれねえぜ! 燃やそうぜ!!」
「待て!! お前じゃ完全に炭になる!! ってああー!!」
エミが出した炎が本を直撃。本が炎に包まれる――と思った瞬間、炎が消えた。
「え?」
炎が本に触れた瞬間、炎が掻き消えた。本はまったくの無傷。こげた後も何もない。燃えもしていない。
「これはどういうことだ」
燃えない本だなんてありえない。いや、確かに僕の周りではありえないことが現在進行形でおきているが、これはない。世界の物理法則を完全に無視している。ありえてはいけないことが起きた。
「エミ、オマエ、何かしたアルか?」
美鈴がエミの仕業ではないのかとエミに聞く。確かに、エミが何かしたのならそれで説明が出来るからな。
「あ? あたしはなんもしてねえぜ、トウカじゃねえのか?」
エミの炎に対抗できるとすれば、この面子の中ではトウカだけだ。だが、それなら、氷が残るだろ。いや、一瞬で解けたのなら、わからんでもないけど。本は濡れてないし。
「違う」
案の定、トウカは首を横に振った。つまり、この本が燃えなかったのは、正真正銘、この本の力ということになる。
『…………』
一同が黙り込んだ。この本をどう扱うべきかまったくわからない。というか、これくらい説明しておいてほしかったよ銀二。
「はあ~、わからないことを永遠考え込んでも仕方ない。とりあえず、この本はなにやら、重要そうだから、厳重に締まっておこう」
そのほうがいい、無駄にどこかにもって行ったりして、誰かに盗まれでもしたらやばいだろう。いや、こんな本誰が盗むんだって話だが。念には念を入れておこう。
「ですね。どういうものかは、わかりませんが、とにかくこれは護らなければいけないと私は思います」
「シルも~!」
キクとシルだけでなく、他のみんなも同じ意見らしい。僕もその意見には賛成だから、いいな。
「じゃあ、閉まっておこう」
本を部屋に持っていく。
「…………これが鍵なのか……」
その呟きに銀二も、他の誰も答えてはくれなかった。