第十八話 開本
「それで、姉さんは結局のところ何をしに来たの?」
モノたちを紹介し終えたあと落ち着いたところで姉さんに聞く。
「言ったでしょ。様子見に来たの」
「それなら電話でもいいだろし。去年は連絡しなくても来なかったし」
それなのに今年はなぜか姉さんが来た。きっと何か理由があるのだ。
「まあ、透ならそういうと思ってたけど。今回はこれよ」
姉さんが胸の谷間から鍵を取り出す。なんてとこにいれてんだあんたは。
「だって、ここなら盗まれないでしょ」
そういう問題ではない。というか盗まれなくても落としたらどうするんだよ。
「大丈夫。落ちるわけないわよ」
まあ、そうですね。ボリュームがすごいですもんね。
「で、何の鍵? というかなぜに鍵もってきたの?」
「んっとね、透は叔父様のこと覚えてる?」
「確か小さい頃に何回かだけ会ったことあるよ。けどそのあとすぐに亡くなったし。あまり覚えてないな」
僕の叔父は骨董品の収集家だったようで。珍しいものを集めてはコレクションしていたらしい。それに物持ちが物凄くよかったらしくどんなものでも大切に使っていたそうだ。僕のその辺りの性格は叔父譲りだと親戚からはよく言われる。
「そうね。でね、亡くなったときは当然遺言があるでしょ」
「そりゃ当然だね」
「それで、遺言の中に今日この日にこの鍵を透に届けるようにって書いてあったのよ」
それで様子見ついでに届けにきたってわけか。
「だから、はい、これ」
姉さんから鍵を受け取る。黒くて古い鍵だ。よく映画とかで城の鍵とかで出てきそうなやつ。
「さて、じゃあ目的も果たしたし。あたし帰るね」
「部屋あるから。泊まってけばいいのに」
「そうしたいのはやまやまだけど」
ウインクする姉さん。
「これから、合コンなの~」
へ~珍しいな姉さんそういうの興味なさそうにしてるのに。
「う~ん、どうしてもって頼まれちゃってね~。大丈夫。あたしは常に透のものだから」
「謹んでお断りします」
姉さんは負担にしか鳴らないと思うからな。
「まったく照れちゃって。じゃあ、行くわね」
姉さんはそそくさと出て行った。そしてすぐ戻ってきた。
「そうそう、近々父さんたちが迎えに来るからって」
「は!?」
「伝えたからね」
そしてまたすぐ出て行った。
「ちょっとどういうことだよ!!」
すぐに追いかけたが姉さんの姿は既に消えていた。
「早いよまったく」
とりあえず来る前には連絡があるだろうからそのときに考えよう。まずはこの鍵だ。なんとなくうちにあるものでこの鍵が合致するのはあれしかない。
「お兄ちゃんのお姉ちゃん凄い人だね」
シルが言った。
「嵐みたいだったよ」
「そうだな、まあ、人前だからあの程度なんだけどな」
「ということは普段はもっとすごいと思っていいんです?」
サクミが言ったので頷く。
「恐ろしいです」
「そうか? あたしとしては面白かったけどな」
エミからしたらタイプ同じだろうからな。
「それよりも透さん先程の鍵は」
「ああ、たぶんキクが思っている通りあの本の鍵と思う」
それ以外に思いつくものはない。どこかの隠し部屋の鍵とか言われたらどうしようもないけど。
「試してみたら」
トウカの言うとおりまずは試さないとな。
「ほれ、モテキタアル」
美鈴があの本を持ってきてくれた。
「よし、開けてみるぞ」
リビングのテーブルの上に本を置き鍵を鍵穴に差込回した。
ガチャリと何かが開く音と共に僕の視界は全て白で埋め尽くされた。