第十七話 モノたちもやれば出来るんです
リビングへ僕は姉さんともに恐れおののきながら向かった。ちゃんとごまかせるような状態になっているのか心配だ。物凄く。これでごまかせる状態でなかった場合僕は死ぬな。今のうちに遺書でも書いておこうか。いや、とりあえず聞いていたと思うティーを信じよう。うん。よし。
「透どうかしたの? さっきから様子おかしいけど」
「い、いや、別におかしくないよ」
「そう?」
ふう、危ない。落ち着こう。こういうのは僕が落ちついてないと駄目なんだ。
「それで何人いるの?」
「えっと八人かな」
「へ~」
そしてリビングに入る。
「あら、どなたですか?」
キクが入ってきた僕と姉さんを見て言った。そこにはキクとシルしか居なかった。どうやら、自分の部屋に戻ったようだ。さて、どうするんだろうか。
「どうも、透の姉の望月優香です」
「ああ、大家さんのお姉さんですかどうも。私は白木野菊と申します。この子は詩瑠で私の娘です。ほら、詩瑠挨拶」
「は、はじめまして」
シルはキクの影に隠れながら言った。親子設定か。うん、あってる。適任だよ。まあ。きついと思うけど。
「はじめまして、えっと、菊さんはどうして透のところに?」
「はい、夫と離婚して行くところがないところを透さんにうちに来ないかといわれておかげで路頭にまよわないですみました」
「そうなですか、アンタそういうことなら早く言いなさいよ~まったくいいことするわね」
ふう、よかったごまかせたな。なんとかなるな。この調子なら。
「お~い、透~誰か来てるのか~?」
エミがリビングに入ってきた。
「お、誰だ、その姉ちゃんは?」
「えっと姉さんだよ」
「望月優香よ」
「そっか、あたしは波佐見絵美。大学生だ。いや~、安く住めるとこがなくてさあ、困ってたところを透に拾われてな」
おお、エミもちゃんとしてる。なんか後ろでキクが睨んでるけど。めっちゃ言い聞かせたんだろうな。
「そうなんですか」
「なんです? 姉さん、なんの騒ぎです」
サクミがやって来た。
「おう、朔美。ちょうどいいとこにきたな。あの透の姉が来てるぞ」
「はあ~姉さんもう少しおとなしくしてください。ただでさえ大家の透さんには迷惑かけてるんですから」
こいつらが姉妹って結構問題なくないか? 姉さんもさすがに疑うだろ。
「いいのよ~透が迷惑するだけなんだから。どんどん迷惑かけても」
「だよな~」
「姉さん。とりあえず礼儀を知れです」
…………気がついてなかった。明らかに似てないだろ。エミ、髪赤いんだぞ気づけよ。いや、気づくな。
「まったく。ごめんなさいです大家さん」
「いいよ。いつものことだし」
話しているとトウカが入ってきた。
「こんにちわ」
「こんにちわ。あなた高校生?」
トウカが頷く。
「桃香、姉さんの望月優香だよ」
トウカに僕は姉さんを紹介する。続いてトウカも自己紹介をした。
「氷野桃香。高校二年」
「そうなんだ~。透と同級生なんだ」
「そんなとこ」
うまくごまかしてくれている。助かるよ本当に。このままばれないでいてほしい。
「へ~、あんたこんな可愛い子がいてなにもしてないとかおかしくない?」
いや、してたら姉さんが僕を殺す的なこといってませんでしたか?
「ただいまアルー!!」
話していると美鈴の声が響いてきた。どうやって外に出たんだ? 玄関で姉さんと話しているときには気づかなかったぞ。
「お、オオヤの姉貴アルカ? ワタシ美鈴言うね。中国から来たアル」
「へえ、留学生なんだ」
「そうアル。金なくて困ってるとこ助けてもらったアル」
「そうなんだ。ってことは中華料理食べ放題!?」
姉さん……もっとほかに聞くことというか食いつくとこあるでしょうに。
「確かに台所は週に二回は担当してるアル」
「うらやましいぞ透~」
「やめろ、小突くな」
姉さんから小突かれているとライとティーがやって来た。この一番説しずらい二人をどうするのだろうか。とりあえずティーはゴーグルをどこかにおいてきたらしい。いまは持っていない。
「なんやなんや、楽しいそなことになっとるな~」
「…………誰?」
ティーとライだけど一体どんな名前になっているのだろうか。というか明らかに日本人ではないけど留学生にするのか?
「おお、透の姉貴やな。うちはライ・トワイライト。関西人や!! で、こっちの無口なのがティー・レイデオうちの相方や」
「……ナデヤネン」
…………。物凄いものを僕は見ている気がする。というかティー物凄い棒読みだなおい。
「まさか、芸人がいるなんて!?」
姉さんの頭はいったいどうなっているんでしょうねえ。
「とまあ、そんな冗談はさておき。透から話は聞いとるで!!」
「…………」
なんか色々あったがとりあえずこれで全員紹介できたな。
「これで全員だよ」
「アンタもお人よしよね」
「うるさいよ。それは自覚してる」
まあ、普通の理由ではないし。もともと全員うちにいたんだけどね。姉さんも見たことあると思うんだけどね。こうなる前は。
「まあ、でも、安心した。悪い人かも知れないと思ったけどみんな良い人みたいだし」
「そうだよ、みんな良い人たちだよ。だから、何も心配することなんてないよ」
「そうね」
こうして無事なんとかモノたちの正体がバレることなく僕の命も無事に紹介し終えたのであった。やるときはきちんとできるんだなと実感した。