第十六話 魔書? そして姉現る
そろそろストックがなくなってきた……。
僕は意を決してリビングへと突入した。そこはまさに人がみてばいけない領域だった。そしてこの世界の言葉で表す最もな言葉は阿鼻叫喚の地獄――ではなくただの桃色空間だった。
僕は絶句した。何があったのはわからない。ただ唯一言うのならまさしくそこは人が見るには早すぎる光景だと言うことだ。
そんな異世界と僕は戦った。つらく長く厳しいわけではい戦いだった。そして目的である自己紹介を行ったのだった。
今は全員リビングのソファーに座りとくに僕の周りでリラックスしたかのようにしている。
が実は全員気力切れで死んでいただけだが。
「あ!」
そんなときキクが声を上げた。
「どうした?」
「忘れていました。透さんに見せるものがあるんでした」
キクが客間に入っていって古びた革表紙の本を持ってきた。
「これが物置から出てきたのです」
本は鍵がつけられ厳重に封印されていた。
「いったいなにがかかれてるんだ?」
「わかりません」
まあ、こんな風に厳重に封印されてたらわからないよな。
「う~ん。鍵とか一緒に置いてなかったのか?」
「はい、これだけでした」
どうしようもないな。鍵がないんじゃ読むこと出来ないし。
「う~ん、どうしようもないな」
「左様ですか。なら処分しますか?」
「いや、持っておこう。大事なものだと思うし」
ピンポーン。
その時チャイムがなった。
「ん、誰だ?」
誰か来たみたいだ。
「じゃあ、ちょっと出てくる。ここにいてくれよ」
「はい」
僕は立ち上がり玄関へと行く。
「は~い」
扉を開けるといきなり僕の前が暗くなった。
「ふご!!」
そこで誰かに抱きしめられたということに気がついた。やわらかい感触が顔面を覆う。
「も~会いたかったわ~透~!!」
こ、この声は!?
「ちょ、離せ!! 息が!!」
「あ、ごめんごめん~」
ようやく僕は解放された。
「ふう、何しに来たんだよ。姉さん」
このスタイルの良すぎな女は僕の実の姉、望月優香。マイペースでブラコンである。やめてほしいものだけど。
「何ってまったく連絡をくれないんだもん。お父さんたちも心配してんだよ」
色々あって確かにこの頃連絡は出来ていなかったから何も言えないな。
「色々あったんだよ」
「ふ~ん、で、透から知らない女の子の匂いがしてるんだけど色々ってそれに関係ある?」
「な、何のことだ?」
匂いがわかるってどんな嗅覚だ。犬かよ。…………でも、そうだな紹介するなら今だな。
「まあ、連絡できなかったことに関係がある」
「そう……怒らないから言って見なさい」
いやいや、もう怒ってるじゃん。顔は笑ってるけどまったく目が笑ってないよ。これは確実に姉ちゃんは怒っているときの反応だ。
「えっと、そうだね。…………ほら、ここ民宿だったじゃん」
「そうね……だから?」
やばい、物凄く怖い。でも言わなくちゃ。たぶんティーがこれを聞いてるはずだから状況は向こうに伝わってるはず。そしたらキクが何とかしてくれるはず。とにかくしてくれなければ僕が終わる。
「だから……受け入れたんだよね」
「何を?」
わかってるくせに。やっぱり自分で言わなきゃいけないんだな。
「入居者……」
ヒュン!!
言った瞬間僕の頬を何かが掠めた。それがナイフだとわかるまでに一秒くらいかかった。
「え……」
何もいえなくなった。姉さんが僕の首筋にナイフを突き立てていたからだ。……やばい、ヤンデレだよ。これ。話に聞いたヤンデレだよこれ!! たぶん。
「ねえ、それ、どういうこと……つまり、今アンタその何人かの女の子と暮らしてるってことでしょ……?」
黙って頷く。事実だし隠しても意味がない。てか、もう全部わかっているはずだ。
「ま、まあ、そうなるかな」
「ふ~ん」
こ、怖い。これは死ぬかも。
「何で、隠してたわけ」
「いや、隠してたわけじゃないよ。ちょっと忙しくて連絡できなかっただけでそれに困ってる人たちだったし…………」
「…………」
姉さんがナイフを引く。た、助かったのか?
「はあ~まあ、透の性格を考えたら頼まれたら断れないだろうし。透なら何も出来ないだろうし」
「そうそう!!」
あまり肯定はしたくないけれど今回ばかりはしかたない。
「それで、紹介してくれるんでしょ」
「うん、紹介するよ。じゃあ、上がって」
「ほ~い、おっじゃましま~す」
ふう、なんとか恐ろしいプレッシャーから解放された。とりあえずリビングヘと姉さんと共に向かったのだった。