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モノもち  作者: テイク
第一章 現れるモノ
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第一話 出会い

 季節は夏、7月21日。夏休み初日だ。太陽が熱心に地面を照らし地球温暖化の影響もあり気温が上がりに上がった日。こんな日は家の中でエアコンに当たって涼むのが常識だが僕は今外でアスファルト舗装路という夏と相性最悪の道を歩いていた。


「あち~」


 ここは砂漠なのではないかと言うくらい暑い。


「地球温暖化マジでなんとかしないとな」


 そんな事を考えてしまう暑さの中どこに向かっているのかと言うと僕がひいきにしている古道具屋の古幻堂に向かっているのだ。僕が古幻堂をひいきにするのは品揃えが豊富で尚且つ安いからだ。


 言っておくが古幻堂に来るのは僕が貧乏だからではない。むしろ逆だ。僕の家はお金持ちである。今は僕は実家から遠い高校に通っているので一人暮らしだが仕送りは余りある程だ。


 そうこうしている間に古幻堂についた。早くこの暑さから逃れたくて古幻堂の中に駆け込む。中は冷房のきいた快適空間だった。それと同時に古道具の匂いがする。店内は薄暗い。


「こんにちは源さん」

「おお、透君かいらっしゃい」


 店の奥のカウンターに座っている白髪の老人が店長の源さんだ。97歳なのだがバリバリ元気な町内で有名な老人。


「何か新しい物は入りましたか?」

「そうだな~。その辺のタンスは昨日入った奴じゃ」


 入り口付近に置かれたタンスを見る。所々傷があるが使えない程じゃない。いい木を使ってるようだし。


「勿体ないな~」

「本当に透君は今時珍しい子じゃな。今時の子供はすぐ新しい物を欲しがる。なのに透君は違う。なぜじゃ?」

「いつも言ってるでしょ源さん。まだ、使えるのに使われずに朽ちていくのは物が可哀想だって」


 このタンスだってまだ使えるのに可哀想だ。


「そうじゃったそうじゃっな。それで今日は何を探しに来たんじゃ?」

「本棚が欲しいんだ」

「本棚か、確かあそこじゃ」


 源さんの指差した所に行く。古い本棚がいくつかあった。まだどれも充分に使える。


「でもデカいな」


 これじゃ持って帰れない。


「何儂が運んでやるから安心せい」

「助かります。じゃあこの黒いのを貰います。幾らですか?」

「いつもひいきにしてもらっとるからな配達代も込みで二千円じゃ」

「ありがとうございます。はい二千円」

「毎度。では、行くとするかの」


 源さんが本棚を持ち上げた。本当この人が97歳とは思えない光景だ。源さんは本棚を外にだしリアカーに乗せた。


「お前さんも乗りな」

「でも」

「いいから」

「はあ」


 源さんに言われた通りリアカーに乗る。


「しっかりつかまっておくんじゃぞ」


 わけのわからないまま源さんの指示に従う。


「出発じゃ」


 物凄い速度でリアカーが発進した。例えるなら某スペースなアミューズメントパークのザターンの発進とほぼ同じ感じた。これ何人の人がわかるのかな。


 行きは三十分かかった道のりをたった五分で源さん×リアカー+本棚+僕は走破してしまった。本当源さんは凄い人だ。


「ふい~、着いたぞい」

「ありがとうございます」

「で、どこに持って行くんじゃ?」


 源さんが本棚を抱えながら言う。


「こっちです」


 家は一軒家だ。両親が建てた二階建ての家。その二階の僕の部屋に運んでもらった。


「ありがとうございます」

「いいんじゃよ」

「麦茶でも飲んで行きますか?」

「いや、よいよい。忙しいんでな」


 失礼だが古幻堂が忙しい所を見たことは一度もない。


「じゃあまた今度」

「ああ、おっとそうじゃ。もうすぐ始まる、ようやく始まる」

「何が始まるんですか?」

「何、直にわかる。さてといつまでも物を大切にな」


 源さんはそう言って帰って行った。


「何だったんだ? まあ、いいか」


 気にはなるが気にして何か変わるわけでもないので気にすることを止め家に入った。


****


「さて、物は心を込めて使い続ければ魂が宿る。さて、どうなるか」


 源さんがリアカーを押しながら呟いた。その後ろには数人の女性達が連れ添うように歩いていた。


****


「さてと、とりあえず片付けよう」


 部屋に散乱していた本を買ったばかりの本棚に入れる。片付け終わったのときには昼頃になっていた。


「ふう、よし。これからよろしくな」


 軽く本棚を叩きながら言った。それからリビングへ。リビングにあるのは殆ど古幻堂で買った古道具。まだまだ使える物ばかりなんだから勿体ない。別にドケチというわけじゃない使われないまま朽ちていくのが可哀想なだけだ。


「さてと昼ご飯でも作るか」


 材料を確認するために冷蔵庫を開ける。料理はそれなりに出来る。一人暮らしだからな。


「う~ん、ミートパスタでもつくろう」


 材料はパスタ、サラダ油、鷹の爪、にんにく、豚ひき肉、玉ねぎ、ピーマン、醤油、酒、トマトケチャップ、顆粒コンソメ、塩・黒こしょう、砂糖。簡単な奴だけどね。レシピは昔パソコンで調べたりした。


「さて、作るか」


 まずは下ごしらえだな。鷹の爪は種をとって輪切りにしてニンニクはみじん切りにし玉ねぎは粗みじん切り。ここでパスタを茹で始めてっと。次はフライパンに油を熱し鷹の爪とにんにくを弱火で炒め香りが立ったらひき肉を加えて中火で炒める。火が通ったら玉ねぎを加えて炒め醤油、酒、トマトケチャップ、顆粒コンソメ、塩・黒こしょう、砂糖を加えて炒める。茹であがったパスタをこれに加えて、よく和えて完成だ。


「よし、完成。じゃ、いただきます」


 うん、うまい。


「さてと宿題でもしよう」


 片付け終わったので宿題でもすることにする。ここで終わらせてた方が後々楽な気がする。なにか嫌な予感がするんだよね。ここで終わらせないと終わらせられなくなりそうな予感が。そんなわけはないと思うが我が家の家訓、直感にはとりあえず従えを忠実に守っておこうと思う。愛用のシャーペンを持ちはじめる。

 バキッ


「うわ」


 シャーペンがぶっ壊れた。


「クソもう寿命か」


 これ気に入ってたんだよな。小学三年生から使い続けて八年。僕の人生の半分を供に生きてきたシャーペン。それが壊れたのだ。


「…………」


 それをそっと仏壇に。これ壊れた道具専用。せめて僕だけでも供養してやろうと思ってな。つくづく変人だと思うよ。これに関しては。


「今までありがとうな」


 そう言った瞬間シャーペンからが放射される。


「うわ!!」


 目が開けられないほどの光の奔流。そしてそれが収まったときそこには女の子がいた。


「は!?」


 なにこの状況。おかしい明らかにおかしい。何があった。シャーペンが光ったと思った途端女の子が出てきた。


「あ~おにいちゃんだ!!」


 ますますわけがわからん。僕に妹なんていない。それにこんな子知らない。それにシャーペンが無くなっている。


「お、お前は誰だ?」

「誰ってさっきまでお兄ちゃんと一緒にいたじゃん」

「そんなわけないだろ。お前いなかっただろ」

「いたよ。あ~、お兄ちゃん状況わかってないよね」

「聞くまでもなくな」

「えっとわたしシャーペン」

「は!?」


 まて、コイツ今なんていったシャーペン、うん。確かにそういった。…………はあ!?


「お前人間じゃねえか。どこをどう見たらシャーペンに見えんだよ」

「うん、人間になった」

「………………はあ!?」


 人間になったってなんだそれはどんな超常現象だ。誰かここに来て説明してくれ。いや、こられたら困る。家に見知らん幼女下手すりゃ捕まる。


「えっとじゃあ、説明しますね。お兄ちゃん」

「とりあえず頼む。なっとく出来るのを」

「うん、えっとわたしはそうですね~ん 九十九神と呼ばれるものですね」

「九十九神?」

「はい、えっと確か、長年大切に使った道具には魂が宿るといいますよね。それが人間の姿をとったのがわたしです」


 …………さて、まったくわからない。ただの電波少女なのかもしれないのかもしれないし。


「だが、九十九神って普通長い年月が経ったものがなるんじゃないのか?」

「………………」

「おい」

「で、でもでも、わたしおにいちゃんのシャーペンだよ!!」

「それを証明する証拠はあるか?」


 証拠があれば信じるしかない。


「証拠? え~っとね、ん~? じゃあ、お兄ちゃんしかしらないことを言えば信じてくれる?」

「ああ」

「そうだね小学三年生のときわたしをなくした時どぶの中まで探してくれました。そしてわたしを見つけたのは自分の筆箱の中」

「なんで知ってる」


 そんなこと誰にもいったことないぞ。しかもそれが僕のミスだったことなんて誰にも言ってないぞ。


「そりゃお兄ちゃんのシャーペンだったからですよ」


 これは本当に信じるしかないようだ。


「………………酷く複雑な感じだ。自分のシャーペンと話してるのって」

「そうですね~。あ、そうだ言うの忘れてました」

「なんだ?」


 シャーペン少女が真剣な顔で言った。


「壊れるまで最後まで大切に使ってくれてありがとう」


 こう言われたときああ、こいつは本当にシャーペンだったんだなと思った。


はい、妹シャーペン登場。


なぜ妹キャラというとシャーペンが新しいものだからです。古いものほどだんだん年が上がります。次回ではもう一人擬人化するはず。でも何が擬人化するか決めてない。あれとかあれとかいいと思うんだけどな~


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