第十五話 紹介するだけで疲れる
「いや~、すまんすまん。ついな」
ライからティーとサクミを助け出したあと正気に戻ったライが言った。
「何がついだよ」
そのおかげでシル、サクミ、ティーの三人とも僕の後ろに隠れてしまっている。まあ、隠れ切れてないんだけど。
「危険です。身の危険を感じるです」
「…………」
あらら、すっかりおびえちゃってる。
「ほら、お前ら大丈夫だから出ろ。紹介できないだろ」
おずおずと三人は僕の後ろから出てきた。
「電灯のライやよろしくな~」
ライが元気に行った。
「シャーペンのシル」
「ラジオのティー」
「洗濯バサミのサクミです」
おずおずと三人も自己紹介する。
「あ~かわええ~」
「抑えろライ」
「わ、わかっとる」
抑えないとまた同じことの繰り返しだからな。でも、あまり抑えられそうにないな。
「じゃあ、ちょっと待ってろ他の奴らを呼んでくるから」
そう言ってリビングを出る。
「ああ~もう、我慢でけへん~!!」
「きゃああああ!!」
「…………」
「にょわああ!!」
三人の悲鳴が聞こえた気がするけど幻聴だろうな。うん、空耳だ。だってそんな声聞こえないし。うん、そうだ幻聴だ。………………ごめんシル、サクミ、ティー。あとでケーキ作ってやるからな。それで機嫌直るだろうし。うん、よしそうしよう。
絶え間なく聞こえてくる悲鳴を考えないように現実逃避して僕はエミたちを呼びに行った。
「お~い」
「お、なあ、見てくれよこれ」
部屋にいたエミが言う。
「なんだ?」
「これこれ」
見るとそれは。
「お前どこでそんなの拾って来た!!」
「そこのゴミ捨て場。中々いいぜ~」
エミが拾って来たのは俗に言うエロ本である。親父かお前は。てか、何で拾ってきてんだよ。
「勉強に」
「なんの勉強をするつもりだよ」
「そんなのわかってるだろ」
わかってるがそんなの信じたくないし。
「そんなことより、リビングに行ってくれ」
「お、新入りだな。行ってくるぜ」
「ああ」
さて、これでシルたちは助かるだろう。下手をすればエミとライで更に酷いことになるという可能性を完全に度外視した。
「さて、次だ次」
トウカの部屋にいく。
「トウカー?」
「なに?」
「いや、新しい家族が増えたので紹介するからリビングに行ってくれないか?」
「そう」
トウカが僕の脇を通り過ぎる。
「…………裏切ったら刺す」
物騒なことを呟いていった。
「怖!! 何、なんなの? 裏切るって何が?」
意味がわからない。
「と、とりあえず気をつけよう」
その時――。
「クールーーーー!!!」
「きゃああああああああ!!!」
意味不明な叫びと悲鳴が聞こえてきた。
「トウカの叫び声初めて聞いたな」
さて、次は美鈴だな。部屋にいるかな。台所にはいなかったし。
「お~い、美鈴!!」
返事がない。
「おかしいなどこにいるんだ?」
「あれ、何してるアル?」
「美鈴どこいたんだ? 呼んだけど返事もなかったし」
「ちょっとアル」
「そうか?」
何をしてたんだろうか。気になるが今はライのだな。
「リビングに行ってくれないか?」
「わかたアル、新入りアルネ」
「そうだ」
美鈴もリビングへとむかった。
「チャイナーー!!!」
「なにあるかあああああああ!!」
何か下で叫びとか聞こえるけど気のせいだよなたぶん。
「…………これは悪戯に被害者を増やしてるだけじゃないのか?」
…………やめよう。本当。考えるのだけはやめよう。でも、あとが怖いな。
「さて、最後はキクだな。お~いキク――すみませんでした!!」
キクの部屋のドアを開けた途端一瞬で閉めた。キクは着替え中でした。危ない危ないもう少しで見えるところだった。見えてないよ見えてない。断じて見えてないから。
「あ、あの透さん?」
「見てない、断じて見てないから」
「あ、いえ、着替え終わったので入ってきてもいいですよ」
「あ、ああ」
許可が出たので入る。キクはきちんと着替え終わっていた。まあ、当たり前だけど。気にしてないみたいだし。
「それで何か用ですか?」
「ああ、リビングに行ってくれないか?」
「新しい方ですか?」
話が早くて助かるな。他の奴らも早かったけど。
「ああ、行ってくれるか」
「はい」
キクが部屋を出て行った。
「はあ~ようやく全員呼べたよ。なんか疲れた。無駄に」
さてと、それなら僕も行かないとな。たぶん大変なことになってると思うし。
僕は階段を下りてリビングに向かった。