第十二話 バレないことを喜んでいいのかわからない
「…………うぅ」
絶賛僕は今泣きそうです。今の状況は……言いたくはないけど女装して商店街を歩いています。ちゃんとシルたちもいますよ。
「大丈夫だよ。お姉ちゃん。誰にもわからないって」
シルが言うが僕にはそんなこと信じられないんだよ。さすがに同級生にはバレると思う。
「バレないバレない」
シルはそういうがまったくそう思えない。
「大丈夫ですよ。可愛らしいですから」
キクが言う。やめてくれ可愛らしいなんていわないでくれよ。
「死にたい」
「大丈夫、可愛いから」
「トウカもかよ~」
泣きたい。でも泣いたら目立つ。目だったらばれる。板ばさみだ。もういや帰りたい。だが、エミがかえることを許してはくれない。
「とりあえずワタシは周り見てるアル誰か来たら言うアルヨ」
「美鈴……」
味方が、味方がいたよ。
「でも、トオルの級友どんなのか知らないネ」
意味ないじゃん。美鈴僕の感謝の気持ちを返してくれ。
「はあ~」
「ほらほら、そんなに落ち込まない。留守番のティーのためにもがんばらないとな」
ティーは留守番だ。盲目なのはあまり関係ないがあまり外に出したくないからというのが理由。危なっかしいから。といっても他人を心配する余裕はない。自分だとばれないようにするので一杯一杯だ。ん? まてよ、そういやあ、学校の奴ってこいつらのこと知らないじゃん。なんだ心配して損した。
「よう透!!」
「!?」
振り返るとそこには佳山葉がいた。ってばれた!?
「あれ、違った女だったって美人だ!! いや美人と美少女と美幼女だ!!!」
あ、ばれてなかった良かったって誰が美人やねん!! こいつ今度あったら覚えてろよ。
「なんですか?」
声を変えて葉に言う。
「いや、友達に雰囲気が似てたから間違えちゃって」
僕の雰囲気がそんなにわかりやすいのか?
「そうなんですか?」
「そうなんですよ。不思議と、でも、こんな美人とあんなバカを間違えるなんて俺どうかしてましたよ」
こいつ今度会ったら殺す。てか、気持ち悪い。なんで口調変わってんだよ。
「(なあ、こいつ知り合いか?)」
エミが小声で聞いてきた。
「(ああ)」
小声で返す。その時失敗を悟った。エミがにやりと笑ったからだ。
「なあ、あたしはこいつの友達でエミってんだがコイツに似てるって友達ってどんな奴なんだ?」
僕を指しながらエミが葉に聞く。
「えっと望月透って言うんですよ。そいつ」
「ちょ!?」
エミやってくれたなこいつ。エミを睨むが知らぬ顔だ。その間も葉は語っていく。
「まあ、一言で言うと変や奴ですかね。俺は長い付き合いだけど」
ほう、こいつ僕のことをそんな風に思ってたのか。また罪が増えたな。葉、覚悟しておけよ。とそんな僕の殺気に気づかずに葉は話していく。
「変な奴ね~」
エミが相槌を打つ。お前何を考えている。
「はい、変な奴ですよ。だっていつまで経っても古くなった物捨てないし。壊れても修理して使うし。どこからか壊れたものとか拾ってくるし」
「へ~」
おい、シルなんだその妙に納得な顔は。って、全員かよ。
「他にはどんな感じ?」
シルが催促する。
「今教えて上げるからね~」
コイツマジで殺してやろうか。本日何回目かの殺意を抱きながら拷問に耐える。
「でもさ、いい奴と俺は思うんだよ。だから、俺はアイツの友達なんだ」
「そうなんですか」
少しは軽くしてやるかな。
「まあ、他にも――」
その後散々人の悪口いって帰って行った。訂正だかならず殺してやる。