第十一話 掃除中にアルバムとか見つけると大抵酷い目に遭う
「お~い、シル、そこの奴とってくれ~」
「は~い」
シルが取って来たはたきで棚の上の埃を落とす。今僕達は物置のそうじと整理を行うことにし実行していたのだ。
「久しぶりだからなかなり汚いな」
本当なら頻繁に掃除したいのだが自業自得というか何というか、僕の癖のせいで物が多すぎて時間があるときしか出来ないのだ。でも、人手いやモノ手が増えたから出来るかもしれないな。
「よし、とりあえず中にあるものだしてくぞ~!」
物置の入り口近くにある物から外に出していき庭に敷いたシートの上に置いていく。いろんな物がある。
「これは掃除のしがいがありますね」
キクが目を輝かせながら言う。やはり掃除道具、掃除をするのは楽しいようだ。
「おっ! アルバムアル。アルバムをミツケタアルよ!!」
美鈴が大声で言う。ちょっと待て!!
「わ、こら待て!!」
だが、時既に遅く。エミがさっさと来てそれも見てしまった。他の奴らも続々と集まって来るし。
「へ~、アルバムね。おっ! 透の小せい頃の写真めっけ」
「本当! エミお姉ちゃんわたしにも見せて!」
「見せることを要求するです!!」
アルバムにシルとサクミが群がっている。持ってるのがエミだからか身長差で見れないのだ。やめて欲しいな。
「ほらよ」
エミがシルとサクミにアルバムを見せる。止めようとしたがティーに掴まれて止められなかった。ティーを振りほどくのは僕には無理だ。力とかじゃなくて精神的に。
「「おお」」
何だよ。何見てるんだよ。
「可愛い~! ちっちゃいお兄ちゃん可愛い~」
シルの一言が僕の心に突き刺さる。そして思い出される忌まわしき過去。
「女の子の格好してるです。可愛いです」
「昔の日本では体の弱い子に女の子の格好をさせたと聞いたことがあるアル」
そう、僕は昔両親のせいで女の子の格好をさせられていた。何故かは不明だが途中からは楽しくてやっていたらしい。それを聞いたときは初めて殺意が湧いた。
「ほら、遊んでないで掃除しましょう」
「おう、キク見て見ろよ」
エミがキクにまでアルバムを見せる。
「何です?――あらあら、本当に可愛いですね」
…………。羞恥心で死にそうだ。死因羞恥心。笑えないな。
「そうだ、実際に見て見ようぜ」
エミが言い出した。
「ちょっとまて!? 何を言い出す!!」
「良いね!」
僕の気持ちなど全くわからないシルが賛成する。
「まて、僕――むがっ!!」
ティーに口を塞がれた。言っておくが別に何もやましくないからな。期待するなよ。手で塞がれたんだ。頭一つ分以上小さいティーは縁側に乗って僕の口を塞いでいた。
「んーんー!!」
「ナイスだティー!!」
全くナイスじゃない!!
「んーんー(離してくれ)」
「……見てみたい」
僕に味方はいないのか。願いを込めてキクと美鈴を見るが――。
「ごめんなさい透さん。私も見てみたいんです」
「ワタシもアル」
常識人ぽい二人もダメだった。ならトウカは。
「どっちかと言われたら見てみたい」
完全にアウェーだ。なんとか抵抗しようとするのだが。全員に押さえられた。だが、女装道具はないはず。
「エミお姉ちゃん。かつら見つけたよ!!」
シルが余計な物を見つけ出したきた。
「服は私かキクのでいいな」
「そうですね。化粧品もありますし」
マジでやばくないか。ちょっと考え直せみんな。ティーは心を読めるはすだが全く聞いてくれない。
「じゃあ脱がせるアル」
「行くよ」
トウカと美鈴が服を脱がしにかかる。口を塞がれたさらにエミやキクに体を押さえられた僕に抵抗する事は出来なかった。
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「こ、これは!?」
顔を真っ赤にして驚くキク。
「凄いよお兄ちゃん」
僕を誉めるシル。
「驚き」
珍しく驚いているトウカ。
「すごいアルネ。人は見かけによらないアル」
どこかズレながら驚く美鈴。
「ヤバいな。とりあえず写真だ写真」
カメラを探すエミ。やめてくれ。
「…………可愛い」
見えてないティーはペタペタ体を触ってから言った。
「なんか負けたような気がする」
サクミが呟く。
「うぅ……」
キクたちの目の前には薄手の黒の長袖にジーパンを着た。腰まである黒髪の美少女が涙目でへたり込んでいた。……………………………………僕だった。
「……うぅ、酷い」
恨みを込めてキクたちを見る。
「し、シャレにならないですね」
「ち、ちょっとふざけすぎたか」
キクとエミが僕を見ながら言う。正直自分のこんな姿なんか見たくない。
「お兄ちゃん可愛いよ。自信持っていいよ!!」
「シル、これならお姉ちゃんですよ」
「それもそうだね」
そうだねじゃないよ。自信なんて持ちたくないよ。そしてサクミ誰が姉やねん。
「うぅ」
もう、泣きたくなってきた。
「可愛いアルネ~」
「可愛い」
美鈴とトウカそれ以上言わないでくれよ。死にたくなる。
「うぅ、もう、いいか?」
「ん~よし、じゃあ、行くか」
エミが笑顔で言う。
「ちょっとまて、どこに行く気だ!!」
「ふっふっふ、外へだ!!」
「ちょっ!! やめろ!!」
無理矢理外へと連れ出された。掃除するんじゃなかったのかよと言う暇はなかった。