第十話 ラジオ現る
また、今度はすごいのが出てきたな。ゴーグルが顔のほとんどを覆っていてその表情はまったくわからない。ちなみにゴーグルはとある○術の○書○録に出てくるクローンの御○妹のかけているアレの真っ白バージョンだ。よく似ている。
「…………最後まで……ありがとう」
澄んだ小さな声でそういった。
「あ、ああ」
「…………」
「えっと、名前だよな」
なんにしようかな。
「そうだなお前はティーだ」
正直なんとなくだ。
「…………了承した。マイマスター」
「それで少し聞きたいんだけどそのゴーグルは何のためにしてるんだ?」
「………………目隠し」
「目隠し?」
何で目隠しする必要があるんだよ。それじゃあそのゴーグル役に立たなくないか? そう聞こうと声を出そうとすると。
「目が見えないから」
とティーは言った。僕は声になんて出していない。心でも読めるのか?
コクリ
ティーが頷いた。
「……それって能力か?」
再び頷くと――。
「…………ラジオだから受信して……聞かせるのが仕事……だから」
「そうか」
やはりモノたちは擬人化すると能力が上がるようだ。まあ、あまり人に害はなさそうなので気にしないでおこう。
「なあ、顔見せてもらってもいいか?」
盲目なのには驚いたが口元とかで判断するに結構可愛いと思う。一度はみておきたい。
「…………それは命令?」
「命令じゃないよ。お願いだよ」
「………………了承」
ゴーグルに手をかけるティー。そしてそれをはずした。
「…………」
この三点リーダーは僕。ゴーグルを取りあらわになった淡い紅色の瞳が僕を見つめる。全体を見たティーの顔はどこか儚げな美しさがあった。純粋に綺麗だと思った。
「…………どこか変?」
「いや、変じゃないよ。綺麗だと思うよ」
「…………そう…………もう、戻していい?」
「ああ」
ティーがゴーグルを元に戻そうとする。少し名残惜しいというか残念だな。
「…………ゴーグルはないほうがいい?」
「そうだな。ないほうがいいかもな」
盲目だけど見た目じゃわからないし。
「…………そう」
ティーは戻しかけたゴーグルを首にかける。重くないのだろうか。
「………………いい?」
「ああ」
でも、やっぱり顔は見えてたほうがいいな。
「…………そう」
表情は変わらないが喜んでいるのがわかる。
「おう、透終わったみたいだぜ!」
エミ再び登場。お説教は終わったようだな。
「あと、時間がなかったから昼は美鈴が作ったぜ」
「ああ、悪いな」
そこでエミがティーに気がついた。
「お! また新入りじゃねえか」
「ああ、ティーっていうんだ」
「そっかそっか、あたしはエミだよろしくな」
「…………よろしく」
「それにしてもけったいなゴーグル持ってんだな。なんだそりゃ?」
なんと答える気だろうか。もう、目隠しとは言えないし。てかさっきまでのは目隠しでよかったのか?
「…………趣味」
趣味にしたようだ。
「へ~いい趣味してんじゃん」
「…………そう」
「さてとじゃあ、下行くか」
下に降りる。中華のいいにおいがする。
「………………いいにおい」
ティーは視覚がない代わりに他の感覚が強いからよくわかるだろう。
「アイヤー。透さん悪いけど昼は作ってしまたアルヨ」
「ああ、いいよ。正直な話助かる」
「そう言ってくれると嬉しいアル。そっちの子は新入りアルか?」
「ああ、ティーだ」
「ワタシ美鈴ネ。ヨロシクアル」
「…………よろしく」
リビングに入るとソファーの上でシルとサクミが落ち込んでいた。
「大丈夫か二人とも?」
「あうううあ、キクおねえちゃんが怖いよ~」
「お、怒らせないようにするです」
キクに色々トラウマを植えつけられたみたいだな。
「まあいい。ほら二人共新入りのティーだ」
「…………よろしく」
「よろしく~、あ~また増えてるよ~」
「またですか!! わたしが出てきたあとにすぐですか!!」
「歓迎してあげろよ!!」
「冗談です~」
「そうか?」
「そうです~」
う~ん、大丈夫か? 冗談にまったく聞こえなかったぞ。
トウカがリビングに入ってきた。
「知らない子がいる。どこからさらってきたの?」
「さらってない!!」
「じゃあ、誰?」
「元ラジオのティーだよ」
「そう、ワタシは元冷蔵庫のトウカ。よろしく」
「………………よろしく」
そのままトウカはソファーへ。
「あらあら、またにぎやかになりましたね」
「ああ、キク。何か機嫌がよさそうだね」
「ええ、うふふ」
ああ~ストレスたまってたのかな。
「と、とりあえず食事にしよう」
「そうですね」
サクミとティーを加えさらににぎやかになった食卓で昼食を食べた。