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解釈違いです、公爵様!〜予見を理由に婚約破棄されたので、推しと一緒に汚名返上の旅に出ます〜  作者: 河津田 眞紀@第一回Nola原作大賞早期受賞×2作


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6. 予見のやり直し



 ――パーティーは最悪な空気のままお開きとなり、屋敷には私とお父様とウェイド様だけが残った。


 せっかく決まった婚約がこんな形で破棄されてしまい、お父様はひどく憔悴していた。


「ごめんなさい、お父様。こんなことになってしまって……」


 心なしか小さく見えるその背中に手を添え、私は今一度謝罪する。

 するとお父様は顔を上げ、優しく目を細め、


「いいや、テスティアのせいではない。あの予見は、きっと何かの間違いだろう。竜という存在はとうの昔に滅んでいるのだから……唆されること自体、不可能なはずだ」


 と、いつものように私を励ましてくれた。

 その愛情に胸を痛めながら、私は頷く。


「えぇ、私もそう思います。精霊獣と同じく、竜も竜魔戦争以降、姿を消した……何かの比喩でもない限り、あの予見が実現することはあり得ません」


 しかし、だからこそ不可解だと、私は胸中で続ける。

 仮にあの予見が私を陥れるための嘘だとしたら、どうして非現実的な竜を引き合いに出したのだろう?

 やはり『竜』というのは比喩で、別の何かを指している……?


 ……いや、考えていても仕方がない。

 私に突き付けられた予見が、嘘が真か。

 とにかく今は、これを明らかにしなくてはならない。


 と、その時。

 ラージウィング家のウェイド様が、私を見下ろし、


「君の運命は、俺が詠む。予見の真偽に口を挟んだのは俺だからな。最後まで責任を持って、真実を明らかにしよう」


 と、琥珀色の瞳で、真っ直ぐに言った。


 その瞬間、心臓がドキッと跳ねる。

 あらためて見ても、やっぱりジーク様そのもの……凛々しいお顔も、耳に響く低い声も、まるで小説の中から抜け出してきたみたい。

 

 ……だめだ、カッコ良すぎて直視できない!

 もう、こんなことで悶えている場合じゃないのに!


「あ……ありがとう、ございます」


 私が目を逸らしながらお礼を述べると、お父様が続けて、


「ウェイド殿が直々に<星詠み>を……? しかし、その……失礼だが、貴殿には予見する能力がないのでは……?」


 と、言葉を選ぶように聞き返した。

 それを聞き、私もハッとなる。


 そうだ。この人は無能力――"眼無し"であると、さっきディオニスが言っていたのだった。

 だから私も、ウェイド様個人ではなく()()()()()()()()()予見をしてほしいと依頼したわけで……


 私たちが疑問の眼差しを向けると、ウェイド様は「あぁ」と言って、


「確かに、俺は『降眼(こうげん)の声』を受けたことがない。しかし、<星詠みの眼(へルシファー)>に伝わる儀式をおこなえば、俺にも予見ができる」

「儀式……?」

「こうげんの声……?」


 首を傾げる私とお父様。

 ウェイド様は落ち着いた声音で一つ一つ答えてくれる。


「『降眼(こうげん)の声』とは、<星詠みの眼(へルシファー)>の脳裏に偶発的に降ってくる予見のことだ。恐らくディオニスが受けた予見は、この偶発的なものだろう。だから正式な証書を持ち合わせていなかった。そして儀式とは、竜華結晶(りゅうがけっしょう)を用いて行う『星詠みの儀』のこと。無作為な『降眼(こうげん)の声』とは違い、特定の事柄についての予見を詳細かつ正確に見ることができる、伝統的な方法だ」

「おぉ、そのような儀式が……! ぜひその方法でテスティアの運命を見ていただきたい! そうすれば、今回の予見が間違いだったと証明されるはずだ!」


 お父様の目に、希望の光が宿る。

 私もそれに同意だった。せっかく見てもらえるなら、きちんとした儀式で真偽を確かめたい。


 お父様の言葉に、ウェイド様が頷く。


「もとよりそのつもりだ。しかし、それには一つ、確認しなければならないことがある」


 ……と、ウェイド様は視線を私に移し、


「『星詠みの儀』を最も正確に執り行うには、霊峰ウーテアにある祭殿へ向かう必要がある。君にも現地へ赴いてもらいたいが……問題ないか?」


 相変わらずの淡々とした調子で、尋ねてきた。


 ……へ?

 それってつまり、ウーテア山までの道のりを、このウェイド様と一緒に旅する、ってこと……?!


 むっ、ムリムリムリ!

 ウーテア山って、ここから馬車で五日はかかる距離じゃない?!

 ただでさえ人付き合いが苦手なのに、こんなジーク様の化身みたいな殿方と往復で十日間も顔を突き合わせるだなんて……そんなの無理に決まってる!!


「そっ、それは、えっと……なんていうか……!」


 と、私が口ごもっていると……

 お父様が、ウェイド様の手をぎゅっと握り、


「もちろん問題ない! 私は公務で同行できないが、貴殿は剣術にも長けていると聞く。道中の安全は保証されたようなものだ。どうかテスティアを、ウーテア山までよろしく頼む!!」


 ……なんて、二つ返事で答えるものだから。

 私は、今さら「ムリ」と言うこともできなくなり、


(どどど、どうしよう……!!)


 震える両手で、頭を抱えるのだった。



 

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