36. 初めてのデート
――私とウェイドは、様々な出店を回った。
躊躇いながらも食べたいものを伝えると、ウェイドはすぐに買って、一緒に食べてくれた。
(今さら気付いたけれど……これって、間接キスなんじゃ……?!)
なんて意識して恥ずかしくなるけれど、ウェイドは私が口にした食事をお構いなしに食べ、足りない分は追加で注文したりしていた。
お腹が満たされた後は、遊戯ができる出店を覗いてみた。
成績に応じて景品がもらえる、輪投げや的当てのお店だ。
私はどれもダメダメだったけれど、ウェイドは見事に高成績を叩き出し、あらゆる景品を独占していた。おかげで、しばらくはおやつに困らない量の焼き菓子が手に入った。
さらに……
ウェイドは、景品の一つであるお花で編まれた冠を持つと、
「……ん」
それをそっと、私の頭に乗せた。
私は胸がきゅっと詰まるのを感じながら「ありがとうございます」と伝えた。
そして、
「……ウェイド。少し、屈んでいただけますか?」
そうお願いすると、彼は無言のまま、片膝を折って屈んでくれた。
私は、同じく景品でもらった花の勲章を手に取ると……
彼の胸に、そっと付けた。
ピンクやオレンジの花をフリルで飾った、可愛らしい勲章だ。
手にした時には感じなかったけれど、こうして彼の胸に付けてみると、なんだかとても小さく見えた。
「ふふ。お似合いですよ」
「……本当にそう思っているか?」
疑うような目で尋ねる彼に、私は「もちろん」と笑い返した。
――出店を見て回った後は、街の中央広場へ向かった。
曲芸師のパフォーマンスや、吟遊詩人の歌が披露されていて、私とウェイドは足を止めてそれを眺めた。
(まさか、こんなに楽しい時間が過ごせるなんて……)
と、吟遊詩人の歌を聴きながら、私は夢見心地になる。
お祭りに参加するのも、男の人と二人で遊び歩くのも、初めてのことで……
……ううん。そもそも、こんな風に誰かを好きになること自体、初めてだから。
ウェイドと回るお祭りは、目に映るすべてが輝いて見えて、並んで歩くだけでワクワクして……
目が合う度に、ドキドキしてしまう。
(ウェイドも……同じ気持ちだったらいいのに)
そんなことを考えて、横にいる彼をちらっと盗み見る。
と、
『――きっと、テスを気分転換させたくてお祭りに誘ったのよ』
肩に留まるピノが、そんなことを言った。
私が「え?」と聞き返すと、ピノは声を潜め、
『テスってば、旅に出てから危ない目に遭ってばかりだったでしょ? だから、お祭りデートで少しでも楽しませようと思ったんじゃない?』
そう続けるので……私の鼓動が、トクンと跳ねる。
そっか……だからわざわざこの街に足を止めて、お祭りに誘ってくれたのかな。
でも……わからない。
ウェイドは、どうしてそんなに、私に優しくしてくれるの……?
切なさに締め付けられる胸をそっと押さえていると……
ピノが追加で、こんなことを言った。
『まぁ……あとは、いい加減テスにオトコとして意識してほしかったんでしょうね。さっきの遊戯、ヤケに気合いが入っていたもの』
「へ……っ?!」
面白がるようなピノのセリフに、私が思わず声を上げると、
「ん、どうした?」
ウェイドが、顔を覗き込んで尋ねてきた。
整った顔を近付けられ、私はあわあわと狼狽える。
「いえっ、その……ピノが変なコトを言うものだから……!」
「ほう。その鳥は何と言ったんだ?」
「そ、それは……!!」
どうしよう……正直に答えるわけにもいかないし……!
と、いよいよ目が回り始めた……その時。
「――あ、いたいた! おーい、そこのお二人さん!!」
突然、背後から声がした。
振り返ると、そこにいたのは……昨晩、この街に入る時に会った守衛さんだった。急いで走って来たのか、ハァハァと荒い息を繰り返している。
「こ、こんにちは……どうされたのですか?」
「すまねぇ……あんたたちに、頼みたいことがあるんだ」
頼みたいこと……?
私とウェイドは、顔を見合わせながら首を傾げる。
守衛さんは、私たちの顔を交互に見つめると、
「実は――あんたら二人に、この祭りのメインイベントの主役をやって欲しいんだ!!」
と……
思いがけない依頼を投げかけてきた。




