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解釈違いです、公爵様!〜予見を理由に婚約破棄されたので、推しと一緒に汚名返上の旅に出ます〜  作者: 河津田 眞紀@第一回Nola原作大賞早期受賞×2作


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27. 燕たちの住み処



 ――暗い坑道内を慎重に歩き、しばらく進むと……

 目の前に壁が現れ、私たちは足を止めた。

 

 ……いや、厳密には『壁』ではない。

 人工的に岩を積み上げて造った、『瓦礫の山』のようだった。


「道が、塞がれている……?」

「そのようだな。この先にも坑道が続いていそうだが、廃坑となったため、岩で塞いで封鎖したのだろう」

「それじゃあ、やっぱりこの場所の竜華結晶は採り尽くされちゃったんでしょうか?」

「いや、微かだが結晶の気配を感じる。手当たり次第にここを爆破すれば、少しは見つかるかもしれないな」


 そう、冷静に答えるウェイド。

『竜華結晶の気配』というものは、当然ながら私にはわからない。<星詠みの眼(へルシファー)>だけが察知できる特別な力のようだ。


「採掘の跡はどれも古い。新しい形跡は見当たらないな。犯人たちはまだここに辿り着いていないのだろう」

「よかった。それなら、落石を未然に防ぐことができるかも……」


 ……と、私が言いかけた、その時。

 小さな物体が私たちの頭上を掠め、ものすごい速さで飛んで行った。


「い、今のは……?」

『イワウラツバメね。この奥に巣を作っているみたい』


 私の疑問に答えたのはピノだった。


 イワウラツバメ。

 名前の通り、岸壁や崖の下など、しっかりとした岩の壁面に巣を作る鳥の名だ。


 続けてもう一羽が、音もなく出口の方へと飛んで行く。

 よく見ると、塞がれた瓦礫には小さな隙間があり、ツバメはそこから出入りしているようだった。


 隣でツバメが飛んで行った方を見つめているウェイドに、私が説明する。


「イワウラツバメがこの奥に巣を作っているみたいです。鳥だけど夜目が利くので、天敵のいない洞窟の奥に巣を作ることもあるんです」

「なるほど……やはり、この先にはそれなりの空間があるということか」


 ウェイドが頷くのと同時に、今度は外から帰って来たツバメがヒュンと飛来した。

 そして、岩の隙間に入り込もうとするので、


「あっ、待って!」


 私は慌てて声をかける。

 すると、ツバメは隙間に留まり、こちらを向く。くちばしにはミミズが咥えられていた。


『なになに? 今とっても忙しいんだけど?』

「ごめんなさい。最近この辺りで怪しい人間を見なかった? 馬に乗った、二人組の男なんだけど……」

『見てない、見てない。ここにニンゲンが来るのは初めて』

「じゃあ、上の森は? 誰か来たりした?」

『知らない。けど、ニンゲンの巣ならある。もう(カラ)みたいだけど』


 そう答えると、ツバメは小さな身体を隙間に滑り込ませ、瓦礫の向こうへと消えた。


「ツバメは何と言っていた?」

「ここに来た人間は私たちが初めてで、近くでも見ていないと……けど、上の森に『人間の巣』があるそうです。『もう(から)みたい』と言っていたので、使われなくなった小屋か何かがあるのかも」


 私の説明に、ウェイドは暫し考え込む。そして、


「その小屋を見に行こう。犯人たちの形跡があるかもしれない」


 そう言って、来た道を辿るように踵を返した。



 * * * *



 洞窟を出た私たちは、街道の上にある森に登れる場所がないか探した。

 と、洞窟の出入口の近くに岩を削って造られた段差を見つけた。この採掘現場でかつて作業していた人たちが造ったもののようだ。


 私はウェイドに手を引かれながら段差を登り……台地に広がる森へと辿り着いた。


「わぁ……こうしてみると、下の街道とは別世界みたいですね」

「草木に覆われてはいるが、よく見ると道の跡のようなものがある。これを辿ってみよう」


 ウェイドは私の手を引いたまま、森の中を進んでゆく。


(……あ、あれ? もう手を繋ぐ必要はないはずなんだけど……)


 温もりがすっかり混ざり合った手の感触に、胸が高鳴りっぱなしだけれど……

 自分から離すのは、なんだか惜しい気がして。


 私は何も言わずに、彼の隣を歩いた。



 

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