表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
解釈違いです、公爵様!〜予見を理由に婚約破棄されたので、推しと一緒に汚名返上の旅に出ます〜  作者: 河津田 眞紀@第一回Nola原作大賞早期受賞×2作


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/70

自慢の弟(ウェイド視点⑦)



 俺は、封筒を持つ手を震わせる。


 そこに押されているのは、確かにアスティラルダ家の紋章……

 つまり、この手紙を寄越したのは…………


「……テスティア……?」

「そ。アンタの想い人の、ね」


 何気なく放たれたその一言に、俺は凍り付く。


 もちろん、ソフィアにテスティアの話をしたことはない。九歳の時に森で遊んだことも、ずっと想い続けていることも……

 それなのに何故、俺の気持ちを知っている……?


 俺の動揺を察したのか、ソフィアは「ふふん」と鼻を鳴らし、


「アンタの想像以上に、あたしはいろんな予見を見てんのよ。アンタとテスティアちゃんが森の中でいいカンジになる予見を見たのは、十歳の時だったかしら?」


 と、嫌でも納得させられる理由を突き付けてきた。

 どうやら俺は、姉に十三年も前から初恋の相手を知られていたらしい。


「……弟をいたぶるネタを見つけて、さぞ気分が良いだろうな」

「何よ、人を悪魔みたいに。あたしはね――嬉しいのよ、純粋に」


 先ほどまでのニヤケ顔とは違う、柔らかな笑みを浮かべるソフィア。

 そして……机の上にあった『アイテール幻想記』を手に取り、パラパラと捲りながら、こう続けた。


「このジークってキャラクターはね、愛想もないし、社交性もないし、甘さもない。けど……同時に、嘘も見栄も言い訳もない、誠実で真っ直ぐな男なの。モデルにしたアンタと同じでしょ?」

「……俺が、なんだって?」

「馬鹿、褒めてんのよ。いい? 一度しか言わないから、よーく聞きなさい」


 ――そして。

 ソフィアは、俺と同じ琥珀色の目を細め、



「予見にうなされるあたしが、この家を継がなくていいように……そして、ラージウィング家の威光が潰えないように、アンタは"眼無し"と指さされながらも、必死に頑張ってくれた。アンタは……あたしの自慢の弟よ。本当に、ありがとね」



 と……俺を見つめながら、ふわりと笑った。


 別に、ソフィアに感謝されたくて、ここまでやってきたわけではない。

 すべては自分で決めたこと。ただ、それだけ。


 しかし今、彼女に礼を述べられ、『自慢の弟』だと言われて――

 今までのことがすべて報われたような、温かな気持ちになった。


 ……が、そんな気持ちになったのも束の間。

 ソフィアはすぐにまた、ニヤニヤと笑いだす。


「そんな自慢の弟をモデルにしたキャラが、弟の想い人から激推しされるなんて、めちゃくちゃ運命的じゃない? だからあたしは、テスティアちゃんから手紙をもらう度にすんごくハッピーになるの」

「運命的? 大げさな……ただの偶然だろう」

「ううん。この世で起こる事象は、最初からすべて決まっているのよ。まるで小説の筋書きみたいにね。人はそれを『運命』と呼ぶの。そして、その『運命』を観測するのが、あたしたち<星詠みの眼(へルシファー)>」


 それは、『降眼(こうげん)の声』を受け続けたが故の知見か。それとも、痴れ者の戯言か。


 ソフィアは、縦長の瞳孔をスッと細め、俺の瞳を覗き込み、


「あたしはもう<星詠み>から降りたけど……一つだけ、予見を授けてあげる。あんたとテスティアちゃんは、いつかまたあの森を訪れるわ。だから……その時まで、頑張りなさい」


 と、囁くように言った。

 

 こんな、夢か現実かわからないような世界に生きる変わり者の姉だが……

 その予見(ことば)だけは、どうにも当たる気がして。

 俺は無言のまま、一度だけ頷いた。


 それを満足げに眺めると、ソフィアは口の端をニッと吊り上げ、


「なんなら、『作者のお家へご招待!』と称してテスティアちゃんを呼んであげようか? あたしの大ファンだし、きっと喜んで来てくれるわよ。そんで、そのままウチに閉じ込めて無理やり結婚しちゃおうよ! くふふっ。小説のネタにもなりそうだし、我ながらナイスアイディア!」

「………………」


 やはり俺は、この変人な姉のことが苦手である。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ