21. 恐怖を溶かすぬくもり
――ウェイドが呼んだお役人さんにより、侵入した男はすぐに連行された。
気を失ったその顔を見せてもらったが、面識はなかった。お役人さんも、街で見かけない顔だと言っていた。
どうして私を狙ったのか……理由はわからないまま。
男の身柄をお役人さんたちに任せ、ひとまず私たちは休むことにした。
私がいた部屋は窓ガラスがくり抜かれてしまったため、別の部屋を用意された。ウェイドが泊まる部屋の向かい側だ。
その部屋の前に立ち、ウェイドが言う。
「明日の出発に備え、少しでも休んだ方がいい」
私は小さく頷くが……正直、先ほどまでの恐怖に、まだ心が支配されたままだった。
足がガクガク震えている。でも、これ以上ウェイドに迷惑をかけたくない。ただでさえ、眠る前に怒らせるようなことを言ってしまったのだから。
私は無理やり笑顔を浮かべ、彼を見上げて言う。
「そうですね……ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。おやすみなさい」
声は、なんとか震えずに済んだ。
きっと、上手く笑えているはず。
そう思ったのに……
「……それで誤魔化したつもりか?」
ウェイドが、淡々と返す。
どうやら、虚勢を見破られたらしい。
ウェイドは屈んで、私の顔を覗き込み、
「……怖い思いをしただろう。こんな時に、強がらなくていい」
と……いつもよりずっと穏やかな声で、言ってくれた。
その優しい言葉に、私は……
堪えていた涙を、ついに溢した。
「っ……、あの人、私に『警告だ』って……『これ以上余計な真似をすれば命はない』って……きっと、ただの強盗じゃないっ……私を、故意に狙って……っ」
「そうか……しかし、奴は無事捕えられた。そして、君の側には俺がいる。もう怯える必要はない」
言って、ウェイドは私の頭に優しく手を置いた。
その温もりがあたたかくて……あの時感じたナイフの冷たさが消えていくようで。
私は、心に巣食う恐怖を吐き出すように、彼の前で泣いた。
――そして、一頻り泣いた後。
「……すみません、ウェイド。ピノもありがとう。もう、大丈夫です」
私は涙を拭い、呼吸を整えながら言った。
ピノは私の肩に留まり、ずっと慰めてくれた。その小さなぬくもりに、大きな安心感をもらえた。
私の顔を見て、落ち着きを取り戻したことが伝わったのだろう。ウェイドは一つ頷き、
「そうか……では、部屋に入って休もう」
「はい。すみません、お時間を取らせてしまって。おやすみなさ……」
……い。
と、言い切る前に、私は言葉を止める。
何故なら……ウェイドが、私の部屋に迷わず入り。
ベッドの毛布を捲り、ごろっと寝転がったから。
「…………あの?」
「ん、どうした」
「ここは、私の泊まる部屋のはずですが……」
「そうだが?」
そうだが?!
ウェイドの行動の意図がわからず、私が固まっていると……
「――早く来い。一緒に寝るぞ」
……なんて、ますます意味不明なことを言ってのけた。




