14. 夕暮れ時の別れ
――そうして、私とウェイドは崩落した洞穴の岩を一つ一つ退かし、狼たちを見つけた。
全部で五頭。その内の二頭は、まだ子供だった。
私たちは彼らをそっと運び出し、少し離れた大きな木の下に埋めた。
その側にしゃがみ、手を合わせる。
人間たちがしたことへの謝罪。そして、踏み躙られた彼らの魂が安らぐようにと、精一杯の祈りを捧げた。
瞼を開け、立ち上がると、すぐ隣に狼たちが立っていた。
『……ありがとう。これで、家族の魂は森に還った。お前たちに出会えて本当によかった。危害を加えようとしたこと、謝らせてくれ』
彼らの目には、穏やかさと気高さが戻っていた。先ほど感じた、あの奇妙な濁りは見られない。
その琥珀色の瞳を見つめ、私は首を振る。
「ううん。私の方こそ、犯人に代わって謝らせてほしい。人間がこんなことをして、本当にごめんなさい。街の人たちには、不用意に森へ近付かないよう忠告しておく。犯人に心当たりがないか聞いて、できる限り調べてみるから」
こんなことしかできないけれど……彼らか穏やかに暮らせるよう、私にできることはしておきたかった。
『それにしても……ハンニンはどうしてあの洞穴を爆破したのかしらね? 掘り起こしてみたケド、ただ石が転がっているだけだったわ。まさか、お宝でも眠っていたとか?』
と、肩の上でピノが言う。
彼女の言う通り、犯人たちの目的はわからず終いだった。辺りを見回してみても、手がかりになりそうなものは何もなかった。
「やっぱり、ベツラムの街で聞いてみよう。何かわかるかもしれない」
『そうね。馬に乗ったアヤシイ二人組……ピーッ、早くとっ捕まえたいわね!』
怒りの鳴き声を上げるピノ。
狼たちとの別れは名残惜しいけれど、調査のためにも次の街に進まなくては。
「ウェイド、そろそろ馬車に……」
戻りましょう。
そう伝えようとして、隣を見るが……そこにいたはずの彼の姿がなかった。
振り返ると、ウェイドはあの洞穴の入口にいた。
奥の方をじっと見つめ、無言で立っている。
「ウェイド……? 何か気になることでも……?」
後ろから尋ねると、彼は洞穴の中を見つめたまま、
「……いや、なんでもない」
そう短く答え、踵を返した。
何かを考えていたように見えたけれど……これ以上聞いても答えてくれそうにはなかった。
「そう……それじゃあ、戻りましょう」
言って、私たちは狼たちの見送りを受けながら、森を出た。
* * * *
――森を抜け、馬車のある地点に戻った私たちは、狼たちに別れを告げた。
(予見のことが解決したら、また彼らに会いに来たいな。その時には、犯人の手がかりが掴めているといいけれど……)
木々の向こうに消えてゆく銀色の毛並みを見つめ、私はそんなことを考えた。
ボウガンを放った御者さんは、私の顔を見るなり泣きながら謝罪を繰り返した。
でもこれは、私が謝らなければならないことだった。だって、狙いを定めた先に飛び出したのは私の方なのだから。
取り乱す御者さんを落ち着かせ、私は再び馬車へ乗り込んだ。
空がオレンジ色に染まり始めている。もうすっかり夕暮れ時だった。




