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解釈違いです、公爵様!〜予見を理由に婚約破棄されたので、推しと一緒に汚名返上の旅に出ます〜  作者: 河津田 眞紀@第一回Nola原作大賞早期受賞×2作


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13. 取り残された魂



 ――すっかり腰を抜かした御者さんを残し、私とウェイドとピノは、アンブルウルフたちの案内で森の中へと足を踏み入れた。


 森と言っても、ここはアンテローズの森ではない。

 名もない小さな山の麓にあたる、森林地帯だ。

 そのため、足元には岩肌が所々覗いていた。



「……テスティア。痛むか?」


 狼たちの後を歩きながら、ウェイドが私に尋ねる。

 森に入る前、彼がすぐに止血をし、布を巻いてくれた。

 相変わらず口数は多くないけれど、明らかに顔が青白い。私が怪我をしたことに動揺し、ものすごく心配してくれているようだ。


(なんか……この人の『無表情の中の表情』みたいなものが、ちょっとずつわかってきたかも……?)


 なんて、少しこそばゆい気持ちになりながら、私は笑みを浮かべ答える。


「大丈夫です。これくらいの怪我なら、何度も経験がありますから」

「……え」


 ウェイドの表情が固まる。

 ……まずい。妙な誤解をさせてしまったようだ。

 私は慌てて説明をする。


「む、昔から森の中で遊んでいて、転んだり、木から落ちることなんかしょっちゅうだったんです! あと、加減を知らない子グマにじゃれつかれて引っかかれたり、サル同士のケンカを止めようとして巻き込まれたり……とにかく生傷が耐えなかったんで! だから、気にしないでください!!」


 ……って、また野蛮さが露見するような発言をしてしまった!


 後悔に俯く私を、ウェイドは見つめ……

 小さく笑うように息を吐きながら、


「……街に着いたら、医者にきちんと診てもらおう。とにかく、君のお陰で狼たちと和解できた。君の能力と、森での経験に感謝だな」


 穏やかな声で、そう言った。


 私の能力と経験に、感謝……

 その言葉に、胸がトクンと高鳴る。


 森の中で、動物たちとばかり過ごして来た過去を、こんな風に認めてもらえるなんて……泣きそうなくらいに嬉しかった。

 だって、ずっと否定され続けてきたことだから。


 それと同時に、私は顔を背けて、


(もう、なんなのよこの人……優しいことばっかり言って。こんなの全然ジーク様っぽくない!)


 と、照れ臭さを拗らせたような、厄介なモヤモヤに苛まれるのだった。



 そうこうしている内に、周りの景色が変わってきた。

 狼たちに導かれ進んだ森の奥――木と土のにおいが満ちる先に、ゴツゴツとした山の岩肌が見えた。

 狼たちはそこで一度、足を止めた。


『あそこが、俺たちの家だった場所だ。崖の下にある洞穴……今は塞がっている』


 彼らの視線の先に目を向けると……確かに、岩肌には横穴があって、奥が岩で塞がっているように見えた。


「あなたたちの家をあんな風に塞いだのが、見知らぬ人間だったのね?」

『そう。二人組のオスだった。馬に乗って現れ……俺たちの家族を、次々に殺した。そして、家を壊した』


 その光景を想像し、私は胸を押さえる。

 見知らぬ人間にいきなり家族を殺され、家まで奪われて……どんなに悲しかっただろう。人間を憎むのも無理はない。


 でも、襲ってきた人間は何が目的でそんなことをしたのだろう?

 アンブルウルフの毛は硬いため、毛皮には向かない。肉も食用には不向きだ。商売目的の密猟の可能性は低いように思う。


 私は、彼らの家だった洞穴の入口に立つ。やはり、中が無数の岩で塞がれてしまっていた。


「焦げ臭いにおいが残っている……爆薬を使って中を崩落させたのか」


 ウェイドが、私の横で言う。

 わざわざ爆薬を使うなんて……もしかして、そいつらの目的はこの洞穴にあったの?


 と、その時。飛んでいたピノが私の肩に留まり、こう囁いた。


『テス……殺されたオオカミたちの魂が、まだ中にいる』


 私は、言葉を失う。

 ピノはよく、私に言っていた。森の生き物たちは、死んだら土に還る。そして、次の生命(いのち)を繋ぐ。それが一番幸せなんだ、って。

 

 この洞穴の中で、狼たちは……冷たい岩に潰されたまま、今も取り残されているんだ。


(……早く岩を退かして、彼らを森に還してあげなきゃ)


 駆り立てられるように足を踏み出した直後、ウェイドが同じように前へ出た。

 そして、洞穴を塞ぐ大きな岩を運び始めた。


「ウェイド……どうして……」


 ピノや狼たちの言葉がわからないはずの彼が、どうしてこんな行動を取るのか。

 私が尋ねると、彼は微かな怒りを滲ませながら、


「……奥から血の臭いがする。きっと、狼ごと爆破させたのだろう。彼らの遺体を出して、弔ってやりたい」


 低く、そう言った。

 その言葉に、私は……胸が、ぎゅっと切なくなり。


「……うん。一緒に、彼らを助けましょう」


 拳に力を込めながら、頷いた。



 

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