70
「……10年くらい前に亡くなった男の子の事なんですけど」
「………」
「交通事故で運ばれたりしてきた筈なんですけど」
「あまり楽しい話じゃないわね」
さっきまで笑ってた婦長さんも椅子に座って私の話を聞いてくれる
「…ごめんなさい」
「どうして知りたいか理由は解らないけど…私達にも答えられる事と出来ない事があるの」
「………」
「秘守義務ってやつ」
「そうなんですか……でもそうですよね…」
「ごめんなさいね」
「あの、私もその時一緒に運ばれたかもしれないんです…覚えてないけど…男の子と一緒に」
一緒に救急車に乗ったなら私も同じ病院に来たよね?
「………」
「私も居たと思うんですけど…男の子と一緒に」
あまり人には喋ったりしちゃ駄目だけだろうけど
…本人なら……
「貴女……名前は?」
「梅宮弥生って言います」
鞄から生徒手帳を出して名前を見せる
「………弥生………」
「覚えてますか?」
「正直な話、救急センターでもあるこの病院だと人が亡くなったりする事は珍しくない…それが子供でも」
「はい」
最近、痛感した事だ
「だから駄目かもしれないって時の奇跡は余計……忘れられないわ」
「奇跡?」
「……弥生ちゃんは覚えてないのね?」
「ちょっと忘れてて」
ここで催眠術とかの話をしたら絶対教えて貰えない
「梅宮弥生ちゃん……貴女が本当に弥生ちゃんなら私は余計に話す事は出来ない」
「何でっ……」




